

2025.3.21
令和6年度「第41回業績発表会」開催報告
業績発表会実行委員会事務局
令和6年12月20日(金)に開催された、令和6年度「第41回国立障害者リハビリテーションセンター業績発表会」について報告します。業績発表会は、職員が日ごろの取り組みや学術研究の成果を発表しあう場です。
職員相互の研鑽と連帯の強化を図る目的で、センター発足から5年後の昭和59年度(1984年度)に第1回が開催され、今年度は第41回目を迎えました。
令和2年度(2020年度)以降、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、職員用ネットワーク内に音声付き発表資料を掲載することで実施していましたが、今年度は5年ぶりに会場での開催となり、施設内および施設間での同時配信も行われました。
今回は49演題の発表がありました。発表の一覧と予稿(一部)を以下のページに掲載しています。
以下、今回の業績発表会で表彰された職員を受賞コメントと共に紹介します。
※受賞者一覧の名前をクリックすると受賞者コメントに移動します。
※抄録を公開している演題については、受賞者コメントの演題名をクリックすると抄録をご覧いただけます。
受賞者一覧
優秀賞(8名)
- 阿南 誠二(別府重度障害者センター 医務課)
演題:頚髄損傷者に対する地域支援の現状と課題について ~地域病院との連携構築に向けて~ - 新津 貴史(自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓練課 自動車訓練室)
演題:理学療法士としての自動車訓練業務 -令和5年度の実績報告- - 瀧本 一真(自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓練課)
演題:慢性期頚髄損傷者への長期的なリハビリテーション介入によるADLの変化―FIMとSCIMを用いた後方視的研究― - 島袋 尚紀(病院 リハビリテーション部 再生医療リハビリテーション室)
演題:慢性期胸髄完全損傷者に対する骨髄間葉系幹細胞投与とリハビリテーションによる体幹機能の変化
演題:脊髄損傷退院患者の職場復帰に影響をおよぼす因子の後方視的調査 -職場復帰と地域社会の移動の関連性に着目して- - 木村 麻美(病院 リハビリテーション部 作業療法)
演題:集中的訓練プログラムの現状と報告~開始から2年を経て~ - 久郷 英伸(秩父学園 療育支援課)
演題:医療関係のミスを減らすために ~医療関係のインシデント分析から~ - 市川 樹(研究所 脳機能系障害研究部)
演題:自閉スペクトラム症(ASD)者の聴覚過敏性定量化・緩和を目的とした機械学習モデルの開発 - 愛知 諒(病院 リハビリテーション部 再生医療リハビリテーション室)
演題:腰部磁気刺激を用いた麻痺下肢残存機能の包括的評価の試み
演題:Lokomat運用実績報告
奨励賞(2名)
- 関 晃人(自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓練課)
題:頚髄損傷者に対するスマートホームデバイスの提案及び設置実績-地域の生活支援における有用性の考察- - 篠塚 裕美(自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓練課)
演題:自立訓練(機能訓練)利用者の上肢機能評価に関する研究所との取り組み
受賞者コメント
優秀賞
阿南 誠二(別府重度障害者センター 医務課)
演題:頚髄損傷者に対する地域支援の現状と課題について ~地域病院との連携構築に向けて~
【コメント】
この度は、優秀賞に選考いただき誠にありがとうございます。別府センターは、地方の国立施設ではありますが、特に地域病院とのつながりを重んじながら日々業務を行っております。頚髄損傷者への支援におきましては、一昨年度より開始した研修会等の拡大によって、地域病院などのニーズが見えてきたこともあり、国立施設の役割の根本となる取り組みへと発展できればと考えております。国リハ・地域・対象者が「三方よし」となるには私どもがどのような立ち位置で業務展開すべきかを、施設一丸となって模索していければと思います。この取り組みが、長期展望を見据えた有益な成果につながっていければ幸いです。
新津 貴史(自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓練課 自動車訓練室)
演題:理学療法士としての自動車訓練業務 -令和5年度の実績報告-
【コメント】
