認知症のある人の生活の質を向上させるためには、生活歴や家族構成などの個人的背景、生活環境、ならびに時間と共に変わっていく認知機能と身体機能に応じた適切な支援が必要になります。近年、この支援をより有効に行う手段として、安心して使える昔ながらの道具や、記憶や見当識を補う自立支援機器、環境が認知機能を代替するスマートホームなど、様々な「もの」、機器、システムの可能性が提案されています。しかし、このような「認知症のある人の福祉機器」は、一部を除いてまだ充分活用されておらず、新たな機器の開発も、ほとんどが介護者の負担を軽減する目的や技術シーズからの発想で行われています。そこで今回のシンポジウムでは、当事者を中心とした「もの」や機器の活用と開発について、実例をもとに議論し、今後の幅広い実践につなげたいと思います。