〔トピックス〕
専門外来紹介
 

○ 概要

 障害に特有の病気の治療やニーズというものに応えるため、国立障害者リハビリテーションセンター病院には様々な専門外来が設置されています。
  1. 普通の病院にもあるが、障害のある方々の利用に十分対応できていないもの
  2. 障害の診断と治療に専門的な知識や技術を必要とし、普通の病院では対応が難しいもの
  3. 障害者特有のニーズに応えようとするもの
というおよそ3つの考え方に沿ったものとなっています。
 そしてそのほとんどが、医師、看護師、検査部門でだけで医療サービスが提供できるものではなく、理学療法士や作業療法士といったリハビリテーション専門職が力を合わせて一人一人の患者様へ医療を提供していくものとなっています。
 このようなことが可能となるのは、障害のある方々に配慮した環境、機器、設備が整っていること、様々な質の高い専門職がそろっており、チームとして患者様に関わっていることという、当院ならではのハードとソフトを有しているからこそです。
 新病院棟になって、職員の質の高い医療、リハビリテーションを提供しようという気持ちがそこここに溢れています。専門外来も、その外来に適した環境をそろえることによって、さらに適切な環境で医療を提供することができるようになりました。新病院棟が開設したからといってすべてが解決したわけではありませんが、新しい環境の中でどうしたらもっと使いやすく、患者様にとって快適な環境とすることができるか、職員は日々奮闘しています。専門外来も、障害のある方に、それを必要とする患者様によりよい医療を提供できるようにと日々の努力を続けていきます。

○ 人間ドック

 「予防医学」の基本は病気や怪我を避けるように日常生活のうえで健康に留意することです。しかしそれだけでは十分とはいえません。糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病は、かなり進行しないと自覚症状がありません。がんも何年もかかって進行するケースが多いのです。しかし早期にその芽を見つけて治療を始めれば、治癒させることもできます。
 会社勤めのひとの定期健康診断や主婦や自営業対象の自治体等保険者が主催する健康診査は内容が限られていますので、体全体をチェックするには限界があります。健診で異常がなくても人間ドックで異常が見つかることがあります。
 一方では障害者を受け入れてくれる健診施設は十分とはいえません。車いすというだけで家族の付き添いを求められたりすることもあります。当院の人間ドックは、健常者と同じペースでは落ち着いて受診しにくい方々に納得のいく健診をお受けいただくことを主眼に置いています。
 人間ドックの検査内容は日本人間ドック学会の認定施設基準を満たしたものを平成23年度4月からリニューアルを行い、多くのスタッフの協力のもと毎週水曜日に実施しています。 障害がある方でこれまでまだ人間ドックを経験したことがない方には是非一度お受けいただきたいものです。

○ 高次脳機能障害専門外来

 病院高次脳機能専門外来では医学的診断・評価を行い、多専門職種(医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・心理士・医療ソーシャルワーカー・運動療法士)による包括的な認知リハビリテーション計画をたて、高次脳機能障害者の社会参加(就労・復学、地域社会での統合)を促進することを目標としています。 これは平成13年からの高次脳機能障害モデル事業病院部会訓練プログラム班において標準的訓練プログラムを作成する過程にかかわった実績と経験に基づくものであり、関連スタッフ間でケース会議や高次脳機能障害リハビリテーションの内部委員会で討議を重ね、インターディシプリナリーチームアプローチによる良質かつ効率的なサービスを提供するものであります。 入院と外来では回復期・維持期のリハビリテーションを行い、高次脳機能評価入院においては、発症から長期経過された患者様を対象として、就労・復学などの支援を行っております。一旦は社会復帰されたものの、適応に問題が生じた患者様に対しても再評価・指導を行い、環境調整を行い、社会参加を目標に支援を行っております。同時に高次脳機能障害の患者様を支えるご家族に対する支援も行っております。
 医学的リハビリテーションから社会的リハビリテーションへの連続した支援にも重点をおき、当センター自立支援局生活訓練や就労支援、職業リハビリテーションセンター、地域就労支援機関、保健センター、職場や学校などとも密接な連携を保ちながら社会参加支援を行っております。

○ 小児難聴外来

 金曜日の午後に設定されている小児難聴外来は、聞こえに不自由されているお子さんを対象に診察しています。
 新生児聴覚スクリーニングが普及し、早い時期に難聴が見つかるようになりました。このようなお子さんに対して、検査、診断を行い、療育や治療につなげています。この外来では言語聴覚士と連携し、お一人に対して十分な時間を取って対応しています。このため、直接、小児難聴外来を予約することはできず、まずは一般外来を受診した上で、予約を取る仕組みになっています。
 診断・検査の新しい話題としては、先天性難聴の遺伝子診断、先天性サイトメガロウィルス感染症による難聴の検査が可能です。特に遺伝子診断は、耳鼻咽喉科医長が臨床遺伝専門医も取得しており、遺伝カウンセリングを含めた質の高い診療を行っています。また検査機器では、チャープ音を使用した最新型の聴性脳幹反応、聴性定常反応検査を取り入れています。これに画像検査なども組み合わせて、難聴の原因を正確に診断し、治療方針を決定しています。
 療育の大きな柱は、補聴器、人工内耳装用と、言語訓練です。現在、当院で人工内耳手術は行っていませんが、提携病院と連携を取り、入院・手術のみ他院で行ってもらい、手術前後のリハビリはすべて当院で行います。言語聴覚士との連携により、適切な補聴器フィッティング、人工内耳マッピングを行うことができます。

