〔特集〕
車いすスポーツの紹介
学院リハビリテーション体育学科 教官 梅崎多美

 当センターで行われている車いすのチームスポーツをご存知ですか? 今回、各クラブのキャプ テンにもお話を聞きながら、その概要と魅力についてご紹介します。

 車いすスポーツの特徴
(1)クラス分け
 車いすのチームスポーツでは、障害の程度に合わせて各選手に「持ち点」が設定されています。例えば車いすバスケットボー ルでは、障害程度が最も重い1.0点から程度が軽い4.5点まであり(0.5点刻み)、コート上にいる選手5名の合計が14.0点未満で編成しなければなりません。これにより障害の軽い選手だけでなく重い選手にも出場機会が生まれ、チーム間の不平等を軽減しています。
(2)競技用車いす
 車いすを正面から見た際、タイヤの上部が内側に傾く「ハの字」の形にタイヤが取り付けられています。これにより、少しの体重移動で回転運動が可能になるうえ、車いすが接触しても選手の手が互いのタイヤに挟まれなくなるメリットがあります。また、足の保護と接触時の引っ掛かりを避けるための「バンパー」や、後方への転倒を防止するための「バックキャスター」もあります。加えて、ウィルチェアーラグビーは激しくぶつかり合う競技特性のため、使用する車いすは装甲車のような見た目です。そして「攻撃型」と「守備型」という、それぞれのプレースタイルに合わせた形に分かれています。

 車いすバスケットボール
   車いすバスケットボールとは、脊髄損傷や切断など、主に下肢に障害のある人が行うバスケットボールです。1964年、アメリカの退役軍人病院において車いす生活となった人たちが始めたのが最初とされています。一般のバスケットボールのルールとほぼ同じで、1チーム5名の選手で一般の競技と同じ高さ(3.05m)のゴールにボールを投げ入れて得点を競います。ゲームは10分のピリオドを4回行います。
〈五嶋キャプテンから一言〉
  速いスピードの中で巧みな車いす操作を行い、味方とコミュニケーションを取りながら、いかにシュートを決めることができるか? 一般のバスケットボールと変わらないルールで取り組めるのが魅力です。バスケットボールをしている時は、自分が車いす利用者である事を忘れることができます。仲間と一緒にプレイするのは本当に楽しいです。

 車いすツインバスケットボール

  車いすツインバスケットボールとは、下肢だけでなく上肢にも障害のある重度障害者でも参加できるスポーツです。1977年に日本で考案された種目で、頸髄損傷者の機能回復訓練の一手段として病院のリハビリテーション領域から誕生しました。最大の特徴は、名称の通り【ツイン】、つまり二組のゴールが設けられていることです。従来の高さのゴールの他に、もう一つの低いゴール(1.2m)を置き、高いゴールには届かない選手のためのゴールとしました。さらに、その周囲には直径3.6mの円(フリースロー・サークル)があり、低いゴールにシュートをする選手を円内(えんない)と円外(えんがい)に区別しました。「円内」「円外」「上」シューターに分けることにより、選手は自分の障害に応じて各々の役割を果たすことができるようになっています。ボールは5号球のゴムボールを使用します。
〈福田キャプテンから一言〉
  ツインバスケットボールの魅力は重度の障害の人でも参加できるという点です。競技名の通り低いゴールがあるため、一般の高さのゴールには届かなかった人でも参加できるようになります。障害が重くても「バスケットマン」になれるのです!! 苦労している点は、バスケットボール専用車いすへの移乗です。障害が軽い場合は自分自身で乗り移りができますが、障害が重い人は一人では難しいのです。私自身、障害が重いので(頸髄損傷6番)、移乗の際には誰かの手が必要不可欠です。

 ウィルチェアーラグビー

  ウィルチェアーラグビーとは、頸髄損傷を主とした四肢麻痺者が行うチームスポーツです。ラグビーだけでなくバスケットボールやアイスホッケーなどの要素を取り入れ、1977年にカナダで考案されました。この種目は車いす同士の接触が認められており、その激しさゆえに過去には「マーダーボール(殺人球技)」と呼ばれていました。バスケットボールコートを使用し、バレーボール球を基に開発した専用球を用います。ボールを保持して8mの「ゴールライン」を車いすの2つの車輪が越えると1点が入ります。1チーム4名で、唯一の男女混合のチームスポーツです。ゲームは8分間のピリオドを4回行います。昨年のリオパラリンピックでは銅メダルを獲得し、2020年の東京大会への期待も高まっています。
〈荒武キャプテンから一言〉
  競技の魅力は何と言っても車いす同士が激しくぶつかるコンタクト! 体育館中に響くその迫力は圧巻です。攻撃型の車いすでぶつかり合う選手と守備型の車いすで「壁」となって味方を助ける選手の駆引きも見所です。しかし、選手だけでは難しいこともあります。専用車いすへの移乗、タックルによる転倒からの起き上がりの補助やパンク修理など、支えてくれるスタッフの人がいてこそ成り立つスポーツなのです。

 車いすのチームスポーツにおいて、最も勝敗を左右するのは選手間のパスワークと車いす操作技術(チェアワーク)です。お互いの障害の状態をしっかり把握し、それに応じた正確なプレイが必要となるため、日頃の練習時からお互いに声を掛け合い、意思を通じ合わせながら取り組んでいます。
 各クラブの活動情報は次の通りです。興味のある方はぜひ一度、第一体育館へ足を運んでみてください。

<活動情報>
車いすバスケットボール:毎週月・金曜日の17時〜および毎週水曜日の18時30分〜
車いすツインバスケットボール:毎週木曜日の18時30分〜
ウィルチェアーラグビー:毎週月・金曜日の18時30分〜
画像:車いすバスケットボール用車いす(前方と背面)
車いすバスケットボール用車いす(前方と背面)
画像:ウィルチェアーラグビー用車いす(左:攻撃型・右:守備型)
ウィルチェアーラグビー用車いす(左:攻撃型・右:守備型)
画像:車いすバスケットボール用車いす(前方と背面)
車いすバスケットボール用車いす(前方と背面)
画像:各クラブのキャプテン達
各クラブのキャプテン達