〔特集〕
視覚障害者の歩行訓練
自立訓練部 機能訓練課 山田 哲史

1 自立支援局と病院での歩行訓練の相違

  国リハでは、自立支援局と病院で視覚障害者の歩行訓練を実施しています。どちらも、見えない方や見えにくい方に訓練を実施する点やマンツーマンで歩行訓練士が実施する点は同じですが、その内容や期間等に違いがありますので、訓練を受けてみたい方は下の表を参考にしてご検討ください。

2 自立支援局に入所した方の歩行訓練

  この項では歩行訓練の概要を、一例として、自立支援局に入所した全盲の方を対象に訓練するという前提で説明します。
 施設の利用開始に際して、まず必要なのは、施設内を単独で生活できるようになることです。それには、自分の居室内の移動や居室とトイレ、食堂、浴室等の間を往復できなければなりません。頭の中に地図を描くこと、壁や手すりを片手で触れながら歩く「伝い歩き」の方法、居室内や廊下を横断する(空間を歩く)際に行う「防御の姿勢」や、背中を壁につけて身体の向きを決める方法等の訓練を行います。又、「移動介助」の正しい受け方も併せて学びます。
 施設内が単独で移動できるようになると、白杖を使用して「安全かつ確実に」目的地に到達できる屋外歩行の訓練に移ります。白杖を身体の前方(概ね2歩前方)で左右(肩幅よりやや広め)に振って歩くことにより、身体の安全を確保するとともに、段差、壁、溝の発見やそれを利用した歩行(伝い歩き等)をするのです。
 従って、訓練は白杖の基本操作を身に付けることから始まり、その後、人通りや自動車の往来の少ない歩車道の区別の無い道路の歩行(住宅街の歩行)から歩車道の区別のある道路の歩行(準繁華街〜繁華街の歩行)へと段階的に移行していきます。其々に身に付けなければならない技術的な課題(障害物の回避、走行中の自転車・自動車等の回避、交差点の発見・横断、様々な音等の情報の利用等)があるとともに、頭の中に地図を作成し、最終的には目的地の位置や発見の為の手がかりを自分で歩行訓練士から聞き出し、ルートを自分で作成し、実際に歩けるように訓練を進めていきます。又、途中で迷った時の修正の仕方を同時に学んでいきます。
 バスや電車等の公共交通機関を利用する訓練、混雑地の歩行、援助依頼の訓練等を行い、最終的には単独でどこにでも行けることを目指し訓練していきます。
 以上、一例として、訓練の概要を説明しましたが、実際には、ご本人の視覚の状態、体力や体調、必要性、訓練を受けることのできる期間等によって、訓練内容や最終目標は違っています。

自立支援局と病院の実施する訓練(歩行以外の訓練を含む)の相違点

項目\実施主体 自立支援局
自立訓練部機能訓練課
病院
リハビリテーション部
ロービジョン訓練
対象者視覚に障害のある方で、施設利用について市区町村から「障害福祉サービス受給者証」の交付を受けた方条件は無し
訓練を受ける時の立場障害者支援施設の利用者病院の患者
利用方法
(いずれも平日のみ)
①入所 ②通所 ③訪問
利用開始後のアセスメントによって、個人の状況に応じ、最長18か月の範囲内で期間や内容等を決める。
①入院 ②通院
初回の面接時に内容、回数等を検討する。
料金障害者総合支援法に基づく利用者負担医療保険制度による診療費