自動車訓練室では、障害のある方が自動車を安全に運転するために必要な知識や技能の習得を図ることによって、自立した日常生活または社会生活を営むことに寄与することを目的に、障害者総合支援法における障害福祉サービスの一環として普通自動車の運転訓練を行っています。
全ての利用者に対して訓練の開始前に運転評価を実施することで、一人ひとりの障害状況を把握し、安全かつ効率的な訓練を行います。

 

身体に障害があると公共交通機関の利用に困難が伴うことから、訓練終了後、直ぐにマイカーでの運転を希望される方が多くなっています。市販されている自動車は障害がない方の運動機能を基準につくられているので、障害の状態に応じた自動車と運転補助装置の選択が重要です。このため支援に際しては、各装置のメリットやデメリットを詳しく説明し、利用者本人が主体的に選択できるように心掛けています。また、最近では自動車に表示する標識(マーク)も様々な種類がありますので、標識の意味を正しく理解して適切に選択します。

1.対象者

原則として、自立支援局において障害福祉サービスを利用する肢体不自由の方
*当センター病院入院患者、国立職業リハビリテーションセンター利用者、通所可能な肢体不自由の方に対しても、定員の空き状況等に応じて対応しています。


2.訓練区分
(1)新規訓練

第一種普通免許を取得するための訓練を行います。
対象者は、自立支援局で機能訓練を受けている頸髄損傷の方です。指定自動車教習所ではないので、全ての試験を運転免許試験場で受験します。

(2)習熟訓練

運転免許取得後に受傷した方、障害の状態が変わった方、障害後長期間運転を中断していた方を対象に、障害の状態に応じた運転補助装置が装備された自動車を安全に運転できるようにするための訓練を行います。


3.運転評価の内容

一般の教習所で実施している運転適性検査のほかに、障害の特徴を見極めるために視機能を評価する視野検査(上・下・左・右・左上・左下・右上・右下の8方向)、運動機能を評価するアクセル、ブレーキ操作力検査器、注意機能を評価するCRT運転適性検査器、実車を使った運転操作力の評価(運転操作評価表)、実車を使った運転基礎感覚の評価(運転基礎感覚評価表・習熟訓練用)などを行います。これらの結果を基に総合的に運転能力を評価して支援目標、支援方法、留意点(頸髄損傷者の例・習熟訓練)(脳卒中による高次脳機能障害者の例・習熟訓練)などを策定します。
 
 
 
 

  アクセル、ブレーキ操作力検査器

 
 
下肢操作の場合、ブレーキの最大踏力やアクセルペダルからブレーキペダルへの踏み替え反応時間、ペダルを踏む位置などの検査を行います。
上肢操作の場合、手動装置の最大押力、反応時間、持続力などの検査を行います。
 
 
 

    CRT運転適性検査器

 

 

 主に注意力の状態を見る検査器で、画面に表示される課題に反応することで、反応動作の速さや注意の配分、認知注意の集中分散、状況処理能力などを評価します。

4.運転訓練の内容
(1)学科訓練

交通の方法に関する教則、安全運転の知識、自動車の構造や取扱い方法、自動車税や取得税の減免制度などについて、学科教本や視聴覚教材を使って訓練を行います。

 

(2)実車訓練

    所内コースでの訓練風景

 

 初めは、閉鎖された安全な所内コースで障害の状態に応じた訓練車を使用し、周回路、交差点、狭路、後退の課題を通して運転操作の方法、車両感覚、後退での誘導など道路形状に合わせた円滑な通行ができるように繰り返し訓練を行います。

      頚髄損傷者用の訓練車

 

 頸髄損傷、胸髄損傷の方は、運動障害や知覚障害がありますので、運転操作力、自動車の乗降、褥瘡やケガの発生に注意して支援を行います。

頚髄損傷者が使用する乗降用トランスファーボード

 

 頸髄損傷の方は、車いすと運転席の移乗が困難な場合があるので、移乗方法に応じて乗降用トランスファーボードを選択して使用します。

     右片麻痺者用の訓練車

 

 脳卒中、外傷性脳損傷の方は、運動障害や言語障害などのほかに高次脳機能障害を伴う場合がありますので、その程度に応じた支援を行います。

       スキッドコース

 

 

 滑りやすい路面での自動車の挙動変化を体験し、悪条件下での自動車の限界も体得します。

      一般道路での訓練風景

 

 所内コースでの課題が安定した後、一般道路で他の交通へ気配りをした主体的な運転方法や、交通場面に応じた危険を予測した運転方法を体得し、単独で安全に運転ができるように繰り返し訓練を行います。

 障害によっては、運転時間の経過に伴って注意力が低下し運転ミスが増加する場合があるので、途中に10分の休憩を入れながら連続2時限の訓練も行います。最終段階では関越自動車道の所沢~東松山間を使って高速道路での訓練も行い運転能力を向上させます。また、全ての訓練車にドライブレコーダが装備してあるので、訓練終了後に問題となった交通場面について、映像で再確認することで訓練効果を高めています。


5.利用する場合の相談先について

(1)自立支援局の障害福祉サービスを利用する場合は、お住まいの市区町村の福祉担当へご相談ください。
(2)自立支援局を利用しない場合は、直接、自動車訓練室へご相談ください。
 
 国立障害者リハビリテーションセンター 第二自立訓練部肢体機能訓練課自動車訓練室

 電話番号 代表04-2995-3100(内線 2321または2322)

 なお、訓練などで電話に出ることができない場合もありますので、ご了承ください。