障害者の災害対策シンポジウム ~被災地から学ぶこれからの備え~

パネルディスカッションの概要


 
休憩時間に行われた機器展示の様子.

4.パネルディスカッション:障害者がつくるこれからの災害対策
①移動の課題

・東京でも、地震の時にエレベータの停電などで苦労した経験がある。
・停電、ガソリン不足などにより移動支援のニーズは高いが、誰が助けるのかが問題。障害者が孤立してしまわないようにすることが重要。
・ライフラインが途絶えた避難所での生活は過酷であり、ライフラインが生きているうちに一気に遠方に避難することも一策である。

②トイレの問題
・自力でトイレができない障害者の中には、我慢してしまう人が多い。健康にも良くない。
・自分の排泄パターンを理解しておく必要がある。
・トイレはハード、ソフト両面の問題がある。ソフトの面では人的な支援の問題がある。避難助は皆被災者で、人に介助を頼む事を遠慮してしまう状況にあり、何日も車いすから降りられない人もいた。「大丈夫ですか?」ではなく、相手のニーズを理解した声かけが必要である。
・避難所のトイレは使いにくいので、ホテルや旅館を利用する事も検討した方が良い。ただし、そうした場所には物資が来ないという問題もある。

 
パネリスト自己紹介.

③ヘルパーの問題
・福島から東京に避難した障害者の支援では、ヘルパーの確保などに関してこれまでの自立生活センターのネットワークが生かされ、連携することができた。
・日常からネットワークをつくっておく、自宅にいても支援が来るように繋がりをつくっておくことが重要。
・1カ所に集まって避難しているような事業所への介助支援は比較的やりやすい。

④支援コミュニティについて
・災害時には想定しないようなことが起こるもので、最終的には人手に頼る他ない。そのためには日常からの支援ネットワークづくりが重要である。
・支援者も含め、なるべくグループで避難するようにした方が良い。
・避難所の支援者には、女性の相談を受け付けられるようにするなど、コーディネーターを育成する必要がある。

⑤いざという時の備え・物資
・物資には何が必要かという点と、どう配分するかという問題がある。
・暖房や電源の確保は重要。ガソリンの配分も最初の一週間は期待できない。衛生用品、おむつの確保も必要。
・電気が無いので、電動車いすの利用者も手動車いすを用意しておくべき。事業所、医療機関は非常用の電源を確保しておかなければならない。
・原発災害では、避難が優先で物資は後回しにされる。

⑥情報の問題
・メーリングリストで必要な物資に関する情報をやりとりすることもあった。
・必要な医薬品等を災害に手に入れるために、外出時は薬手帳を持ち歩いている方が良い。

⑦共助・公助について
・ヘルパーの確保が難しくなるので、家族や施設に頼ることになり、事前に相互の理解を得ておく必要がある。事業所レベルでの避難も、知った仲間で行動できるので有効である。
・地域のご近所さんやマンション管理組合など、日頃からコミュニケーションを取り、いざというときに支援者になってもらえるようにする。また、地域コミュニティに入りやすくするために、障害者も地域防災訓練に参加するなど、地域参加を続けていくことが重要である。
・避難所では女性などのプライバシーの観点から間仕切りなどを用意しておいて欲しい。また、福祉エリアを作っておくなど、避難所をコーディネートできるようにしたい。
・入所要件があるが福祉避難所も避難所としては有効で、ここにも多くの支援者を配備する準備が必要である。

⑧今後の備えについて
・普段の生活の問題が災害時には顕著に現れてくる。日常からの備えが重要。災害時に初めて何かするということを無くすようにした方が良い。
・国リハの役割については、障害者の日常生活を高める機器づくりを行っている。災害だけでなく日常からの取り組みを行うことが重要。

 
左:ステージの様子.
右:活発な質疑が行われた.

5.質疑応答
<質問①>
・高齢者施設・通所事業所などでどのような備えがあり、それぞれの役割は何か?
<質問①の回答>
・障害者福祉、高齢者福祉の縦割りをやめて、効率よく物資や燃料などを使っていくために地域の中で連携していくことが必要。

<質問②>
・地域と障害者をつなぐ取り組みにはどんなことがあるか?
<質問②の回答>
・日常の地域の活動、防災計画づくりに当事者が積極的に参加することも重要
・自助が多くあげられたが、共助・公助まで考える必要がある。隣近所での助け合い、地域内の連携、緊急時の姉妹都市提携など身近な所から広域まで考えていく必要がある。

<質問③>
・自分から声を挙げられない障害者や高齢者への支援はどのようにしたらよいか?
<質問③の回答>
・声を出せない、高齢者・障害者がいる事を念頭に、被災支援の仕組みをつくる必要がある。
・事業所と繋がっていない人もおり、要援護者名簿が機能しないようでは意味がない。個人情報保護法にも、緊急かつ当事者の利益になる状況では、情報開示できると規定されていることを理解しておく必要がある。
・災害時の要援護者名簿の活用が考えられるが、現在内閣府でその活用方法を改訂中であり、当事者が参画しながらの計画づくりが行われている。

<質問④>
・障害者のニーズを拾って行政に伝えたり支援につなげていく社会の仕組みづくりが重要だと思います。
<質問④の回答>
・自助、共助、公助は、災害時の役割分担の仕組みの考え方である。公助では、事前の物資の準備や人材の準備を考えておく必要がある。姉妹都市などを作って、いざというときに地域を越えて助け合う仕組みも有効である。 ・自助は、普段からいろいろな道具を使ってみて、道具に関する知識を貯えておくことが重要である。


シンポジウムトップページへ