開発したシステム
自立支援のための情報支援システム
このプロジェクトでは、高齢者の自立生活のために役立つ声掛けロボットを開発しました。
【特徴】
@自立生活のための情報支援をすること
A高齢者に伝わりやすい音声呈示方式(声掛け)を使っていること
B住民による運用モデルを作って効果を確認したこと
開発にあたっては、高齢者などにお話しをうかがって要求機能を選定しました。そして、高齢者に伝わりやすい音声呈示方式(声掛け)に向けて、合成音声、返事を正確に把握する技術、認知機能状態に応じた声掛けの方法を開発しました。
また、伊豆市の住民の方と、地域の事情に合わせたロボットの使い方を考え、効果を確認しました。その結果、(A)薬の飲み忘れがなくなった、(B)生活リズムが整った、(C)寂しさが和らいだ、(D)家族や支援者にとって、電話や訪問での見守りが少なくなり、自分の時間を取れるようになった などの効果が分かりました。
図:開発したロボットシステム(自立支援のための情報支援システム)
[ページトップへ移動]
開発した要素技術
聞き取りやすい合成音声
ロボットからの合成音声のうち、もっとも聞き取りやすいものは、男性音声・5mora/sであることを確認しました。
図:聞き取りやすい合成音声
伝わりやすい声掛け
高齢になったり、認知機能が低下したりすると、声をかけられていることに気づかないことがあります。ロボットからの伝わりやすい声掛けプロトコルを定め、きちんと伝わるか確認しました。
その結果、MMSE15点以上の方を対象にしたとき、声掛けを2回行うと、確実に情報が伝わることが分かりました。
さらに、声掛けに対する返事を正確に捉える技術を開発しました。
図:伝わりやすい声掛けプロトコル
図:声掛けに対する返事を正確に把握する技術
認知機能状態に応じた声掛けの方法
認知機能が低下してくると、一度にたくさんの情報を聞き取ったり、理解したりすることが難しい場合があります。このため、認知機能状態にあわせたロボットの声掛け方法を開発し、きちんと情報を伝えられるか確認しました。
図:認知機能状態に応じた声掛けの方法
[ページトップへ移動]
ニーズに基づく要求機能選定
実用的なロボットシステムを開発するために、高齢の方に使っていただき、あるいは高齢者の方にお話しを伺い、必要となる機能を明らかにしました。また、コンセンサスワークショップを開き、必要な技術を見極めました。
高齢者施設での要求機能選定
高齢者施設に住む高齢者の方に、開発中のロボットを使っていただきました(高齢者施設では、職員の方が本人の生活を見守っているので、ロボットによる変化を確認しやすいのです)。そして、本人、家族、職員の方とのコンセンサスワークショップを開き、ロボットの利用場面を具体化しました。
地域での要求機能選定
介護予防事業に通う高齢者の方に、開発中のロボットを見ていただいて、グループインタビューでお話を伺いました。また個別インタビューで、具体的な生活場面のお話を伺いました。そして、本人、家族、専門職の方とのコンセンサスワークショップを開き、ロボットの利用場面を具体化しました。
コンセンサスワークショップとは
コンセンサスワークショップとは、将来ロボットを利用すると予想される人(本人、家族、技術者、支援専門職など)や技術者が集まって、期待する機能や、実現可能なシステムについて意見を出し合い、合意を図るプログラムです。合意を得ることで、これから作るロボットの利用場面や機能が具体化されます。そして、開発すべき要求機能を決めることができます。
【このプロジェクトでのコンセンサスワークショップの流れ】