この度は、栄えある賞を賜り、大変光栄で嬉しい気持ちです。この賞は日頃より気にかけて指導してくださる諸先輩方、声を掛けてくれる同僚や利用者の存在があったからこそ形になったと思っています。この場をお借りして、感謝申し上げます。
今回の発表は、『頚髄損傷者がどのように自動車を運転しているか。また、どのように理学療法士が運転支援に関わっているか』を知っていただきたい想いからです。私たちが普段何気なく運転する自動車。頚髄損傷者にとっては、乗車から工夫を凝らす必要があり、支援には時間がかかります。しかしながら、安全な自動車運転が実現できれば、積極的な社会参加に繋げ、生活をより豊かにできる可能性が生まれます。
昨今、自動運転などの最先端技術が注目されがちですが、当センターでの障害者に対する自動車運転支援のニーズは高く、目を向ける必要があると思います。三面六臂の活躍はできませんが、今後も自動車訓練室の理学療法士として、できる支援を模索していきたいと考えています。
瀧本 一真(自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓練課)
演題:慢性期頚髄損傷者への長期的なリハビリテーション介入によるADLの変化―FIMとSCIMを用いた後方視的研究―
【コメント】
この度は我々の発表に対して優秀賞という評価を頂き、大変光栄に感じております。また、今回の発表内容は対象者や共同発表者の協力があって為し得た成果になります。この場をお借りして関係者の皆様に深く感謝を申し上げます。
頚髄損傷者にとって日常生活動作の確立は社会参加の上で非常に重要なテーマになってくると考えています。本発表では、脊髄損傷者の日常生活動作の評価指標を用い、小項目に分けて慢性期頚髄損傷者への支援の結果や変化の推移を報告しました。今後も利用者や支援者にとって一助となるようなデータ収集を進めていきたい所存です。
島袋 尚紀(病院 リハビリテーション部 再生医療リハビリテーション室)
演題:慢性期胸髄完全損傷者に対する骨髄間葉系幹細胞投与とリハビリテーションによる体幹機能の変化
演題:脊髄損傷退院患者の職場復帰に影響をおよぼす因子の後方視的調査 -職場復帰と地域社会の移動の関連性に着目して-
【コメント】
演題:慢性期胸髄完全損傷者に対する骨髄間葉系幹細胞投与とリハビリテーションによる体幹機能の変化
この度は、数ある発表の中から表彰を賜り、誠にありがとうございます。本発表の重要な点は、再生医療の発展・取り組みとともに、現在の臨床においてブラックボックスとされてきた脊髄損傷の体幹機能評価・病態解釈・治療を通じ、ADLの改善へとつなげるプロセスだと考えています。本受賞を励みに、日々の臨床においても評価と病態の解釈を行い、適切な治療が構築できるよう努めてまいります。今後も研究と臨床の両面からアプローチし、より多くの患者さんのADL・QOLの向上に貢献できるよう尽力いたします。
演題:脊髄損傷退院患者の職場復帰に影響をおよぼす因子の後方視的調査
この度は、数ある発表の中から表彰を賜り、誠にありがとうございます。生産年齢人口における脊髄損傷患者の職場復帰(復職)は、リハビリテーションにおいて重要な課題の一つです。しかし、復職に関する研究は依然として限られているのが現状です。本邦の脊髄損傷の中核機関である当センターの一員として、「脊髄損傷と復職」に関する要因や関連性を明らかにし、職業復帰アプローチの一助となるような知見を提供できるよう尽力いたします。
木村 麻美(病院 リハビリテーション部 作業療法)
演題:集中的訓練プログラムの現状と報告~開始から2年を経て~
【コメント】
この度は、我々の発表に対し「優秀賞」をいただきまして、誠にありがとうございました。
2001年に施行された高次脳機能障害支援モデル事業から20年以上が経過し、高次脳機能障害者をとりまく環境は大きく変わりました。当院のリハビリテーションにおいても例外ではなく、特にCovid-19感染症対策の観点から、当初のような高次脳機能障害者への対応は困難となったため、復職・復学を目的とした対象者に対し「集中的訓練プログラム」を作成しました。
集中的訓練プログラムでは、プログラム前後の変化が明確になるよう、対人関係技能の変化についての他者評価によるチェックリストを作成、各訓練部門の評価軸を再考、さらに患者自身の障害の自己認識について定量化できるようなシートを作成し、試行的に開始しました。
今回、時代の流れに合わせてプログラムを再考、開始したことで、アップデートされた高次脳機能障害者の支援につながることを強く願います。
久郷 英伸(秩父学園 療育支援課)
