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2024.3.25

中学生の職場体験学習の受け入れ実績報告

国立障害者リハビリテーションセンター
企画・情報部 企画課 広報戦略専門官 秋山 一敏

 所沢市内の中学校からご依頼をいただき、2024年(令和6年)1月17日(水)~19日(金)の3日間、1年生2名の職場体験学習の受け入れを行いました。
 私が中学生だった数十年前(!?)には、学年全体で工場見学などを行うことはあっても、少人数で個別に職場を訪問して体験学習を行うというような機会はなかったと記憶しています。文部科学省が公表している調査によると、令和元年度の公立中学校における職場体験の実施状況は、実施している学校数が全体の97.9%にも達しており、未来のある若者が将来の進路を考える過程の中でこのような体験型の学習を行うことが、ひとつ大きなトレンドになっていることが伺えます。

注:令和3年度28.5%、令和4年度54.1%と数年は著しく低下しているが、おそらく新型コロナウィルスの蔓延による自粛が要因と思われ、職場体験学習への潜在的なニーズは引き続き高水準にあるものと思われる。
■ 職場体験・インターンシップ実施状況等調査結果(文部科学省HP)
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/detail/1340402.htm

 当センターは、医療機関であると同時に、福祉施設であり、研究機関であり、専門職の養成機関であり、行政機関でもあるという他にあまり例のないユニークな施設です。ここで働いている人々の職種は多岐に渡ります。医師、歯科医師、看護師、理学療法士、作業療法士、臨床検査技師、保健師、薬剤師ら医療職のほか、医学系、工学系、社会学系の研究職、社会福祉士(ケースワーカー)、そして学校の先生など、すべての職種を挙げると相当な数になります。そこで、当センターを職場体験の場として選んでくれた生徒さんには、少しでも多くこのセンターで働く人々の仕事ぶりを知ってもらいたいという思いで、今回初めての試みとして、センターの「広報担当者」を体験していただくことにしました。様々な部署に赴いてインタビューなど取材をすることで、広報担当者の業務を体験するとともに、様々な職種についても知ることができると考えたからです。
 今回は、3日間で4つの部署(①自立支援局肢体機能訓練課・医務課、②自立支援局就労移行支援課、③学院義肢装具学科、④研究所感覚機能系障害研究部)をふたりの中学生とともに取材しましたので、それについて報告します。

 初めに自立支援局の機能訓練棟に向かいました。ここは、主に頚髄損傷者の機能訓練を行っているところで、自立支援局第二自立訓練部の肢体機能訓練課と、自立支援局総合相談支援部の医務課の職員が働いています。肢体機能訓練課には、社会福祉士(ケースワーカー)などの福祉職のほか、理学療法士、作業療法士などのリハビリテーション職、介護福祉士などの介護職が配置されていて、日々、入所している頚髄損傷の利用者と接してリハビリテーションや様々な相談・支援、日常生活の介助などを行っています。医務課には、医師、看護師が配置され、利用者の日常的な健康管理支援を行っています。当日は、肢体機能訓練課の課長を初め、作業療法士1名、介護福祉士1名、医務課の看護師長からお話を伺うことができました。インタビュー後に中学生がまとめた記事が写真1です。

«自立支援局» 肢体機能訓練課・医務課 【取材の目的】 ・リハビリテーションはどのような職業の方たちによって提供されているのか知りたい ・頚髄損傷の方はどのような困難を抱えているのか知りたい ・頚髄損傷になる主な原因と予防を知りたい ・理学療法士と作業療法士の違いを知りたい 【取材先の概要】 肢体機能訓練課・医務課には、ケースワーカーや看護師、介護福祉士、理学療法士、作業 療法士などのたくさんのリハビリテーションの専門家が頚髄損傷の方の目標を達成できるよ うにリハビリテーションを提供している。
【印象深かったこと】 ・損傷してしまったほんの少しの首の位置で受傷の重さがだんちがいということ ・主な原因が身近なところで起こっていること(海、川やプールでの飛び込み/自転車/交通事故)など【感想】 ・ほんの少しの違いで受傷の重さがだんちがいになる。自分のみを守るためにも自転車でのヘルメット着用・車の移 動中のシートベルト着用を徹底していこうと思いました。・頚髄損傷の方たちが自立して暮らしていく・このような情報をより多くの方に知ってもらい、もっと障害の方も生活しやすい自助具や環境にしていきたいと思いました
高床式浴槽、3Dプリンタで作った自助具などの画像です。

