国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所では、平成16年度より 科学技術振興調整費「障害者の安全で快適な生活の支援技術の開発」プロジェ クトを進めております。そのなかのサブテーマ「認知・知的障害者を対象 とした情報・コミュニケーションツールの開発」において、障害者・高齢者を 含むすべての住民が安全に避難するための取り組みを浦河町(北海道)を主要 なモデル地域として実施し地域住民参加型の防災取り組みの新しいモデルを開 発するとともに、その取り組みへの障害者の参加を情報・コミュニケーション 面から支援するための研究開発を行っています。そのなかで障害者の防災参加 という観点から、精神障害者グループホーム・社会福祉法人浦河べてるの家( 浦河町)の地域のなかで障害者が暮らす活動に着目するとともに、その協力を 受けてプロジェクトを進めています。これまでの研究で、障害のある人が取り 残されることのない防災ネットワークを実現するためには、まずは地域の中で、 生きる意欲を持って、自らの居場所を見つけて、生活していけることが必要で あることを指摘しました。今回、障害者の防災参加の取り組みのなか で、とくにまちで障害者が暮らすという点に着目し、「障害のある人もない人 も一緒に安心して暮らしていけるまちづくり」、「地域の中で自分の居場所を 見つけて生きていく方法」についての知見を、広く知ってもらう趣旨から、浦 河べてるの家の5名のメンバーおよびその支援者である浦河赤十字病院精神神 経科 川村敏明医師による講演会を持つこととしました。
北海道浦河町は襟裳岬の近くにある人口約16,000人の町です。浦河赤十字病 院精神神経科を退院した患者さんが回復サークルを28年前にはじめたことをきっ かけとして、浦河べてるの家 は始まりました。グループホームなどの生活拠点、昆布販売などの労働拠点とし て、現在は150人のメンバーが暮らしています。『当事者研究』でも有名で、書 籍・ビデオの販売、講演活動など、メンバーによる発想の転換は国際的にも注目 され、初夏のべてる祭りには400人もの観光客が『幻覚&妄想大会』を見に集ま ります。