演題:医療関係のミスを減らすために ~医療関係のインシデント分析から~
【コメント】
この度は、我々の発表に対し優秀賞という身に余る評価をいただき、誠にありがとうございます。
障害児入所施設である秩父学園において、入所児童の特性による衝動性や人的ミスによるインシデント・アクシデントは年間を通して様々なケースが生じています。
今回、発表させていただいた取り組みは、近年増加傾向にあった医療関係のインシデントに焦点を当てたものです。そこで見えてきたものは、インシデントへの対策と管理が職員の個人的な努力によるところがあり、組織的に機能していなかったという事でした。改善策として業務マニュアルの再構築と周知徹底、再発防止に向けた検討と評価を実施し、チームでの連携を強化することで人的ミスを減らすことを目標に、医療関係のインシデントへの対策を行っています。
今回いただいた評価を励みに、重大な事故を未然に防ぐべく、全ての事例を対象に分析と効果の判定に取り組み、入所児童も職員も安全に安心して生活のできる組織を目指していきたいと考えます。
市川 樹(研究所 脳機能系障害研究部)
演題:自閉スペクトラム症(ASD)者の聴覚過敏性定量化・緩和を目的とした機械学習モデルの開発
【コメント】
この度は私どもの発表について優秀賞をいただき、誠にありがとうございます。本国立障害者リハビリテーションセンターにて既に4年ほども『スマート耳栓』の開発に費やしておりますが、発達障害研究室長の和田先生や研究室メンバー、東京大学在籍時から指導いただいている先生方、実験に参加してくださった方々のご協力もあり、目指すシステムが形になりつつあると感じております。今後は現時点でのモデルを用いた『スマート耳栓』システムの検証実験や、入ってくる音と生じる困難さの関係性の説明に取り組み、実際の当事者支援へと踏み出していきたいと思います。これからも障害をもつ人々の生活向上に寄与するという最大の目的を忘れることなく、研究活動に励んで参ります。
愛知 諒(病院 リハビリテーション部 再生医療リハビリテーション室)
演題:腰部磁気刺激を用いた麻痺下肢残存機能の包括的評価の試み
演題:Lokomat運用実績報告
【コメント】
この度は輝かしい賞を頂戴し誠に光栄に思います。一演題は、私が入職してから長らく関わってきたもので、もう一演題は、直近1年間で進めた研究であり、それぞれ思い入れのあるものでしたので、それぞれ評価して頂き本当に嬉しい気持ちでいっぱいです。残念ながら、私自身が継続して取り組むことが難しい状況になってしまいましたが、これまで取り組んできた経験を今後の臨床に活かしていきたいと思います。
奨励賞
関 晃人(自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓練課)
演題:頚髄損傷者に対するスマートホームデバイスの提案及び設置実績-地域の生活支援における有用性の考察-
【コメント】
この度は、表記の演題について奨励賞をいただきとても嬉しく思います。今回の発表にご助言とご協力をいただきました関係者の皆様に、この場をお借りして深く感謝を申し上げます。
音声操作を用いた環境調整は、これまで高額な専門機器が必要でしたがスマートホームデバイスの普及により肢体機能訓練課の作業療法部門においても手軽に環境調整に用いられるようになりました。作業療法部門では、これからもスマートホームデバイスを通した環境調整方法について情報発信や提案を行い、地域生活における環境調整の拡充を図っていきます。また、スマートホームデバイスに限らずロボットやIoT分野においても情報収集を行い、積極的に住環境調査に取り入れられるように励む所存です。
篠塚 裕美(自立支援局 第二自立訓練部 肢体機能訓練課)
演題:自立訓練(機能訓練)利用者の上肢機能評価に関する研究所との取り組み
【コメント】
この度は私たちの発表に奨励賞をいただき、誠にありがとうございました。本発表に関して、ご協力・ご助言いただいた皆さまにこの場を借りて感謝申し上げます。
今回の発表は、自立支援局肢体機能訓練課と研究所で2021年度から行ってきた取り組みの報告になります。作業療法士・理学療法士による臨床的な評価と、研究所のデータ解析による定量的な評価を合わせて検討することで、新たな視点を持つことや訓練へ活かすことができたと感じています。
四肢麻痺などの重度の身体障害を負うことが多い頚髄損傷者にとって、残存した上肢機能でどのような生活動作が行えるかはとても重要なテーマとなります。今後も、頚髄損傷の方が望む生活の実現に向けて、作業療法部門として努めてまいりたいと思います。