1 本人、家族のご希望に沿って、期待する利用場面を整理 2 技術者から、ロボットの形、声掛けの方法等のイメージを3つずつ提案 3 マイナス点(高機能のため高価になる等)も踏まえて、実現可能なロボットシステムのイメージを選択 注意:このワークショップは、内容をイラスト化するなど、参加者がイメージを共有できるようにする工夫が必要です
[ページトップへ移動]
施設での要求機能選定
-施設入居者とのコンセンサスワークショップ
-施設入居者とのコンセンサスワークショップ
技術者から、3つのイメージが提案されました。【例 転倒への声掛け】
奥様には心配な事がありました。夜、ご主人が移動するとき、転倒してしまったのです。一緒に起きるようにしていても、いつでもという訳にはいきません。パペロの声掛けに期待が寄せられました。
- 起床したことを感知して、ロボットが移動してトイレまで誘導する
- 廊下に出たことを感知して、モニターにロボットが映り、「気を付けて」と注意喚起する
- 転倒したら、それを感知して、ロボットが来て 「大丈夫ですか」と声をかける
全員で話し合ったの結果、本人の希望を中心に、3. が選ばれました。
[ページトップへ移動]
地域コミュニティでの要求機能選定
【在宅高齢者を対象とした要求機能選定の流れ】
1 | 介護予防事業でのグループインタビュー |
2 | 高齢者・家族への個別インタビュー |
3 | シナリオ案の作成 |
4 | 在宅高齢者とのコンセンサスワークショップ |
5 | 専門職とのコンセンサスワークショップ |
介護予防事業でのグループインタビュー
伊豆市の介護予防事業を訪問し、高齢者(想定ユーザー)の方々にロボットの実演を見ていただいて、どんな場面でロボットを使いたいか聞きました。
実施期間:2012年7月16日〜8月9日
参加者:124人(男性10人、女性114人)平均年齢 86.0歳
全部で172種類のニーズが出ました。
多かった希望[世帯構成]
- 話し相手としてロボットがいると良い/寂しいので声をかけたい[単身、高齢夫婦、多世代同居]
- 「これからお風呂に入るよ」とロボットに伝え、浴室に入ってから1時間(または30分)たっても「(お風呂から)出たよ」と伝えてなかったら、ロボットから家族へ連絡がいくと安心 [単身、高齢夫婦]
- 救急車を呼べないとき、ロボットが感知して、家族や近所の人へ連絡してくれると安心[単身]
- 「おはよう」「こんにちは」 と声をかけてくれると嬉しい[高齢夫婦]
- 他のことをしていると薬を忘れるときがあるので、ロボットから薬を飲むよう声をかけてくれると良い[高齢夫婦]
- 詐欺などの悪徳商法の訪問があったとき、不審者を撮影したり、会話を録音してくれると良い[高齢夫婦]
- 電話がかかってきたとき気が付かないことがあるので、チャイム音などで知らせてくれると良い[多世代同居]
[ページトップへ移動]
在宅高齢者・家族への個別インタビュー
グループインタビューの場では、話しにくい、思い出しにくいという方もいます。このため、ご自宅でロボットを見ていただき、ロボットを使いたい場面を聞きました。
実施期間:2012年8月23日〜10月5日
実施場所:本人宅
対象: 9世帯(単身/高齢夫婦/多世代同居世帯、3世帯ずつ)
【結果】[世帯構成・発言者(本人/家族)]
- 話相手が欲しい[単身・本人、多世代・本人] (昔馴染みの人が入院/転居して寂しい、一日を振り返る相手が欲しい等を含む)
- 迷惑にならない形で、お茶飲みに来ないか/会いに行けるか、都合を聞きたい[単身・本人]
- 買い物メモを忘れてしまうため、声をかけてもらえるとうれしい[独居・本人、高齢・本人]
- 種まきのとき休耕/作付けの畝を、一緒に確認できると助かる[単身・本人、多世代・本人]
- できるだけ一人で身の回りのことをしたい[単身・本人、高齢・本人、多世代・本人](スケジュール管理、持ち物確認、服薬、血糖・血圧管理、家事(ゴミだし、料理等)、使いやすい衣服や調理器具の情報収集を含む)
