〔特集〕
3Dプリンタを活用した自助具製作の
有用性検証に関する研究
研究所 福祉機器開発部 福祉機器開発室長 硯川 潤

研究期間:平成28年7月〜令和2年3月
研究代表者:硯川潤
部門間連携先:自立支援局第二自立訓練部
連携内容:第二自立訓練部作業療法室と連携し、3Dプリンタを活用した自助具製作を実施。
研究ゴール:作業療法の現場において、3Dプリンタを活用した自助具製作の有用性を検証する。

研究概要
 自助具は主に上肢を使った作業を補助するための福祉用具です。製品として購入可能なものもある一方で、ニーズが多岐にわたるため作業療法士が手作りすることもあります。手作りの場合、ものによっては耐久性や形状精度の不足が問題となっていました。そこで、近年低価格化している3Dプリンタを自助具の製作に応用 する研究を進めています。本稿では、本センター自立支援局第二自立訓練部の作業療法士と共同で、入所する頸髄損傷者の方々に製作した事例を紙幅の許す限りご紹介します。

事例紹介
⒜キーボードの押下:手掌部に装着し、パソコン操作に用います。手掌のサイズなどに応じて、各部の幅や角度を調整する必要があります。従来はアルミ材を曲げて製作していたため、細かい調整は困難でした。そこで、身体機能の評価結果にもとづいて数個の値を設定すると、所望の立体形状データを生成できるソフトウェアを新たに開発しました。
⒝シリンジピストンの固定:導尿カテーテルのバルーンに蒸留水を注入するシリンジのピストン部に取り付け、その固定に用います。注水後にシリンジを抜去する時、バルーンの反発力でピストンが押し戻されないように保持・固定する必要があります。手指機能に制限があるとシリンジ抜去とピストン固定の動作を同時に遂行できないため、この自助具が必要となります。
⒞鍵の保持と回転:玄関ドア等の鍵に取り付けて用います。小さな力でも鍵の回転に必要なトルクを発生できるようになります。
⒟消毒液スプレーボトルの保持:自身の膝の上にボトルを置き、スプレーを噴射するときに、安定して保持するための自助具です。
⒠電動髭剃りへの電源コード着脱:流線型の筐体形状に合わせた固定具に髭剃りを置き、電源コードを抜き差しします。コード側にも、指を引っ掛ける紐を通す器具が取り付けられています。
⒡電動髭剃りの保持と電源ボタンの押下:手掌の甲側で髭剃りを保持するために用います。髭剃りを机などに押し当てると、電源ボタンも押下できます。国リハ入所前の入院先で手作りされたものが古くなり、再製作しました。
⒢飲料缶の持ち運びと保持:アームレストに自助具の一部をはめ込むことで車椅子に固定できるので、飲み残しがあっても手漕ぎ動作の妨げになりません。
⒣自動販売機からの釣銭回収:自立支援局に設置されている自販機から釣銭を回収するために製作しました。返却口にこの自助具をはめた状態で、釣銭を投下します。自助具を取り外す時は、返却口の蓋を棒で奥に押し付けます。
⒤スマートフォンからのケーブル抜去:抜去に必要な力を軽減するための、てこの原理を用いた自助具です。レバー先端を倒すと、反対側がスマートフォン筐体を押し、ケーブルが引き抜けます。
⒥コンセントからのケーブル抜去:上記のコンセント版です。
⒦電動ベッド用コントローラボタンの押下:ボタンの突出高さが低く押しにくい場合に用います。押下に必要な力も軽減できます。
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