〔特集〕
学院における養成・研修の取組と卒業生・修了生の活躍

言語聴覚学科について
 当学科は国家資格である言語聴覚士を養成する言語聴覚士養成校で、4年制大学卒業以上の者を対象とする2年課程です。
 言語聴覚士は言語聴覚障害児者を支援する専門職です。言語聴覚障害は大変多岐にわたりますが、大きく分けると成人した後、疾病の後遺症で発症する失語症、高次脳機能障害や声の障害、摂食・嚥下の障害などと、小児のことばの遅れや発達の障害、さらに吃音、聴覚障害などがその領域です。
当学科の沿革
 1971年(昭和46年)我が国で初めて聴能言語専門職員の養成を始めた国立聴力言語障害センター(新宿区)附属聴能言語専門職員養成所(1年制20人定員)を前身とし、1979年(昭和54年)7月、埼玉県所沢市への移転・統合に伴い、国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・聴能言語専門職員養成課程となりました(初代学院長、柴田貞雄)。1982年(昭和57年)に定員を30人と改め、1992年(平成4年)に2年制に、そして1998年(平成10年)には言語聴覚士法の制定施行に伴い言語聴覚士養成所として厚生大臣の指定(第一号)を受けました。 1999年(平成11年)言語聴覚学科となり、2008年(平成20年)施設名称の変更により、現在の名称となりました。国立で「言語聴覚士」を養成する機関は日本ではこの学科のみです。
当学科の特徴と教育方針
 学院のある国立障害者リハビリテーションセンターは、広大な敷地にリハビリテーションセンター病院や研究所等の施設を擁し、言語聴覚士をはじめ多くの専門職が勤務しています。この恵まれた環境と伝統を生かし、センター内外の優れた講師陣により言語聴覚士としての基礎および専門的知識を授けることはもとより、臨床家としての柔軟なコミュニケーション能力の涵養を視野に入れ、講義や実習を通じて言語聴覚障害児・者とその家族、また、リハビリテーションスタッフに対するコミュニケーションパートナーシップの確立も重要な課題と考えています。
 そのため、入学当初よりアクティブラーニング(グループでの話し合い・教えあい活動)、身体的感覚を磨く学習、自己を顧みる学習などが展開され、また、専任教官とも面談、グループ学習などを通じ緊密な関係性と親しみをもって接していることが特徴です。現在の教官は全員が卒業生でもあり、かつて同じように言語聴覚士を志した者として、学生生活全体をサポートし、より充実した学びになるよう支えています。いろいろな背景をもつ学生が集まるからこその豊かさがあります。言語聴覚士という仕事はとても奥が深い仕事です。2年間を通じて、教官も学生も学びあえる学科でありたいと思っています。
 また、卒業論文が全員に課されることも特徴です。卒業後は学会で症例報告や研究発表をすることを念頭に臨床実習の経験を症例報告などの形で卒業論文にまとめることが要求されます。さらに何度か中間発表を行うことによって、教官・学生間で内容を共有し、理解を深めていきます。
 このような環境と教育プログラムにより、深い人間理解に基づく自発的で柔軟な臨床の構築力と闊達な研究能力を養い、リーダーとしてふさわしい人間的な魅力に富む言語聴覚士を育てています。
画像:言語聴覚学科の新入生
国家試験について
 学生と教員が一緒になって努力し、この10年、国家試験合格率は100%を維持しています!なお、当学科での国家試験対策は最終年次の2年生夏休みから開始され、12月頃には本格的な試験勉強期間に入ります。
卒業生の進路
 学科卒業時の就職先は一般病院が多く、動向調査ではその後養成校や大学など言語聴覚士の育成に係わっています。学会発表等、学術的な活動への参加も積極的であり、平成25年度の日本言語聴覚学会では270演題中60題に卒業生の名前がエントリーされていました。その他日本言語聴覚士協会や各都道府県の支部活動でも活躍しています。
在校生インタビュー
画像:神山智子さんの写真
 最近は社会人経験を経て学科に入学され、言語聴覚士の資格取得を目指す方が増えてきています。平成28年度に入学された神山智子さん(社会人経験者)に、学科の印象についてインタビューをしました。
Q1 どのような社会人経験があるのですか?
A1 肢体不自由の特別支援学校で教諭をしていました。中学部で日常生活支援や音楽を担当していました。日々生徒と過ごしていて、ゆっくり時間をかけながらその子なりに成長していく姿を見ていました。
Q2 学科に入学して思ったことは?
A2 入学してまだ2ヶ月ですが、仕事をしていた頃の疑問が解けたり、意識していなかったことに気がつくようになったりするので、授業はとても楽しいです。働いている時は何かを調べる時間すら取れなかったので、今勉強に専念できるのはとてもうれしいですね。学科の印象は、まずコミュニケーションを大事にしているなと思います。
クラスメートとディスカッションしたり、教えあったりすることがとても新鮮です。
Q3 卒後の計画がありますか?
A3 そもそも休職制度を利用しての入学なので、また学校に戻ります。そこでより専門性の高い支援をしたいです。学校現場には教育のプロはたくさんいますが、医療のプロはいません。その中で、医療ニードのある子の支援方針で悩む先生も多いのが実情です(私もその一人でした)。悩んでいる先生に何かしらのアドバイスが出来るようになればいいなと。
Q4 学校現場の先生方にST学科の学生として一言お願いします。
A4 明日の準備、来週の準備、行事の準備、成績評価、学内の係、会議…現場は本当に多忙ですよね。この学院に入って、知識をどんどん得て、学院の先生方やクラスメートと一緒に考えを深めていける時間は本当に貴重なものだと、入って間もないですが痛感しています。多くの先生方にもその良さを知っていただきたいですね。
その他にも、学院についていくつか新しい制度変更や試みがありました。学生にとってより学びやすい環境を整え、卒後もすこしでも安心して言語聴覚士を続けられるような取組を続けていきます。
教育訓練給付金
 平成29年4月から、教育訓練給付金の申請(社会人経験者対象)ができるようになりました。平成29年度では、入学生の方のうち、7名の方が利用しています。
ホームカミングデー
 平成28年度より、ホームカミングデーを開催しています。在学時に知り合うのは上下3年ですが、ここではそれを超えて卒業生同士のネットワーク作りや転職の相談、旧交を温める場として設けています。下の写真は昨年度お集まりいただいた方々です。
ホームページ
 平成29年度4月に学科HPは全面リニューアルを行いました。アクセスしていただければ幸いです。
画像:言語聴覚学科の学院生