○ 補聴外来

 木曜および金曜日の午後に設定されている補聴外来は、聞こえに不自由されている成人の方を対象に、補聴器の適合を主な目的として診療しています。
 治療が難しい感音難聴や、手術などを行っても聴力が改善しなかった伝音難聴の方々にとって、生活の質を上げるのに必要なのが補聴器です。しかし、補聴器を取り巻く現状は厳しく、補聴器が処方箋なしに購入できることもあって、販売者側、利用者側の双方の問題で、「補聴器は不便」という認識が定着してしまっています。
 こうした問題を解決するため、補聴外来では医師、言語聴覚士、補聴器専門販売店の認定補聴器技能者が一堂に会して、適切なフィッティングを行うことができる環境を整えています。
 補聴器はご本人の耳に合わせるために「調整」という作業が不可欠です。これまで聞こえないことに慣れている耳や脳に、補聴器による音刺激を加えることになるので、時間をかけながら最適な状態に合わせる必要があります。この間、補聴器は貸し出しの形式をとって、患者様の負担を緩和しています。もちろん身体障害者福祉法、障害者総合支援法に則った補聴器交付にも対応しています。処方した補聴器がご本人に合っているかどうかも、補聴器適合検査を行うことで、正確に判断することが可能です。直接、補聴外来を予約することはできません。まずは一般外来を受診してください。

○ 耳鳴外来

 水曜日午後(一部は月曜日午後)に耳鳴外来を開いています。受診を希望される方は、まず耳鼻咽喉科の一般外来で診察と検査を受けて下さい。紹介状がある方も同様です。耳鳴のほとんどは感音難聴が原因ですが、難聴が少しずつ進行すると気がつかないこともあるので,聴力検査をします。感音難聴は治療が困難なことが多いですが、稀に治療が必要な病気が隠れていることがあるので、十分な診察と検査が必要です。一般外来の後日、耳鳴外来になります。耳鳴外来では、耳鳴りに合併しやすい聴覚過敏症も含めて、専門的な問診や検査をして、治療を行います。
 耳鳴りは多くは感音難聴の結果として生じ、難聴で周囲の音が聞こえないために目立つことが多いのですが、耳鳴り自体が何かの病気を引き起こすことはありません。慢性の耳鳴りは消えにくいですが、耳鳴りによる「つらさ」については軽減・解消する方法があります。それは、音響療法を中心とした聴覚リハビリで、当外来で採用している方法は、TRTと呼ばれている治療法に近いものです。音響療法では、小さい音を聞いて耳鳴りを目立たなくして耳鳴りのつらさを即座に軽減すると共に、耳鳴りに慣れ易くします。聴覚過敏症には別の種類の音響療法を行います。治療の一環として補聴器をお勧めすることもあります。耳鳴がストレスで悪化するなどの心理的な困難に対しては、認知行動療法に基づいた指導を行います。通院頻度は1〜3ヶ月に一回程度のことが多いです。

○ 言語新患外来

 当外来は、言葉の遅れ(言語発達遅滞)、吃音、音の乱れ(構音障害)などの言葉にトラブルを持つ主にお子さんを診察する外来です。この診察の後に言語に関するスペシャリストである言語聴覚士による評価を行い、適切な助言を行います。さらに必要であれば当センターにて継続的な訓練を計画いたします。
 言葉にトラブルを持つお子さんの状態や程度は様々で、時に言語以外の発達にトラブルを抱えるお子さんもあり、この場合には児童精神科との連携は不可欠です。これらのケースに応えうる充分なスタッフと設備を当センターは備えており、これらが当センターの特色一つになっています。
 近隣にこのような施設が乏しいため、県内はもとより関東圏外からも多く来院されます。継続的な訓練が必要であっても、度々の来院は難しい方に関しては、通院可能な施設をご紹介することも可能です。
 なお受診希望者が多いため、受診の予約が現在1―2ヵ月先になっておりますので、ご了承ください。

○ 成人吃音外来

 吃音がある方は人口の1%もいると推測されています。思うように話せないために生活の質が下がり、就職面接で苦労したり、昇進を諦める方もいます。成人の吃音の診療ができる医療施設が少ないため、相談できずに悩んでいる方が多いようです。そういう方に知っていただきたいのは、成人であっても吃音は治療で改善することが多いということです。
 成人吃音相談外来は、吃音で悩んでいる18歳以上の方(高校在学中は除く)の診療を担当しています。初診(月曜日午後)の半日で医学的診察と、言語聴覚士による吃音の評価と試しの訓練を行い、治療方針を決めます。初診は完全予約制で、3ヶ月先の予約まで受け付けています。吃音について説明し、試しの訓練では言いにくい言葉を「言えた!」という体験を多くの方にしていただいています。合併症がある方は、他科・他院と協力して診療します。
 訓練は月〜金曜日です。通院は週に1回から1ヶ月に1回程度で、毎回の訓練は1時間程度です。柔らかくゆっくり言う流暢性形成法や、うまく行かない対処法を切り替える認知行動療法などを組み合わせています。改善のためには習ったことを毎日自宅や職場で使うことが有効なので、「宿題」を出し、気がついたことを記録していただいています。また、研究所と協力して新しい治療法や評価法の研究を行っています(任意参加なので、研究に参加しなくても診療 には影響しません)。