理療教育学習者支援プログラム
当センターでは、理療教育を学習する利用者に対して、利用開始時から就労まで、一貫して切れ目のない支援を行っています。
特に重要と考えている3つの支援を柱に、これらが相互に連携し、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家試験合格と利用者が希望する就労への実現を目指しています。
○ 理療教育を学習する利用者への支援内容(プログラム)
利用者支援の3本柱
1.支援が必要な方への個別支援
2.国家試験合格に向けた、利用開始時からの中長期的な受験対策支援
3.利用者が主体的に進路選択を行い、希望する就労先へつなげるための進路支援
利用者を中心として支援プログラムの連携(図)
個別支援の内容 PDF版はこちらをご覧ください。
・個別支援の内容
・個別支援の進め方
・1年間の流れ
多様な方々が入所される中、個々の状況を把握し、学習を進めていくうえで課題を解決するための相談機会を設け、必要な支援を個別に実施しています。
当センターでは、特別指導教官を配置し、相談や評価、支援の中心を担っています。
個別支援の内容
(1)学習手段を獲得するための支援
①読み書き支援
拡大読書器、ルーペの使用方法や濃い鉛筆、見やすいペン等の紹介を行っています。状況に応じて、当センターロービジョンクリニックへの紹介も行なっています。
②パソコン支援
画面の拡大や音声ソフトの使用方法など個々のニーズに応じて使いやすい環境にカスタマイズします。
ファイル管理方法やメールでのやり取りなども支援しています。
③録音機器支援
教科書や国家試験の音声データ方式であるデイジー機器の操作など支援します。
(2)学力アップを目指した支援
①ノート作り
漢字へのルビつけ、箇条書き等わかりやすいノートテイク方法を支援します。
②基礎科目の補習
解剖学、生理学を中心に支援しています。
③実技での触察
手の使い方や立ち位置など支援します。
④総合学習
文章読解力、漢字能力などの基礎学力の向上を目指して、講師による支援を週1回程度実施しています。
個別支援の進め方
入所してから早期に個別支援の対象者を選定するために
①初期学習支援での支援状況や面談
②模擬授業・試験体験の状況
③学級担任と特別指導教官の話し合い
以上を総合的に判断し、個別の支援を5月から開始しています。
1年間の流れは以下のとおりです。
4月 初期学習支援・オリエンテーションの状況から対象者の選定
5月 個別の学習支援開始(総合学習も含む)
6月 中間試験などの結果から支援方法の確認、対象者の見直し
7月 夏季休業中の個別支援
9月 前期期末試験等の結果から支援方法の確認、対象者の見直し
11月 中間試験などの結果から支援方法の確認、対象者の見直し
12月 冬季休業中の個別支援
1月 後期期末試験等の結果を受けて次年度に向けての支援方法の確認
3月 春季休業中の個別支援
3本柱の 2 つ目 受験対策支援 PDF版はこちらをご覧ください。
当センターでは、入所時から、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家試験合格を目指して、様々な取り組みを行なっています 。
1年次
見え方に応じて、墨字、点字、録音機器、パソコンなどの学習手段確立に向けた支援をします。補習や各科目の課題提供を行っています。
年度末には実力試験を実施しています。
1年次の年間スケジュール
通年:初期学習支援から学習手段や学習方法の確立
5月~9月:個別面談から苦手科目の抽出、補習
10月~2月:科目の補習や課題提供、医療接遇マナー講座
2月:実力試験
2年次
1年次に引き続き学習方法の相談機会を設けています。
補習や各科目の課題提供を行っています。
年度末には実力試験を実施しています。
2年次の年間スケジュール
4月~5月:実力試験結果から課題提供
6月~9月:中間試験結果から科目の補習や課題提供
