〔病院情報〕 |
健康増進センターの開設について |
病院リハビリテーション部 運動療法部門 樋口幸治 |
「最近、体重が気になるな〜!」、「メタボ(メタボリックシンドローム:MetS)かな?」と感じていませんか。でも、多くの方が、これは、障害のせいだから仕方が無いとお考えではないのでしょうか?
この生活習慣病やMetSが重篤な障害へ発展することは、よくご存知と思います。
一般的に、生活習慣病やMetSは、運動不足や過食、不規則な生活など、いわゆる生活習慣の乱れが、エネルギーの摂取と消費のバランスを失うことで引き起こされます。しかし、障害をお持ちの方々の場合は、健常者と比較して、その罹患率が高いのです。その現状を調べると、当センターが行った脊髄損傷者102名を対象とした生活習慣病・二次障害についての調査では、腹腔内臓脂肪面積異常40%、脂質異常症40%、インスリン抵抗性異常28%、血圧高値23%、空腹時血糖高値12%、HbA1高値6%など、多くの方が、生活習慣病の危険因子を持っていることが明らかとなりました。
健常者では、健康日本21や特定健診の実施によって、それらの影響が明らかにされ、予防や治療が国を挙げて推進されています。しかし、障害をお持ちの皆様には、生活習慣病やMetS、二次障害への具体的な予防や治療方法について試行錯誤されているのが現状です。また、施策については、皆無に等しいのが現状です。
そこで、当センターでは、皆様の健康をサポートし、健康であることがより良い生活の糧となるように、平成22年10月1日に、健康増進センターを開設いたしました。
このセンターは、当センター部門間連携事業の一環として、病院、研究所、自立支援局の各部門が連携し、障害者の健康増進及びスポーツ支援事業に取り組み、総合的に障害者のQOL(Quality of Life:生活の質)の向上に貢献し得るプログラムの研究・開発及びその支援を行うことを目的としています。
このセンターの業務の根幹は、障害者の生活習慣病や二次障害の実態を把握し、その予防、生活習慣改善のプログラムを開発し、皆様の積極的参加を促し、健康づくりの環境整備を促進することです。その業務を医師・保健師・栄養士・運動療法士が、以下の事業を行うことにより、健康づくりパートナーとして皆様の健康をサポートします。
① 生活習慣病・二次障害に関する調査・研究事業
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本年度の事業計画は、すでに、病院外来に「健康増進・スポーツ外来」を開設し、第一火曜日・第三木曜日に診療を行っております(国リハニュース10月号参照)。
平成18年から、内科外来で開催をしていた健康教室を平成21年からセンター健康教室として充実させ、本年度からは、入院・外来の方、自立支援局を利用している方、近隣在住の方を対象に、健康増進に関する啓蒙活動を実施しております(写真)。また、自立支援局利用者への独自支援サービスとして、生活習慣病やMetSの危険因子をもつ方々を対象にプログラムを提供し、改善を促しております。この事業で得られた結果は、基礎的なエビデンスとして蓄積し、研究所との連携の下に分析を行い、より良いプログラムへ修正を行ってまいります。
もう一つの事業としては、障害者スポーツ支援を行います。この取り組みは、障害者のQOL向上の一つとして位置づけ、障害者スポーツを広く普及させることで、健康づくりの一環や自己実現の一つとして、以下の事業を進めていきます。
① 調査・研究事業
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本年度の障害者スポーツ支援事業は、健康づくり事業とともに外来を開設し、診療体制を整備いたしました。この外来には、競技スポーツ選手やスポーツ愛好家の方々も受診され、スポーツ外傷・障害の治療やコンディショニング、メディカルチェックなどを行っています。また、当センターのスポーツ関連施設では、各種競技団体によるスポーツ大会や合宿、練習会などが盛んに行われています。
これから、健康増進センターは、様々なプログラムの提供を行い、健康からスポーツまで、皆様のQOLの向上をサポートいたしますので宜しくお願いいたします。
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