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2024.6.10

小学生を対象とした「国リハ子ども福祉体験授業」の実施報告

企画・情報部 企画課 広報担当

 当センターでは、毎年11月ごろ、近隣小学校の依頼を受けて「国リハ子ども福祉体験授業」を実施しています。これは、車椅子に乗って操作をしたり、アイマスクを付けて目が見えない状態で歩いてみたり、視覚障害者向けのスポーツであるゴールボールを体験するなど、障害のある方の立場に立ったさまざまな体験をしてもらう授業です。
 コロナ禍以前は、「子ども体験デー」という障害者週間記念事業のイベントのひとつとして、当センターに小学生を招いて実施していましたが、コロナ禍に見舞われた2020年は自粛をせざるを得ない状況となりました。2021年以降は、引き続き当センターへの立ち入りに制限が設けられたため、我々が学校に訪問する「出張授業」に切り替え、昨年度(2023年度)は以下の日程で実施しました。

<福祉体験授業 スケジュール>
2023年11月27日(月) 所沢市立美原小学校(5年生)
2023年11月28日(火) 所沢市立並木小学校(4年生)
2023年12月8日(金)  所沢市立宮前小学校(4年生)
2023年12月12日(火) 所沢市立清進小学校(6年生)※
2023年12月14日(木) 所沢市立清進小学校(4年生)※
※は、バリアフリー設備見学として当センター施設内で実施

 今回は、これらの中から宮前小学校で行われた授業について報告します。当日のカリキュラムは表1のとおり。4年生の児童 74名が参加しました。

表1 日程表

 トップバッターは、学院言語聴覚学科 下嶋哲也 主任教官です。言語聴覚士という職業のことや、言語聴覚障害について説明がありました。

写真1 下嶋哲也 主任教官

 特に、発声・発語に関するものとしては、次のような説明がありました。
・吃音(どもり)のある人と話すときは、最後まで聞くというのが大事なマナー
・声の代わりに発声を行ってくれる道具がある。練習すれば抑揚もつけられるようになる。(人工喉頭を持参して実演)
・ALS(筋萎縮性側索硬化症、全身の筋肉がやせていき、動かせなくなっていく難病)患者さんが使用するコミュニケーション機器としては、透明な文字盤を使って、目とまぶたの動きだけでやりとりができるものがある(意思伝達装置を持参して実演)

 続く2コマ目、3コマ目は、37名ずつ2班(Aコース、Bコース)に分かれて交互に実施しました。

 Aコースの2コマ目(Bコースの3コマ目)の担当は、手話通訳学科 野口岳史 教官です。はじめに「聞こえない人、手話を使っている人に会ったことはありますか?」という問いかけをしたところ、意外に多くの児童の手が挙がりました。野口教官もそのひとり「ろう者教官」です。講義は全編、手話通訳を付けて行われました。まず、いくつかの手話が紹介されました。
・「ありがとう」は相撲の勝ち名乗り― 左手は甲を上にして水平を保ち、右手は手刀のかたちで左手に付けてから上に離す。相撲の勝ち名乗りが由来と言われている。(米国で「ありがとう(thank you)」の手話は、投げキッスの動き。地域によって様々な手話言語が使われている。)
・手話にも方言がある― 「名前」は、関東では親指で判を押す動き、関西では名札を示すような動き
続いて、聞こえない人も自動車の運転免許を取ることができるという説明がありました。「それには補聴器を付けることが条件になります。危ないからやめてと決めつけるのではなく解決法を一緒に考えてくれる人になってほしい。」というメッセージもありました。

写真2 野口岳史 教官

 次に「はやく人間になりたい」というゲームが行われました。これには、「ねずみ」「うさぎ」「犬」「人」の4つの手話を覚える必要があります。全員「ねずみ」からスタート。1対1のペアを組みじゃんけん、勝った人は「うさぎ」の手話をしながら同じ「うさぎ」の手話をしている人を見つけてじゃんけん、負けた人は「ねずみ」の手話をしながら、「ねずみ」同士でじゃんけん、勝ち進んでいくと「人」になれるというゲームです。これは非常に盛り上がりました。使っていくうちに児童のみなさんは4つの手話を完全にマスターしていました。

 Aコースの3コマ目(Bコースの2コマ目)では、学院義肢装具学科による装具の型取りの実習が行われました。星野元訓主任教官、中村喜彦教官に加えて、義肢装具学科1,3年の学生13名も協力してくれました。

写真3-1 星野元訓 主任教官

写真3-2 中村喜彦 教官

 装具を作る際は、まず型取りが行われます(今回は指の型取りを行いました)。型取りでは石こうを使います。水につけたギプス包帯を指に巻き、石こうをなでていきます(何とも不思議な感触のようで「何この感触!」といったような言葉が飛び交っていました。)固まるのを待ち、指から外します。次に出来上がった型に、水で溶いた石こうを流し入れます。数時間かけて固まったら、型から取り外し、指の形の型が完成です。児童のみなさんが作った完成品は後日、ご本人にプレゼントされました。

写真4-1 指の型取りのようす(1)

写真4-2 指の型取りのようす(2)

 「福祉体験授業」は、児童の皆さまのみならず、我々、当センター職員にとっても、わかりやすく説明する力を養う学習の場になっています。当センターは、障害の有無に関わらず、誰もが互いに理解を深めていく共生社会の実現に向けて、この活動を続けてまいります。