〔特集〕
平成29年度運営方針 研究所
研究所長 小野 栄一

 中期目標に沿って①臨床現場を有する特性を活かした研究、②障害者の自立と社会参加を支援する研究、③国の政策立案に資する研究を推し進めており、方針は昨年とほぼ同様です。以下、誌面の都合により、各方針の詳細は割愛し羅列します。

支援技術・支援機器・支援システムの研究開発

 臨床現場を有する特性を活かした研究の推進
(1)新しいリハビリテーション技術の開発
中枢神経疾患の運動器リハビリテーションに関する研究
損傷神経・組織の解剖学的な再建を目指し分子生物学的、繰り返しの神経入力による機能回復を目指し行動科学・神経生理学的なアプローチを進めます。
メカニカルストレスと運動器機能維持に関する研究
マウスを用いてメカニカルストレスの影響を解析します。糖代謝や脳機能など運動器以外の組織・臓器機能との連関も解析します。
吃音の評価法・支援法に関する研究
幼児吃音の実態把握、介入方法の開発、ガイドラインを作成します。地域連携モデルを作成します。青年期以降の吃音治療法の開発、成人吃音に対する簡便な評価方法と行動療法を開発します。脳機能を測定し、吃音の病態解明を進めます。
新しい義肢装具・リハビリテーション手法の開発と応用
義肢装具の開発や製作技術向上、利用者へ客観的データをフィードバックしリハビリテーションの質の向上へ繋げます。
重度・重複障害者を対象とした福祉機器適合サービス体制の提供
シーティング・クリニックをします。
(2)新しい診断・治療技術の開発
発達障害の認知特性の解明と支援法開発に向けた研究
認知行動特性を調べ、動物モデルとの比較を行い、個人差の背景にある神経基盤の解明、障害を補う訓練方法の開発に向け研究します。
脳内ネットワークの評価と再構成に関する研究
課題遂行中の脳活動の計測・解析技術の開発、脳内ネットワーク再構成誘導手法を開発します。
失語症の病態解明とリハビリテーションに関する研究
認知神経科学的研究により、数量概念、計算の脳メカニズムの解明をします。
障害者の二次障害予防に関する研究
難易度の高い褥瘡対処法の開発、遠隔地のシーティング・クリニックへ通信技術を用い た手法を開発します。
視覚障害の遺伝子診断技術とその臨床応用に関する研究
網膜色素変性患者由来の体細胞を変性網膜細胞に変換し解析します。遺伝子変異の種類と病態関連を動物モデルにて明らかにします。
聴覚障害の病態解明と聴覚補償に関する研究
神経生理学的な手法を用いた病態解明および新方式の補聴器に関する研究をします。
(3)部門横断的研究プロジェクトの推進
 連携促進の課題解決策を提案します。

 障害者の自立と社会参加を支援する研究の推進
(1)先端技術を導入した支援機器の開発
ブレイン・マシン・インターフェイス(BMI)技術の実用化研究
実証評価の研究を推し進めます。環境制御装置や上肢アシストスーツ等のBMI被制御機器の改良を進めます。
利用者の特性に適合する超ユニバーサル化福祉機器の開発
適応的機能実現に関して、運動計測技術および運動認識技術を構築します。
支援機器の効果的な臨床評価手法に関する研究
今後の臨床評価研究に向けた評価指標を得ます。
支援機器用要素技術の開発
BMI用脳波測定用電極の改良研究、せん断力センサの応用研究に必要な開発をします。
(2)当事者参加型研究の推進
当事者参加型の情報創発基盤の構築
新たな機器や利活用手法の開発の方法論を実践事例にもとづき構築します。
精神障害者の意向・実践知に即した機器による支援モデルの構築
道具に対するニーズ、アセスメントの要件に関し、文献レビューをします。
(3)支援技術・支援機器の普及に関する研究
軽度認知症者を支援する福祉機器の利活用モデルの構築
情報支援機器の利活用モデルを高齢者施設に実装し、課題を抽出します。
高次脳機能障害者の生活・移動を支援する機器の実用化と普及
試作支援アプリの改良、交通機関利用困難さの解析、それらの情報発信をします。
福祉機器の標準化の推進
下肢装具足継手の試験データを収集します。
障害者のスポーツ・運動用装具等の開発と普及
障害者のスポーツ・運動用装具等の試作と改良、その供給を促進する製作技術を検討します。

 国の政策立案に資する研究の推進
(1)行政データの解析
障害関係データの利活用に関する研究等
平成33年度に実施予定の全国在宅障害児者実態調査に向けた課題整理をします。
障害福祉サービスの整備状況と利便性向上に関する研究
方策について検討と自治体への普及をします。
(2)施策立案への提言
障害認定の在り方に関する研究等
身体障害認定基準のあり方に関する検討をします。
補装具費支給制度の種目構造および価格設定に関する研究
施策立案に資する提案をまとめます。
完成用部品指定申請/事前審査システムの開発
システムを整備します。
災害における障害者支援の在り方に関する研究
障害者の災害準備の具体的な方法を考案します。

 人材の育成
(1)研究員、研究生及び実習生等の受け入れ
(2)職員の資質向上のための組織的な人材育成
 研究倫理に関する意識向上のための研修実施などを推進します。

 リハビリテーションに関する情報収集及び提供
(1)利用者のニーズに応じた情報の発信
 支援機器開発相談DB、支援機器臨床評価DBの充実を図ります。
(2)近県のリハビリテーションセンターとのネットワークの構築
 補装具支援状況および義肢装具の選択・選定情報を共有します。

 リハビリテーションに関する国際協力
(1)福祉機器の国際標準化への協力
 ISO/TC173/SC2、ISO/TC173/WG10、WHO国際生活機能分類について関わります。

 業務遂行の向上
 研究費の適正な執行に向けた環境整備等をします。

 歳出予算等の効率的執行
(1)環境適応室の環境整備
(2)外部資金(競争的研究資金等)の積極的活用