〔巻頭言〕

平成28年度を迎えるにあたって

総長 飛松 好子


 この度、本年4月1日付で国立障害者リハビリテーションセンター総長を拝命いたしました飛松好子です。
 私が最初に国立障害者リハビリテーションセンターに来たのは昭和60年のことです。当時は100床の病院で、開設から5年が経っておりました。当時診療部長であった二瓶隆一先生が、特色ある病院にするにはどうしたらよいかということで、脊髄損傷のリハビリテーションをしようということになっていました。当時は頚髄損傷などとんでもないという雰囲気でしたが、だんだん看護助手さんや食事介助の職員も入れて、最終的には人工呼吸器付きの方々も受け入れが可能になりました。
 高次脳機能障害の方々もモデル事業の始まる前から少しずつ病院に入院してこられるようになったのですが、最初はよく解らず、タイヤの跡も生々しい交通事故による頭部外傷の方が入院してきて、食事も取ろうとせず、看護師とどうしたらよいかと顔を見合わすような始末でした。10年の間を空けて再度センターに戻ってきたときに、とある看護師が「10年高次脳機能の患者さんに関わって、今では自信を持って高次脳機能障害の方の看護とご家族のご指導ができるようになりました」といいました。それを聞いて、これが積み重ねということなのだなあと思いました。
 ここで私が言いたいことは、今ではセンターが自信を持ってサービスを提供しているような障害も過去の人々の試行錯誤と努力の上にあり、決して最初からできていたものではないということです。そしてまた、それらは今もって完成されたものではありません。世の中の動きとともにどのようなリハビリテーションを行っていくかということは、常に今日的課題であるということです。
 病院のことを例に申し上げましたが、同じことは学院においても、自立支援局においても研究所においてもいえることです。
 昨年は多くの視察があり、どのように理解していただけるかという工夫を通じて自己発見をしたような処があります。また発達障害や吃音、健康増進・運動医科学支援といったものがある限られた部署が行っているのではなく、センター全体で取り組んでいるということも再認識することができました。
 前総長の中村耕三先生がPDCAサイクルを開始したことにより、組織目標の達成度に関し自己評価も他者による評価もできるようになりました。
 これまでのセンターの流れを把握した上で、勢いを止めず、かつ新しいことを目指して努力して参りたいと思います。
 ナショナルセンターとして次々に新たな課題に取り組み、世の中の動きに沿ったリハビリテーション、研究開発を行い、情報発信していくのがセンターの使命です。
 センターの皆様と共に歩みたいと思いますのでどうかよろしくお願い申し上げます。