〔トピックス〕
WHO指定研究協力センターの活動と指定更新について
企画・情報部 企画課 国際協力室

 当センターはWHO(世界保健機関)の障害とリハビリテーションに関する方針や活動に協力することを目的として、1995年7月にWHOから“障害の予防とリハビリテーションに関する指定研究協力センター”としての指定を受けています。
 WHO指定研究協力センターは、WHOのプログラムをサポートするための国際的な協力ネットワークとしてWHOにより認定された施設(組織)で、WHOの政策を進め、必要な情報を収集、普及する役割を担っています。
 WHOは世界を6つの地域(アフリカ、米州、南東アジア、欧州、東地中海、西太平洋)に分け、150か国・地域の加盟国と協力して全ての人々の健康増進のための国際専門機関として活動をしています。
 日本は西太平洋地域に所属しており、この地域は地図に示されているように、多くの島国で構成されています。
 この地域において当センターは、中国、香港(WHOの地域区分による)、オーストラリア、韓国の指定研究協力センターともセミナー等を通じた協力をしています。なお、日本国内には現在36か所の指定研究協力センターがありますが、障害の予防とリハビリテーションに関するものは当センター1か所です。
 本紙面では、障害とリハビリテーションに関するWHOの最近の動向と当センターの活動及び指定の更新についてご紹介します。
 障害とリハビリテーションに関する現在のWHOの方針、行動の計画として下記の3つが挙げられます。
(1)障害に関する世界行動計画2014 −2021(WHO global disability action plan 2014-2021)
(2)リハビリテーション2030(REHABILITATION 2030: a call for action)
(3)西太平洋地域のリハビリテーションに関するフレームワーク(Western Pacific Regional Framework on Rehabilitation)
 2014年にWHO総会で採択された(1)の“障害に関する世界行動計画2014−2021”は国連障害者権利条約に沿って作成されたものです。WHO は、障害は保健・医療だけでなく、人権、社会開発に関連する課題であると述べています。
 この行動計画は“全ての障害がある人々のより良い健康”を実現するために、①障害がある人々の保健・医療サービスへの障壁を取り除き、利用しやすくする②リハビリテーション、ハビリテーション(新たに能力・技能を獲得する、能力を向上させるための過程)、支援技術(支援機器を含む)、地域に根差したリハビリテーションを強化する ③障害に関する国際比較可能なデータ収集を強化し、障害やサービスに関する研究を支援する の3つの目的のために加盟国と関係団体がとるべき行動を示しています。
 次に、2017年に、リハビリテーションを強化・拡充するためにとるべき行動をWHOが示したものが(2)の“リハビリテーション2030”です。リハビリテーションを障害がある人々にだけではなく、高齢者や生活習慣病等の慢性疾患等がある全ての人々に提供されなくてはならないものと位置づけており、2030年(国連開発計画の目標年)までに各国が行うべき10の行動を示しています。
 上記の2つは世界的な行動計画ですが、西太平洋地域においてリハビリテーションに関して取り組むためのガイドラインとして作成された(3)の“西太平洋地域のリハビリテーションに関するフレームワーク”では、地理的、経済的な多様性のある西太平洋地域において、①質の高いリハビリテーションを人々が利用できるようにするための提供内容や物理的な改善 ②国や自治体のガバナンス ③リハビリテーションの人材育成 ④データ収集と研究に取り組むことを提唱しています。
 このように、WHOはこの数年間に障害及びリハビリテーションについての方針・行動計画を示し、加盟各国にはこれを踏まえて自国の実情に合わせた活動を行うことを求めています。
 各国の指定研究協力センターは、このようなWHOの方針の実現に協力するために活動の大枠としての“協力事項”と具体的な活動の内容を示す“行動計画”を策定し、活動を行っています。
当センターは25年間にわたり、指定研究協力センターとしての活動を行っています。1回の指定期間は4年間であり、直近の4年間(2016 年10月から本年10月まで)では次の4つの行動計画を実行して参りました。①障害がある人々のスポーツ活動と健康増進に関して、障害がある人々のスポーツに関するマニュアルの作成・西太平洋地域等への配布 ②福祉機器に関する情報として、日本の補装具費支給制度の概要をレポートにしてWHOに提供 ③災害時における障害者支援に関して、日本の経験や取り組みをWHOに提供 ④WHOの方針等に関する普及のため、国際セミナーを開催。
 本年10月からの次の4年間の更新に際して、当センターはWHOの“西太平洋地域のリハビリテーションに関するフレームワーク”に沿った5つの行動計画を予定しています。
(1)障害がある人々の健康増進に関する知識や資源の開発
(2)災害時の障害がある人々の避難受け入れ手順に関する開発
(3)地域のリハビリテーション人材育成に資する手引きの開発
(4)障害がある人々の総合的リハビリテーションに関する情報提供
(5)リハビリテーション、障害、支援技術に関するWHOの政策・方針の普及
 当センターはこれらの行動計画の実行を通じて、WHOの障害とリハビリテーションに関する方針の普及や知見の提供、西太平洋地域の国々への情報提供等を今後とも行って参ります。


出典:WHO Western Pacific ホームページ
https://www.who.int/westernpacific/about/where-we-work