10月~2月:科目の補習や課題提供、施術所見学、臨床導入講座、医療接遇マナー講座
2月:実力試験
3年次
2月下旬の国家試験に向けて模擬試験を3回実施しています。
模擬試験結果を分析し、個別の受験対策補講を放課後や夏季休業中に実施しています。
3年生(受験学年)の年間スケジュール
4月~6月:過去5年間の国家試験問題の配布、第1回模試、受験補習
7月~10月:受験対策補習、臨床スキルアップ講座
11月:第2回模試、個別補習
12月~2月:第3回模試、直前補習
2月下旬:国家試験
その他、進路や国家試験に向けての講座として、施術所見学、臨床導入講座、臨床スキルアップ講座、医療接遇マナー講座などを実施しています。
3本柱の 3 つ目 進路支援 PDF版はこちらをご覧ください。
進路支援体制は就労相談室の理療指導専門職を中心に数名の理療指導員で担当し、進路相談はもとより職場開拓、卒後支援など活動を行っています。
1年次の概要
1年次は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格取得後の進路について理解を深めるため、進路希望調査や進路支援講座を実施しています。
2年次:具体的な進路選択あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格取
得後の進路を具体的に考えるため、過去の卒業生の進路状況などを紹介します。
進路希望調査と進路支援講座を実施しています。
3年次:進路決定あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格取得後の進路を決めるため、職場見学の機会を多く設けています。
履歴書の作成や採用面接対策の支援を行っています。
進路希望調査と進路支援講座を実施しています。
卒後支援:フォローアップとして様々な事柄に対応できるように努めています就労先での不安は、職場内外の環境認知、技術指導、人間関係などが多くあげられ、その都度対応しています。
開業相談として、構造設備や備品、技術指導など行っています。
理療指導員を中心に必要に応じて随時対応しています。
個別支援の1年間の流れ
(1)1年次
7月:進路支援講座、進路希望調査
10月~11月:進路支援講座(全学年対象)
(2)2年次
7月:進路支援講座、進路希望調査
10月~11月:進路支援講座(全学年対象)
随時:進路相談
(3)3年次
4月~5月:進路希望調査
7月~8月:職場見学、履歴書作成
10月~11月:進路支援講座(全学年対象)
随時:就職面接指導、就職面接引率
各支援の連携 PDF版はこちらをご覧ください。
個別支援と受験対策支援の連携
1.見え方に応じた学習手段を獲得するための支援
支援機器等を用いた学習手段
補助具を活用した試験時の読み書き
2.学力アップを目指した支援
個別面談による学習面の課題把握とサポート
試験結果から弱点科目・分野を分析
学力に学力に応じた個別の補習や課題の提供
3.国家試験合格を目指した支援
模擬試験結果から弱点科目を分析
弱点科目克服を目指した個別の補講や課題の提供
付属する支援内容 PDF版はこちらをご覧ください。
・初期学習支援とは ・恒常的継続支援とは ・総合学習とは ・国試問題の配付と活用とは ・模擬試験とは ・受験対策補講(個別)とは ・受験対策直前補講とは ・実力試験とは ・再理療教育とは ・再受験者通信指導とは ・進路希望調査とは ・進路支援講座とは ・職場見学とは ・卒業予定者の就労支援とは ・臨床研修コースとは ・就労実態調査とは ・職場開拓とは ・卒後定着支援とは ・研修会・講座とは
初期学習支援とは
対象学年:1年
実施時期:4月
入所直後のオリエンテーションとして、学習手段や学習方法に対する不安の解消を目的に、利用者一人ひとりの特性に合わせたパソコン 、デイジー 、 点字、拡大読書器などの支援を行い、学習手段の確立を図る 。また模擬授業や試験体験を行うことで 、 その後の授業や自学自習で活用できる学習手段を確認する 。