- 若い人たちの会話に入れない/会話が聞こえない[多世代・本人]
- 栄養管理/外出時の準備・連絡/夜間覚醒時の付き添いを伝えてくれると助かる[高齢・家族]
- 食べ物や部屋の場所、室温等を伝えてくれると助かる[多世代・家族]
[ページトップへ移動]
シナリオ案
グループインタビュー、個別インタビューに基づき、重要な利用場面を選定し、36種類のシナリオ案を作りました。
【シナリオ案の例】
- 服薬を忘れないよう、声掛けをしてくれる
朝、「朝食はおいしかったですか?食後のお薬を忘れずに飲んでくださいね」と言ってくれる。
- 今日のスケジュールや準備を確認してくれる
朝、「今日はデイサービスの日です。出かける前にトイレに行ってはどうですか?」と、声をかけてくれる。
出かける前に、「忘れ物はありませんか?」と、持ち物(特に薬)を確認するように、教えてくれる。
- 電子レンジや冷蔵庫、電話の音を知らせてくれる
- 留守電に録音し、帰ってきたら教えてくれる
「Xさんから『月曜日によっても良いかい?(録音再生)』と連絡がありました」
特定の電話には、伝言を伝える。
「Yさんの伝言です『今、畑に言っています。晩に戻るよ(録音再生)』」
- 送迎までの時間を教えてくれる
「今日は、A病院に行く日ですね。お迎えの時間は、8時30分です」と知らせてくれる。
「変更はありませんか」という質問に、「はい」と答えると、病院へ通信が行き、送迎担当者に届く。
GPS等を使い、送迎車があと10分くらいでつくとき、「あと10分くらいで、お迎えがきます」と教えてくれる。
- 療養先から知り合いと話せる
病院待合室にロボットとディスプレイを置き、登録した友人と、テレビ電話のような形で話すことができる。
- 種まきの場所や農薬散布の時期を、一緒に確認してくれる
(3年、5年おきに農地を休めなければならない作物がある。農薬を散布して、一定期間たたないと収穫できない作物がある)
携帯電話を持って畑に行き、写真をとると、翌年から種をまいた場所と年を確認できる。
「種まきの確認をしたい」というと、「C豆は、4年前から写真のこの部分に撒きました。今年も撒くことができます。来年は休める年です」と教えてくれる。
「そろそろ穫っても良いか?」と聞くと、「Dの薬を7月1日に撒きました。2週間たちましたので、収穫しても大丈夫です」と答えてくれる。
[ページトップへ移動]
在宅高齢者とのコンセンサスワークショップ
認知機能低下のある方と、介護予防事業に通っている方の、2世帯にご協力いただいて、ご自宅でコンセンサスワークショップを開きました。
実施期間:2012年10月17日〜22日
実施場所:本人宅
参加者:2世帯
本人、家族、地域包括支援センター職員、技術者(NEC)、
研究者(国リハ)、高齢者施設職員(生活科学運営)
【結果】
- 予定の確認
カレンダーに書いた予定を読み取り、伝えてくれる(予定は、項目ごとに声で入力しても良い)
病院や管理事務所等の連絡を受け、休業日を伝えてくれる
出かけるとき、玄関で「忘れ物ない?」と確認してくれる
- 糖尿病の方への、カロリー計算の補助
料理の量をロボットが測り、カロリーを計算し、教えてくれる
1日の摂取総カロリーを自動計算し、記録してくれる
- 血圧測定の促し
朝起きた時に、ロボットが「血圧を測りましょう」と声掛けをしてくれる
血圧を測るとき、「パッドを巻いてください」「『測定』ボタンを押してください」と、使い方を伝えてくれる
測った血圧が高い/低いとき、「少し血圧が高いようです。しばらく休んでください」と促してくれる
測定が行われたことを、家族へ送信してくれる
- そのほか
3千円〜5千円なら支払える
タッチパネルからの入力も大丈夫
