〔特集②〕
新病院棟完成(施設整備)
 

 さる平成26年5月22日に病院棟が完成しました。
 これは、平成22年度から平成26年度までの予定で施工している、国立障害者リハビリテーションセンター病院等整備工事の一環として、平成24年6月29日に完成した本館・講堂棟に続き、病院棟が完成したものです。
 今回完成した病院棟の建築概要は次のとおりです。

建築面積: 5,066㎡
延床面積: 19,956㎡
階  数: 地下1階、地上5階
構  造: プレキャストプレストレストコンクリート造(免震構造)
 また、各階の構成は次のとおりです。
5階: 院長室、副院長室、各部長室、医局、当直室・会議室等
4階: 西病棟、東病棟
3階: 西病棟、東病棟
2階: リハビリテーション部門(理学療法、作業療法、言語聴覚療法、ロービジョンクリニック、臨床心理、義肢装具療法)、障害者健康増進・スポーツ科学支援センター、手術室・中央材料室等
1階: 中央待合ホール、受付、外来診療部門(内科、神経内科、高次脳機能、精神科、整形外科、リハビリテーション科、耳鼻咽喉科、眼科、泌尿器科、歯科、小児科・児童精神科)、薬剤科、臨床検査部門、診療放射線部門、医療福祉相談室、栄養相談室等
地下1階: 栄養管理室(厨房等)、リネン庫、カルテ庫等
 今回完成した病院棟の一番の特徴としては、巨大地震へ備える観点から、プレキャストプレストレストコンクリート造の免震構造としていることです。

(1)プレキャストプレストレストコンクリートについて
 「プレキャスト」とは、建設現場において型枠を設置し、コンクリートを打設して造るのではなく、あらかじめ工場においてコンクリート製の部材を製作し、建設現場へ運搬して設置を行う方法です。この方法ですと、当該コンクリートの品質が安定するとともに、通常の方法と比べて短い工期で施工することが可能となります。
 同様に「プレストレスト」とは、当該コンクリートの中にPC鋼材を通し、そのPC鋼材を緊張させることにより、通常の鉄筋コンクリートに比べて強い荷重に抵抗することができるようにするものです。また、一般に使用されているコンクリート強度と比べて2倍程度のものを使用することで、耐震性や耐久性が大きく向上しています。
 また、当該コンクリートを用いて柱・梁を組み立てる際には、柱・梁の接合部にあご(Corbel)を設け、梁の端部をあごに載せて、「あご付柱」の形態を持つ耐震フレームを形成する「PC圧着関節工法」を採用しています。
図:あご付柱あご付柱
 PC圧着関節工法を採用することにより、大地震時には、人間の関節の働きと同様に、梁があご上で弾性回転して地震のショックを和らげ、従来工法と異なり部材を損壊させることなく健全に保ったまま元に戻すことが可能となっています。このため、建物の基本となる構造体はダメージを受けることなく、損傷部位が限定されるとともに、損傷も柱と梁を接合する目地モルタルにひび割れを生じる程度で残留変形がほとんどなく、地震直後から継続して建物を使用することが可能となっています。
(2)地震に対する建物の技術について
 地震に対する建物の技術として、地震時に建物に生じる力に耐えるよう建物自体を頑丈に作る耐震構造と地盤と建物の間に地震の揺れを受け流す免震装置を設置して、建物へ揺れの伝達を低減する免震構造とに、大きく分かれます。
写真:あご付柱弾性すべり支承
写真:積層ゴム系支承とU字ダンパー積層ゴム系支承とU字ダンパー
写真:オイルダンパーオイルダンパー
 耐震構造ですと、建物自体は地震に耐えるものの、その構造上、建物全体が大きく揺れることとなりますが、免震構造ですと免震装置により揺れ自体が最大7分の1程度に低減されるとともに、ゆったりとした揺れに変わり、建物内の物品の転倒や破損を抑制することができることから、今回竣工した病院棟においては免震構造を採用しています。 免震装置は、地下1階の更に下にある「免震階」において建物を支えており、その免震部材として、積層ゴム系支承(平時は建物を支え、地震後に建物の位置を復元します。)70基、弾性すべり支承(平時は建物を支え、地震時にゴムの変形や摩擦エネルギーによって地震のエネルギーを吸収します。)16基、積層ゴム系支承とU型ダンパーの複合部材(U型ダンパー及び積層ゴムと一体で、平常時は建物を支え、地震時に揺れを軽減するとともに変形を復元します。)14基、オイルダンパー(建物に働く地震のエネルギーを吸収して、継続する揺れを抑えます。)8基が、それぞれ設置されています。 これらの先進的な工法の採用や免震装置の設置により、病院棟は、東北地方太平洋沖地震のような震度7級の巨大地震に対しても、十分に耐えることができる建築物となっています。 その他、今回竣工した病院棟には、次のような特徴もあります。

①外来診療部門等(1階)
  • 外来診療部門と関連中央診療部門を1階に集約して配置することにより、患者様の移動が極力この階で完結できるよう配慮しています。
  • 視覚障害をお持ちの方のご利用が多いと考えられる眼科などを中央待合ホールに近接して設置し、移動の際の利便性、安全性に配慮しています。
  • 診察室等の背面に、患者様の動線と分離されたスタッフ通路を設け、移動の際の効率化を図っています。
②リハビリテーション部門等(2階)
  • 理学療法、作業療法、言語聴覚療法、ロービジョンクリニック、臨床心理、義肢装具療法などの各訓練部門を2階に集約して配置することにより、リハビリテーションを受ける患者様の移動が容易となるように配慮するとともに、総合的なリハビリテーションのために各訓練部門の機能的な連携に配慮した配置となっています。
  • 西側に1〜2階専用乗用エレベータを設置し、1階の受付から2階訓練室への移動や、PT訓練室から病院棟の屋外にある野外訓練場へ移動する際の利便性に配慮しています。
③病棟(3・4階)
  • 従来、4箇所にそれぞれ分散していた看護単位について、3階・4階それぞれ2看護単位として集中化を図り、機能性や効率性に配慮しています。
  • 病棟中央部南側に食堂・デイルームを設け、2看護単位合わせて160uのスペースとして、自然採光を取り込んだ、広くて明るい療養環境となっています。
④その他
  • 屋上に太陽光発電設備を設置し、温室効果ガスの削減に配慮しています。
  • 病院玄関前に障害者等駐車場を60台設置するとともに、そのうち14台分には庇を設けて、雨天時、乗り降りの際に濡れないよう配慮しています。
写真:太陽光発電
太陽光発電
写真:駐車場
駐車場