〔特集〕
学院における発達障害支援の人材育成について
学院

養成における取り組み
 学院には障害のある方々を支援する専門職を養成する6つの学科があります。そのなかで児童指導員科は我が国で唯一の発達障害分野における福祉専門職を養成する学科です。また、多様な障害に対して支援できるよう専門に分かれた他の学科でも、例えば吃音症やディスクレシアの評価と対応(言語聴覚学科)、発達障害者の運動支援や運動処方の演習や実習(リハビリテーション体育学科)など、発達障害を学ぶカリキュラムを組み込んでいます。
 学院児童指導員科のミッションは、1年間で発達障害を学び、具体的に支援できる福祉専門職を養成することです。応募資格は、4年制大学卒業または保育士資格を有する人(見込み含)です。現在、来年度学生募集中です。興味関心のある方は、是非、学院ホームページをご参照ください。
 発達障害のある子どもが増え続けているのは、図1(文部科学省(2016)平成27年度通級による指導実施状況調査結果について)のとおりです。『発達障害は、脳機能の発達が関係する生まれつきの障害です。発達障害がある人は、コミュニケーションや対人関係をつくるのが苦手です。また、その行動や態度は「自分勝手」とか「変わった人」「困った人」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。それが、親のしつけや教育の問題ではなく、脳機能の障害によるものだと理解すれば、周囲の人の接し方も変わってくるのではないでしょうか。』(政府広報オンライン 暮らしのお役立ち情報 特集発達障害って、なんだろう?)
画像:図1(文部科学省(2016)平成27年度通級によ
る指導実施状況調査結果について
図1
 「発達障害」という単語はだいぶ知られるようになりました。しかしながら、発達障害者支援法にある「できるだけ早期に発達支援を行うことが特に重要である」とする支援はまだまだ足りないのが現状です。先にあげた誤解されたイメージだけが先行すると、本来の力を発揮できずに、ご本人も、周りの人間も、「困り感」が増幅していきます。
 児童指導員科では、平成27年度から「発達障害」に特化した新カリキュラム(図2)を開始しました。内容を見直し、「発達障害者福祉論」「家族支援」「他職種連携」などの科目を新設しました。医学、教育学、心理学などの分野でも発達障害を学ぶことはできます。しかし、発達障害を中心とした実践的なカリキュラムを行っているのは全国でも児童指導員科だけです。
画像:図2新カリキュラムの紹介
図2
 まず、多くの現場経験豊富な講師による講義があります。また、学院で開催する知的・発達障害に関する全ての研修会を聴講できることは児童指導員科学生の特権です。そして、実践力を高める上で極めて重要な療育実習は、学生自身がアセスメントし、計画、実行、評価を繰り返す内容となっています。中間と最後にはケースカンファレンスを開催し、これまでの経過を振り返り、今後の目標について保護者や関係者とともに検討していきます。さらに今年度は「保育園実習」を追加しました。子どもとの触れ合いの中から、子どもそれぞれの個性や成長があることを学ぶためのとても貴重な時間となっています。
 「発達障害」は、その理解が難しい障害です。児童指導員科では、「障害」「障害ではない」という視点ではなく、「発達支援」が必要であれば、必要な支援を検討し、関係者と連携して支援できる専門職、ご本人の生活や人生に寄り添える専門職の養成を目指します。

現任研修における取り組み
 学院では年間35回の研修会を行っています。そのうち13回が知的・発達障害関係の研修会です。平成24年度に知的・発達分野の研修全体を大きく見直し、発達障害関係については25年度〜27年度も引き続き変更しました。28年度現在、発達障害支援に関する研修のうち5つについては国立機関で国が行うべき研修として位置づけられ、発達障害者支援センター職員や発達障害者地域支援マネジャーなど発達障害施策に携わる職員を対象に、厚生労働省と緊密に連携しながら企画し、実施しています。
 広く発達障害児者支援にあたる方を対象とした研修会のニーズは高く、定員を大きく上回る応募があります。例えば自閉症支援入門研修会には、40人の定員に対し176人の応募がありました。昨今の要支援者の増加とともに支援の現場で対応に苦慮していることの現れと考えます。そのため、自閉症に特化した入門→実践→専門とステップアップする学院独自の研修も行っています。
画像:研修会の様子 話し合いながら支援方法を考え、
実際にやってみる実践型研修の様子
(平成28年国リハASD支援者連携セミナー より)
 昨年5月に発達障害者支援法が改正されましたが、研修は法改正を見越した内容としています。例えば平成26年度より「発達障害就労移行支援者研修会」を始めました。法改正で司法手続での意志疎通手段の確保が求められるため司法精神鑑定の専門家による講義や面接技法演習を取り入れました。またこの4月の熊本震災に関連して「災害時の緊急対応」を講義に入れるなど、社会の動向、国の施策、受講者のニーズなどを踏まえて企画しています。
 これらの研修の受講後のアンケート結果では、内容について「よい」「非常によい」を併せた結果が平均93.9%という高い評価をいただいています。
 今後も発達障害関連の研修会ニーズは高まることでしょう。内容や運営を工夫し、より質の高い研修を提供できるよう努めてまいります。