写真1

 2日目は2つの部署を巡りました。1つ目は自立支援局理療教育・就労支援部の就労移行支援課です。ここでは職業指導専門職やケースワーカーが働いています。当日は就労移行支援課発達障害支援室の室長からお話を伺いました。これに関する記事は写真2です。

自立支援局就労移行支援課 取材の目的 どのような就職活動を行っているのか知りたい。就職後などの過程を知りたい。 取材先の概要 就労移行支援とは、就活に必要な力をつけるための訓練や実習などを行う場所 印象深く感じたこと 就労移行支援の方がおっしゃっていた、人の個性を伸ばし仕事でその個性を使うことが印象深かったです。特に発達障害・高次脳機能障害・身体障害などを抱えている方々にとって就労移行は、苦になるかもしれないですがどんな人でも個性をもっているのであきらめず、周りの人も理解することが大切です。

写真2

2日目の午後は、学院義肢装具学科に行きました。ここでは義肢装具士の資格を持つ学科教官が働いています。当日は、ちょうど授業風景を見ることができ、工具を使って固い金属を曲げる作業を実際に行ってみるなど学科の学生の皆さんと交流し、主任教官からも様々なお話を伺うことができました。記事としてまとめたものが写真3になります。


«学院» 義肢装具士 【取材の目的】 ・どのような学びをしているのか知りたい ・切断する主な原因はなにか知りたい ・義肢装具士の方が障害の予防にどのような関わり方をしているか知りたい 【取材先の概要】 義肢装具学科では、学科の先生と学生の方々が義肢装具士になるための知 識と技能を暖かい空気の中で学んでいる。
«学院» 義肢装具士 【印象深かったこと】 ・義手、義足にもリアルなのとフックみたいなもの二種類あること ・装具では、プラスチック製と金属製の二種類あること ・靴も作っていたこと 【感想】 ・義足・義手・装具のおかげで生活しやすくなったり、できるだけ要望に応えたカスタマイズを作っていることで、義肢装具士もかっこい、作ってみたいと興味を持ちました。 ・切断する要因として病気や事故などが上がった。やはり健康に気をつけてヘルメットやシートベルトの着用が地味だがとても大事なことだと思いました。
義肢装具士が製作したさまざまな形状の靴、装具の画像です。

写真3

義肢装具士が製作したさまざまな形状の義手、義足の画像です。

 3日目(最終日)は、研究所感覚機能系障害研究部の聴覚言語機能障害研究室にお邪魔しました。ここでは、吃音に関する研究を行っている研究職が働いています。吃音とはどのようなものか?から始まり、周りの人はどのような配慮が必要か?この研究室ではどのような研究が行われているのかなどについて、室長から詳しくお話を伺うことができました。こちらの記事は写真4です。

聴覚言語機能障害研究室 吃音 取材の目的 いつ発症するかわからないことや、治る期間までもが不明なので知りたい。 取材先の概要 吃音とは、発言する際に最初の言葉を繰り返す連発、言葉を引き延ばす伸発、発言しようとすると詰まってしまう難発があり、それらを研究や治療をする場所 印象深く感じたこと 環境づくりが特に重要だと思いました。吃音などが発症した後が大切で、発症者に適した環境だと住みやすく、過ごしやすいため吃音症状が減ってきたり、吃音が早めに治ったりするので、ご家族や友達などから良い環境づくりを目指してほしい

写真4

 企画してみると、実際に3日間で4部署を回るというのは、かなりハードだったと思います。取材をするには、まず、下調べ・準備が必要であり、インタビューする内容もあらかじめ決めておかなければなりません。取材中はメモを取る時間も多くは取れないので、取材後は、頭の中で記憶にあるうちに、記事をまとめていく必要があります。今回は短期間で、十分な下調べが難しい中での取材でしたので、記事を書くのは大変だったと思いますが、生徒さんおふたりとも、とてもしっかりとしたものを書いてくれました。相手の話を一方的に聞くだけではなく、お話を伺って気づいたことをさらに踏み込んで質問してくれたり、とても有意義な取材になったと思います。職場体験後は、知らなかった医療・福祉業界の現場のようすをたくさん知ることができたということで、さらに具体的な興味も持ってもらえたようです。おふたりにはとても感謝しています。今後のご活躍がとても楽しみです。