恒常的継続支援とは
対象学年:全学年
実施時期:通年
理療教育を学習していく上で必要な支援を、学級担任や科目担当者が中心となり、継続して提供していく 。パソコン操作 、デイジー機器操作 、点字の読み書きなどの学習手段やノート作り 、問題集・参考書の活用方法 、学習時間の作り方など学習方法や学習環境の相談 ・支援を随時実施する。
総合学習とは
対象学年:全学年
実施時期:通年
理療教育の学習を進めていく上で必要な、識字能力や語彙力、読解力などの基礎学力の向上を必要とする利用者を対象に実施する 。
利用者のニーズを踏まえ、教科書または新聞記事等を用いて語彙・漢字の習得、短文および長文の読解記憶力、コミュニケーション技術などの強化を図る。
国試問題の配付と活用とは
対象学年:受験学年(3・5年)
実施時期:4月
受験学年に対して、過去○年間に出題された国家試験を提供し、個別に採点や解説を行い、国家試験の問題形式に慣れること、また、今まで学習してきた知識の確認などに役立てる。
模擬試験とは
対象学年:受験学年(3・5年)
実施時期:5月・11月・12月
受験学年を対象に、国家試験の問題形式に慣れること、実際の試験時間や雰囲気を体験すること、受験時の文字種別や補助具使用の必要性を確認することなどを目的に、国家試験に準じた模擬試験を年3回実施する。また模擬試験結果はその後の受験対策指導の参考資料として活用する。
受験対策補講(個別)とは
対象学年:受験学年(3・5年)
実施時期:6月~1月
受験学年前までの成績、実力試験や第1回の模擬試験の結果を基に、対象者を絞り、国家試験合格に必要な基本的知識の定着を目的とした補講を実施する。実施方法はその年度の対象者の特性により、個別または少人数で実施する。
受験対策直前補講とは
対象学年:受験学年(3・5年)
実施時期:2月
国家試験の受験直前に、最重要項目と頻出項目の最終確認を目的として、対象科目と内容を絞った集団による補講を実施する。
実力試験とは
対象学年:1年・2年・4年
実施時期:2月
当該学年までに学習した科目について、利用者自身が内容の理解や知識の定着を現状把握することで、主体的な学習に取り組むことを目的とした試験を実施する。また、試験結果はそれぞれの利用者に対する学習支援に活用するとともに、今後の受験対策の方向性や体制に役立てる。
再理療教育とは
対象者:前年度の卒業・修了者
実施時期:8月~2月
前年度、当センターを卒業・修了したが、あん摩マッサージ指圧師国家試験に不合格となった方に対して、次年度の国家試験合格に向け、受験科目に絞った特別時間割に基づき受験対策授業を実施する。
再受験者通信指導とは
対象者:卒業・修了者
実施時期:5月~2月
卒業・修了者のうち、国家試験に不合格となり、自宅などで学習をしている方に対し、郵送による国家試験や模擬試験問題の提供・添削、学習相談等を実施する。
対象学年:全学年
実施時期:4月・7~8月
年に1回、その時点での卒業後の進路希望について確認し、利用者の希望に添った支援を実施するための資料とする。 卒業学年は4月に、その他の学年は7~8月に実施する。
対象学年:全学年
実施時期:7月・11月
職種と就労の現状を理解することで、卒業後の進路就労を具体的にイメージして、主体的に進路選択ができることを目的に、理療に関する職種や就労活動・進学の進め方に関する講座だけでなく、治療院の経営者や企業で働く施術者などを講師として招聘した講座も開催する 。
職場見学とは
対象学年:受験学年
実施時期:随時
就労活動に向け、治療院、高齢者施設、ヘルスキーパー導入企業、訪問マッサージ事業所など、利用者が希望する職場を見学することで、具体的な就労先の選択に役立てる。
卒業予定者の就労支援とは
対象学年:受験学年
実施時期:随時
利用者の就労・進学に向けた情報提供や相談対応、履歴書の作成、職場見学の引率、採用面接対策、進学に向けた受験対策支援などを理療指導員が中心となり実施する。
