〔特集〕
小児吃音外来について

病院 リハビリテーション部 言語聴覚療法 言語聴覚士 角田 航平

 小児吃音外来では18歳(高校卒業学年相当)までの吃音のある方に対応しており、例年80~90名程度の初診患者を受け入れています。初診の方には、まず言語聴覚士による聴力検査が行われ、吃音症状などの状態を確認した後に、医師の診察があります。その結果がミーティングで担当する言語聴覚士に共有され、詳細な評価、指導と続いていきます。指導方法は年齢によって異なります。

1 幼児への対応

 幼児期のお子さんでは、言語療法や吃音のある子どもが話しやすい環境を作る環境調整といったアプローチが行われます。令和3年10月に森総長らの研究チームにより幼児吃音臨床ガイドラインが発行され、対応方法が整理されましたが、当院では従来よりガイドラインに記載されている治療方法で対応してきております。

2 小学生への対応

 小学生については、学校に併設されている言語障害通級指導教室(ことばの教室)で多くの児童が指導を受けています。吃音のある小学生の問題の多くが学校で生じるため、当院においても在籍する学校と頻回に情報交換ができることばの教室の利用を積極的に勧めています。当院にいらっしゃる児童においても、すでにことばの教室で指導を受けている場合が多くあります。そのような場合、当院でも児童と定期的にお会いし、状態を確認した上で計画の立案や進捗状況についてことばの教室と情報交換しながら指導を進めています。

3 中学生以降の方への対応

 中学生以降の方については、吃音の症状だけでなく吃音に関係する悩みや困り感といった心理面の問題が大きくなる時期であるため、言語療法だけでなく認知行動療法などの心理療法を併用して対応しています。また、中学生以降の方は成人と近い臨床像を呈することも多いため、成人吃音外来で使用されている評価法や指導法も用いられています。

4 当外来の特徴

 このように、対応が年齢によって異なることや、対応できる期間が決められている機関(例えば、ことばの教室は小学生の間のみ)が多いため、他機関では就学、進学に伴い対応が終了してしまうことがあります。当院では、就学や進学によってライフステージが変わっても継続して受診していただくことができます。幅広い年齢に対応することで得られる経験や技術は、当外来の強みになっています。
 また、各種試験などにおいて吃音があることを事前に知らせることができると明記されていたり、事前に知らせることで、吃音のある方が安心して試験に臨めるということが言われています。これには、医師の診断書による公的な証明や、言語聴覚士が対応方法の報告書を作成することで対応しています。

 以上、小児吃音外来での対応について説明してきました。近年メディアで吃音が取り上げられることが増えているため、今後も受診希望者が増えていくことが想定されます。今後とも全年齢に必要な対応ができるように、体制を整備していきたいと思います。