学院児童指導員科では、平成27年度から新しいカリキュラムによる養成がスタートします。平成25年4月、外部有識者(座長;江藤文夫国立障害者リハビリテーションセンター前総長)を含めた検討会を設置し、現行カリキュラムの見直しを行い、これまでの「知的障害」に「発達障害」を加えたカリキュラムを作成しました。
○児童指導員科の概要
児童指導員科の前身は、秩父学園附属保護指導職員養成所です。養成所は、全国の精神薄弱関係施設(当時)の保護指導の向上に寄与することを目的とする我が国唯一の養成機関として昭和38年に開所し、知的障害分野の福祉職養成カリキュラムを創設しました。
それからおよそ50年が経過しました。修業年限(1年間)、応募資格(4年制大学卒業又は保育士資格取得者※見込み含)、定員40名に変更はなく、現在、第二次募集中(平成27年1月27日〜2月17日)です。
○発達障害について
発達障害者支援法が成立して、10年を迎えます。「発達障害」に関する情報は、ここ数年で溢れるくらい浸透しましたが、正しい理解がないまま「発達障害」という言葉だけが一人歩きしている状況もあります。「発達障害」への適切な支援が社会適応につながり、不適切な支援が二次障害を起こし、問題を複雑にし、増幅させます。
「教育の本旨は、所謂全人教育であるから、児童の本性を発揮させ、長はこれを伸ばし、短はこれを矯めてゆかねばならぬ。決して長を殺し短を伸そうとしてはならぬ。角矯めて牛を殺すのは、教育の眼目ではない。」という文章を残したのは、戦後の日本で医師として児童教育に終生を捧げた三田谷啓です。苦手なところ、できないことをできるようにしようとすればするほど、陥りがちな悪循環を戒めるものです。これは教育全般に言えることですが、中でも、発達に支援が必要な子どもの成長の芽を摘まないための大切な視点と言えます。
○新しいカリキュラムと福祉職の養成
新しいカリキュラムでは、「知的障害」及び「発達障害」の正しい理解と支援をしていく上で必要な理論と実践を学んでいきます。
福祉職は、学齢期には学校時間以外のすべてを担当し、学齢期後は就労支援を含めたすべてを支援することになります。つまり、直接支援と社会資源のコーディネートの両方が求められます。しかしながら、現実的には、福祉職が「発達障害」を学ぶ機会は、現任研修(多くは3日間くらい)としての位置づけであり、1年間のカリキュラムとして体系的に提供できる場を児童指導員科以外に見ることはありません。
専門分野を担当する外部講師は、医療、教育、福祉それぞれの分野から日本が誇る著名な先生ばかりです。また、現任研修(発達障害者支援センター職員等を対象とする最新情報)への聴講や事例研究等でプランニングからプレゼンテーションまで、より実践に即した授業を展開していきます。
今後取り組むべき重点課題としては、発達障害、強度行動障害、虐待、いじめ、家族支援等です。それには、いろいろな専門職とチームで仕事ができる人材、多職種連携においてPDCAサイクルを自律的に遂行できる人材が求められます。
福祉職の仕事はピンポイントではなく、対象とする人の生活や人生に寄り添いながら、支援していくものです。それが福祉職の魅力でもあります。今回のカリキュラム見直しにおいて、従来の「知的障害」をベースに、「発達障害」も対象とすることは自然の流れでした。「発達障害」への理解と支援は、はじまったばかりです。今後も、実践力のある福祉職の養成に努めて参ります。
平成27年度 児童指導員科カリキュラム(予定)
教育 内容 |
科目分類 |
履修科目 |
履修時間 |
講義 |
演習 |
実習等 |
合計 |
専 門 基 礎 分 野 |
教養 |
法学 |
12 |
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12 |
社会学 |
12 |
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|