臨床研修コースとは
対象者:前年度の卒業・修了者
実施時期:5月~10月
前年度の卒業・修了者で国家試験に合格した方を対象に、臨床に関する実践的な知識や技術を更に高めることを目的とし 、臨床実習を中心としたカリキュラムで構成した研修を実施する。
就労実態調査とは
対象者:卒業・修了者
実施時期:9月
当センターを卒業・修了後、就労した利用者のその後の状況を記録し、今後の就労支援に向けた資料とする。
職場開拓とは
対象者:利用者・卒業・修了
実施時期:通年
利用者や卒業・修了者の新たな職場を開拓することで、利用者の希望に添った就労先の選択枝を増やすことを目指している 。
卒後定着支援とは
対象者:卒業・修了者
実施時期:随時
当センターを卒業・修了し就労した方が、就労に伴う就労場面等の課題に対し、就労の継続を図るために、就労先や自宅へ訪問し必要な調整や助言などを行う。
研修会・講座とは
対象者:卒業・修了者
実施時期:10月・11月・3月
卒業・修了生に対して、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうに関する知識や技術の向上を目的とした研修会・講座として、卒後5 年以内の方を対象としたもの、高度な臨床技術の習得を目指したもの、特別養護老人ホームやヘルスキーパーなどの特定の職種を対象としたものなど、様々な形式で提供する。
年間スケジュール
※学習者支援プログラム年間スケジュール(表)はこちらを参照してください(PDF)。
個別支援年間スケジュール
恒常的な継続支援(全学年) 4月から3月まで
初期学習支援(1年) 4月
総合学習支援 5月から3月まで
受験対策年間スケジュール
実力試験(1年、2年、4年対象) 2月
国家試験問題配布と添削(3年、5年対象) 4月・5月
模擬試験(3年、5年対象) 6月、11月、12月
受験対策補講(3年、5年対象) 6月から1月まで
直前補講(3年、5年対象) 2月
再理療教育(前年度卒業生・修了生対象) 8月から翌年2月まで
再受験通信指導(卒業生・修了生対象) 4月から2月まで
個別支援の事例 PDF版はこちらをご覧ください。
ー身体の動き・空間認知が苦手な方への支援ー
20代の男性 視力 両眼とも光覚
1 困難なこと・評価
(1)身体の動き
両手を前に伸ばすと指先まで伸びない。
両手を真横に伸ばすと左右の高さが異なる。
指先をうまく曲げることができない。
(2)空間認知
背中を上からなでると途中で方向がずれて腰まで到達しない。
腕の長さなど身体各部の長さの違いを見だせない。
きれいにタオルを敷いたり掛けたりできない。
2 支援の実践
(1)身体の動き
自身で動きやすい姿勢を見いだすことに重点をおいた。
上肢の動きは関節に手を添えて触られた感覚を意識するように努めた。母指で圧迫する動作はシリコンボールを用いた。
(2)空間認知
長さ、高さ、大きさ、立体は、積み木やプレートを活用して理解できるようにした。
バスタオルや手ぬぐいの面と辺は、長辺と短辺の2辺に玉留めをつけてることでタオルの大きさを確認した。
3 支援の結果
自身の身体が無理のない姿勢で施術ができることを実感することができた。
上肢の動きと母指は、繰り返し時間をかけて練習することで、揉んだり圧迫したりすることができ、力度の調節もできるようになった。
*特に、シリコンボールを活用したことは、垂直圧の感覚に役立った積み木などの教材を使うことで、長さ、高さ、大きさ、立体の概念を知ることができた。
バスタオルと手ぬぐいの2辺に玉留めをつけ、数えながらたぐることで、辺の長さの違いを理解することができ、タオルを敷いたり掛けたりできるようになった。
4 まとめ
本人の希望から1回の支援時間を短めにしたことで集中してできた。
回数は多かったが反復して実践したことが獲得につながった。
実技担当者を中心に少人数で対応したことがよかった。