持ち歩くときは電子辞書・ペットボトル程度の大きさでも良い
口論の際「ちょっと待った」と言ってくれると良い
[ページトップへ移動]
専門職とのコンセンサスワークショップ
高齢者への声掛けロボットに関心を持ってくださった専門職の方と、協力者のお宅でコンセンサスワークショップを開きました。
実施日:2014年3月30日
場所:伊豆市Z地区住民宅
参加者:9名
訪問看護師、デイサービス職員、介護予防事業職員、
地域包括支援センター職員、
認知症のある人の家族(理学療法士)、技術者(NEC)、
研究者(国リハ)、高齢者施設職員(生活科学運営)
【結果】
システムについて
- 声掛けの形式は適切
- 「支えてくれる人」のイメージが保たれる人形型が良い
- 音声、文字、映像の併用・選択機能が必要
- 非常時の状況確認が最も重要
- 高齢者が気になることを察知し、安心感をえられる機能が必要(例:「具合が悪い」と本人が言ったら「ここに触って」と伝え、体温と血圧が測れる)
- 予定変更時の連絡ツールが必要
- 耳の遠い方が多いため、通訳のような機能が欲しい(復唱、概要伝達)
- デイサービス利用時も利用できると良い(例:人前だからと気になる方が多いが、トイレや飲水を促す)
運用体制案について
- サービス提供者がいない場合、家族や地域包括支援センター、訪問看護ステーションが適切な場所を選び設置する。また声掛け内容の入力する
図:Z地区のステークホルダー

これらの結果、認知機能状態に応じた、スケジュールや服薬の声掛けができるよう、ロボットシステムを改良することになりました。
[ページトップへ移動]
ロボットシステムの有用性評価(アクションリサーチ)
ロボットシステムの有用性評価には、開発に携わった研究協力フィールドの住民の方に協力していただきました。まず、事前準備で地域の社会的特徴を整理し、在宅高齢者の生活状況と生活ニーズを把握し、効果をみるのに適した地区を選びました。そして、それらの地区の協力を得て、住民会議を開き、ロボットの具体的な利用場面や、運用体制案を考えていただきました。最後に、民生委員や地域サロンの主催者の方々(地域のキーパーソン)に協力してもらって、30名近い高齢者の方に、6か月ロボットと暮らしていただき、その効果を確認しました。
地域社会の特徴把握(事前調査)
現地調査や公開資料をもとに、主な生業、社会組織、気候風土、医療福祉資源等の社会的特徴を把握しました。
研究協力フィールド:伊豆市
人口 31,625人
高齢化率37.91%(2017/4)
図:伊豆市の位置(静岡県地図の黄色部分)
【結果】
- 高齢者の社会活動、宅内生活、消費活動を、手厚いインフォーマルネットワークが支えている(知人、血縁(子、孫、親戚等)、地縁(集落、地区役員、民生委員、小売店等))
- ただし地区により、状況は異なっている(急激な過疎高齢化で社会資源の枯渇や地域共同体の崩壊といった課題を抱える地区も、新興住宅地で人と会う場がまだ少なく高齢者が孤立しやすいといった都市的な課題を抱える地区もある)
- 高齢者の生活では、細かい時間指定は少なく、ゆったりとした時間が流れている
- 温暖な気候、森林河川が近くにある等、空調や温度を人工的に調整する場面は少ない
- 高齢者には、孤独感を抱える人が一定数いる(家族の声が聞こえにくい、話し相手に会わない、入院や引越等で友だちに会えなくなった)
- 高齢者を支える家族にも、不安がある(自然災害などの非常時に(大雪のためデイサービス中止等)、本人の状態(行動や体調変化)を確認できない)
- 高齢者を支える家族にとって、仕事と介護/見守りのバランスは難しい(働いている世代は市外に住んでいることが多く、月に数回、実家に戻る遠隔介護/見守りが多い。同居の場合、認知症が中等度になると、5分以上目を離せない等、一日中見守りが必要になり、通勤圏が制限される)