12 |
心理学 |
12 |
|
|
12 |
教育学 |
16 |
|
|
16 |
社会福祉論 |
社会福祉概論 |
24 |
|
|
24 |
地域福祉論 |
12 |
|
|
12 |
児童・家庭福祉論 |
18 |
|
|
18 |
老人福祉論 |
16 |
|
|
16 |
社会福祉制度論 |
社会福祉行政論 |
12 |
|
|
12 |
社会保障論 |
18 |
|
|
18 |
公的扶助論 |
18 |
|
|
18 |
福祉事務所運営論 |
12 |
|
|
12 |
生活保護制度演習 |
|
16 |
|
16 |
医療福祉論 |
医学一般(医学概論) |
16 |
|
|
16 |
乳幼児保健論 |
16 |
|
|
16 |
看護概論 |
16 |
|
|
16 |
介護概論 |
16 |
|
|
16 |
生命倫理学 |
16 |
|
|
16 |
リハビリテーション概論 |
16 |
|
|
16 |
障害福祉論 |
身体障害者福祉論 |
12 |
|
|
12 |
精神障害者保健福祉論 |
16 |
|
|
16 |
重症心身障害論 |
8 |
|
|
8 |
専門基礎演習 |
心理検査 |
|
16 |
|
16 |
面接技法 |
|
8 |
|
8 |
メンタルヘルス |
|
8 |
|
8 |
接遇マナー |
|
16 |
|
16 |
小 計 |
314 |
64 |
|
378 |
|
教育 内容 |
科目分類 |
履修科目 |
履修時間 |
講義 |
演習 |
実習等 |
合計 |
専 門 分 野 |
発達障害福祉論 |
発達障害医学 |
16 |
|
|
16 |
ソーシャルワーク理論 |
16 |
|
|
16 |
知的障害者福祉論 |
16 |
|
|
16 |
発達障害者福祉論 |
16 |
|
|
16 |
発達障害福祉史 |
24 |
|
|
24 |
発達障害支援論 (社会福祉援助技術論) |
児童発達支援論 |
16 |
|
|
16 |
生涯発達論 |
16 |
|
|
16 |
強度行動障害 |
16 |
|
|
16 |
虐待 |
16 |
|
|
16 |
触法・非行 |
16 |
|
|
16 |
性と支援 |
16 |
|
|
16 |
就労支援 |
16 |
|
|
16 |
家族支援 |
16 |
|
|
16 |
発達障害演習 (社会福祉援助技術論演習) |
研究方法 |
|
20 |
|
20 |
統計調査 |
|
20 |
|
20 |
創作活動 |
|
20 |
|
20 |
支援技法 |
|
60 |
|
60 |
講読演習 |
|
16 |
|
16 |
アセスメント |
|
20 |
|
20 |
個別支援計画 |
|
20 |
|
20 |
コミュニケーション支援 |
|
20 |
|
20 |
福祉機器 |
|
20 |
|
20 |
スーパービジョン |
|
20 |
|
20 |
カウンセリング |
|
20 |
|
20 |
多職種連携 |
|
20 |
|
20 |
事例研究 |
事例研究 |
|
|
40 |
40 |
見学・実習 |
見学 |
|
|
90 |
90 |
実習 |
|
|
464 |
464 |
特別講義 |
特別講義 |
|
|
256 |
256 |
特別研究 |
特別研究 |
|
|
80 |
80 |
小 計 |
216 |
276 |
930 |
1422 |
|
530 |
340 |
930 |
1800 |
|
児童指導員科年間予定表
4月 |
5月 |
6月 |
7月 |
8月 |
9月 |
10月 |
入学式 |
スポーツ交流会 秩父学園実習 |
国リハ体育祭 |
ケース発表 |
夏休み 施設実習 ボランティア実習 |
児童相談所実習 |
児童相談所実習 |
11月 |
12月 |
1月 |
2月 |
3月 |
社会福祉事務所実習 |
冬休み |
特別研究準備 |
特別研究発表会 |
卒業式 |