〔トピックス〕
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師教育課程
研修会と修了生の軌跡
脳卒中リハビリテーション看護認定看護師教育課程

 平成23年10月から開講した当教育課程は今年で5年目を迎える。開設時の準備に関わった諸先生方、職員の皆さんの思いがつながりあって脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の育成が継続されている。また、日本看護協会の認定部より指定された教育機関として教育の実績が期待され信頼が置かれている。
 認定看護師制度は、特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を用いて水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより、看護現場における看護ケアの広がりと質の向上をはかることを目的としています。当教育課程を修了後は認定看護師認定審査に合格し、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有することが認められた者をいいます。修了生は各々の現場で認定看護師の役割である「実践」「相談」「指導」を果たしています。
 すでに全国583名の脳卒中リハビリテーション看護認定看護師が活躍しており、その中で当教育課程の修了生は48名です。広島、京都、滋賀、栃木、群馬、新潟、東京、埼玉、山梨、千葉、神奈川、茨城、福島、青森、北海道等と全国各地で活躍しています。今回は修了生を中心とした研修会と修了生の軌跡をご紹介いたします。

1.修了生対象フオローアップ研修会
 当教育課程での研修会は今回で4回目の開催です。修了生達の希望ニーズを把握しながら少しずつ成長してきた研修会です。企画運営は教育課程が行いますが、認定看護師として活動中の教官の感性が生かされる研修ともなり、ニーズの把握がスムーズに、タイムリーな企画でした。今回の研修会は平成27年9月2日(水)10時〜17時、学院6階の大研修室にて行いました。修了生は33名参加、他の教育機関から4名、当教育課程6期生8名、総勢45名での研修です。Ⅰ部では国立障害者リハビリテーションセンター病院 粟生田看護部長(教育課程主任教官)から「看護研究の進め」と題して講演を行った。
 Ⅱ部では修了生からの活動報告を発表し、「実践」をキーワードにしたグループワークを行いました。Ⅲ部は東京都済生会中央病院内科・神経内科医長・脳卒中センターのセンター長である星野晴彦先生から「脳卒中治療ガイドライン2015改正のポイント」の講演をしていただきました。
 終日充実した研修内容に満足する研修会となりました。
 研修後のアンケート結果を示します。
 Ⅰ部・Ⅱ・部・Ⅲ部共に参加者の満足度は80%代であり、高評価でした。Ⅰ部の「看護研究のすすめ」では現場での認定看護師に求められることが多く、看護の質を向上していくためには研究的態度も重要なスキルであると思われました。学習の機会が少ない分、今回は有意義な時間となったようです。Ⅱ部のグループワークでは困っていること、悩んでいることについて、この場であるからこそ表現でき、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師どうしで話せる場があることを意味していると思われました。先輩や同輩達の工夫を聴くことで、活かせる内容やヒントを得ることができました。第Ⅲ部での「脳卒中治療ガイドライン2015改正のポイント」は私たちにとって必読書であり、バイブルであるほどの支えとなるガイドラインです。すでに購入して講演にそなえて準備された研修生もおり、感心しました。

2.修了生の軌跡


 第2期生修了生 小島昌人さんは社会福祉恩賜財団済生会東京都済生会中央病院脳卒中センター師長代理、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師として活動されています。忙しくされていますが、有意義な看護を実践されています。充実した取り組みが伺われる生き生きとした活動をここに紹介します。
 認定看護師としてのおもな活動には大きな柱として3つの役割があります。【実践】【相談】【指導】です。
 「実践」では、①役割モデルと看護実践、②病型に応じた循環動態と神経徴候のモニタリング、③離床支援とメンタルサポート、④再発予防のための患者・家族への指導、⑤看護の可視化とフィードバック、⑥関連部署連携強化と情報共有、⑦データの蓄積と結果の発信
 「指導」では、①エビデンスに基づいた看護の発信とリハビリテーション看護の導入、②院内外の看護教育のために勉強会や研修会の企画・運営、③フィールドワークとシームレスな看護提供に向けた連携の強化、④脳卒中リハビリテーション看護についての情報や知識の発信
 「相談」では①看護実践や計画の立案・修正について共に検討
 というように上記にあげた事項が主に認定看護師として現在行っている活動です。また、このほかに研究的活動も行っています。平成26年度の済生会中央病院での脳卒中センターの入院患者受け入れは緊急入院が30件〜50件/月、脳卒中の患者さんは年間300名でした。脳梗塞59%、脳出血27%、くも膜下出血8%、一過性脳虚血発作6%です。このように当病院は脳卒中対応の主たるセンターとして重要な役目があります。センターとしての大きな取り組みは「脳出血急性期の適切な降圧目標確立のための第Ⅲ相国際共同試験」という課題で共同試験をしていることです。関係する職種、職員の方々とともに研究的な活動もしています。
 この研究は、発症後4.5時間以内で治療が開始された脳出血患者における90日後の死亡および重度機能障害の割合を積極降圧療法群[収縮期血圧(systolic blood pressure:SBP)140mmHg以下と標準降圧療法群(SBP 180mmHg以下)で比較検討することです。認定看護師として独自の活動も大切ですが、チームで他部門の方々との活動もとても勉強になり意義あることと捉えています。
 最近の実践実績では、看護学生への講義、病院看護師への講義、執筆(回復期リハビリシリーズ)、回復期病院との交換研修、摂食・嚥下スクリーニングチャート策定、研究(共同研究)です。また、認定看護師通信を定期に発行し病院スタッフの多くに情報提供もしています。
 これからの活動の最大の目標は寝かせきりゼロ、座らせきりゼロ、不要な禁食期間ゼロです。私たち脳卒中リハビリテーション看護認定看護師はこのように発症予防への取り組みも同時に行う事で、多くの患者さんの願いである「家で生活するために可能な限り質の高い生活が継続できるようサポートする」ことです。理想と目標を持って活動していますが、しかし実際の認定看護師達は思うように活動ができず、悩んでいることが多いと思います。悩みは良くあることですが、私には大事にしたいことがあります。日々の業務に追われて認定業務ができない。何から手を付ければいいのかわからない。周りのスタッフに負担を感じさせてしまわないか。活動をどう評価すればいいのか。といろいろに悩みます。
 私見での大きな課題は「スタッフとの情報の共有」だと考えています。プラス専門的知識、技術の発信と浸透です。マイナスの面では負担感の増加、客観的データ不足です。これらプラス面とマイナス面を合わせて客観的数値に基づく成果の見える化、実践をリフレクションする(看護を語る)ことが重要です。看護をリフレクションすることです。病院看護部の仲間達の看護について語り合い、振り返り、何気ない看護実践の価値を見いだしていくことが大切です。
 最後に看護の質をあげることにつながる大切なことをあげます。①患者さんからの「ありがとう」をみんなで共有する。②何気ない看護実践を意味づける。③患者さんにとっての意味を考えながら看護を実践する事で確かなものとし、誇りと自信をもつことです。
 教育課程を修了し、3年経過しますが、脳卒中リハビリテーション看護認定看護師としての認知度を上げ、関係する方との協働を通してさらに高度な知識と技術の提供ができるよう自己研鑽を積んでいます。師長代理として役割が増えましたが、認定看護師の原点を忘れず日々活動しています。