図:事前調査訪問地

対象地区:(青)修善寺10地区、(緑)中伊豆14地区、(紫)天城湯ヶ島8地区、(橙)土肥19地区
[ページトップへ移動]
在宅高齢者の状況把握(認知機能状態と生活ニーズ)
伊豆市役所とともに、地域で暮らす、介護サービス利用前の高齢者(およそ1万人)に、認知機能や生活状況に関するアンケートを実施しました。
実施期間:2016年9月1日〜9月30日
方法:郵送、認知機能チェックシート(自記式)*1
対象:65歳以上の伊豆市在住者
(介護保険、福祉施設、医療施設利用者を除く)
回収率:51.8% (配布数:9868枚 回収数:5107枚)
*1認知機能チェックシート:
MoCA-Jを参考に、伊豆市健康支援課と国リハ研究所が作成。
「健常」「MCIの疑い」「軽度認知症の疑い」の3つの目安を示す。
【結果】
- 介護保険サービスを利用していない方々のうち、MCI疑いと判定された人は17.4%、軽度認知症の疑いと判定された人は2.6%だった
- 高い年齢ほど、MCI疑い群、軽度認知症疑い群の割合が多かった
- 判定別にみると、認知機能低下が疑われる群ほど、一週間あたりの外出頻度が少なかった
- 判定別にみると、認知機能低下が疑われる群ほど、一週間あたりの近所の人との会話頻度が少なかった
- 判定別にみると、認知機能低下が疑われる群ほど、自分ひとりでしている/行える家事・作業が少なかった(「自分でしている」と回答されなかったもの:多い順に、スケジュール管理、電池の交換、ATM操作)
ロボットの有用性の評価には、高齢化が進んでいる地区や、ご自宅でのロボットの声掛けシナリオを作れる(条件の整っている)地区に、協力をお願いすることにしました。
[ページトップへ移動]
ロボットの利活用を考える住民会議
伊豆市の複数の地区にご協力いただき、具体的な、ロボットの活用場面と運用体制について話し合いました。
実施期間:2016年10月〜2017年2月
中伊豆地域・土肥地域
参加者:住民5名ずつ、地域包括支援センター職員、
伊豆市役所職員、技術者、研究者
実施期間:2018年8月〜10月
八木沢地区(土肥地域)
参加者:住民6名、地域包括支援センター職員、
伊豆市社会福祉協議会職員、技術者、研究者
【2016年 土肥地域住民会議の結果】(一部抜粋)
- 目的
老人会やサロンに行きにくく、地域の社会資源にアクセスしにくい高齢者と、無理なく、緩やかにつながれるように、ロボットを活用する - 利用場面
サロンや老人会の声掛け/お祭り等(地区行事)の案内/移動販売のお知らせ/服薬の促し/火の元確認の促し/ゴミの日のお知らせ - 大事なこと
本人に分かりやすい話し方。特に声掛けのタイミング(聞き逃したり、やろうと思った別の用事ができなかったり、または間違ったりしてしまうため) - 声掛けシナリオの入力
本人の暮らしを知っている人がキーパーソンになって入力する(支えている地域住民、家族、民生委員など)
図:できあがった運用体制案
[ページトップへ移動]
効果の確認
伊豆市の皆様に、6か月、声掛けロボットを使ってただき、その効果を確認しました。
(1)ご自宅でできることに関する実験
対象:伊豆市在住の65歳以上の方(在宅・単身)
参加者:9名
【結果】(2020年2月末時点)
- 薬の飲み忘れが少なくなった
- 起床・睡眠時間のばらつきが少なくなり、生活リズムが整ってきた
(2)気持ちと社会生活に関する実験
対象:伊豆市在住の65歳以上の方(在宅・単身/高齢/日中独居)
認知症と診断された方、もしくは要介護2以上の方を除く
参加者:22名
【結果】(2020年2月末時点)
- 認知機能が維持された、または良くなっていた(課題を熱心に覚えた方もいるので、ロボットの声掛けだけの効果ではありません)
- 気持ちが上向きになった。張り合いや役割感が高まってきた
- 寂しさが和らいだ
(3)家族や支援者への影響
時期と方法:実験終了後に、個別にヒアリング
対象:4名(実験に参加した方の家族もしくは支援者)
【結果】(2020年2月末時点)
- 家族や支援者への、電話(用事や相談を除いたもの)の回数が減った
- 本人が一人でも大丈夫な状態になり(薬の飲み忘れがない等)、家族の訪問回数が減った。また訪問にあてていた時間を、家族が自分のために使えるようになった
(4)伊豆モデルの誕生
今回の実験では、ロボットの利用者に、介護保険や訪問看護を利用する前の高齢者が含まれていました。介護保険や訪問看護を利用している方には、ケアマネージャーや訪問看護師を通じて、ロボットをお届けすることができました。しかし、サービスを利用していない方には、まだ方法がありません。そこで、 サロンや老人会、民生委員の方にご協力いただいて
、ロボットをお届けしました。
協力してくださった地区では、日頃から人々が支えあって暮らしていました。高齢者には、家族のほか、近所の方や役員・民生委員の方の丁寧な声掛け(見守り)があり、一人暮らしの方も安心して暮らしていました。こうした特徴があったため、スムーズなご紹介ができました(例えば、それぞれの暮らしにあわせて、声掛け文やタイミングを設定できました)。参加した高齢者の方々も、上手にロボットを使ってくださりました。
この結果、高齢者の方へロボットをお届けするロボットをお届けする新しい形(伊豆モデル)ができました。
図:ロボットをお届けする方法(伊豆モデル)
事業化に向けて
- 住み慣れた地域で暮らす独居高齢者の自立生活を支援するシステムであるため、近隣住民(支援者)・民生委員・地域包括支援センター等のステークホルダーまで含めたビジネスモデル検討をおこないました。
- 伊豆市における社会実験により、独居高齢者及び離れて暮らす家族、関係するステークホルダーに対する有用性検証結果をもとにして、ビジネスモデル検証をおこないました。
図:ビジネスモデル
想定利用者のセグメンテーション
認知症高齢者、軽度認知障害(MCI)高齢者の推計や、ICT/IRT技術の普及率、ステージTで行ったニーズ調査をもとに、想定される利用者を推計しました。その結果、ロボットの想定利用者は、約110万人いることが分かりました。
【結果】
- 2012年の推計によれば、対象となる、MCI高齢者は約400万人、認知症者高齢者(日常生活自立度U以上の人を除く)は約157万人
- 高齢者や家族へのニーズ調査から、服薬管理支援、スケジュール支援を対象とし、単独世帯と高齢夫婦世帯を主なターゲットとする
- 服薬管理支援の想定利用者は、約10%と仮定 ⇒約44万人
- スケジュール管理支援の想定利用者は、約15%と仮定 ⇒約66万人
- 全体の想定利用者は、約110万人
図:セグメンテーションのプロセス

図:想定利用者数

[ページトップへ移動]
導入マニュアル
高齢者の方や物忘れが気になっている方にとって、ロボットの声は、聞こえにくかったり、気づきにくかったりします。ときには音が聞こえていても、声掛けの内容が分かりにくい場合があります。このため、聞こえ方や認知機能の状態にあわせて、ロボットの声、音量、設置場所、発話タイミングと発話内容を調整して、安心して使っていただけるよう、導入マニュアルを作りました。
【特徴】
- アセスメント票を使って、適した音量や設置場所を見つけられる
- アセスメント票を使って、認知機能状態に応じた声掛けスタイルを選べる
ビジネスモデル
生活支援ロボットシステムの利用者として、住み慣れた地域で暮らす独居高齢者を主たる対象としました。
最も大きな特徴としては、生活支援ロボットシステムを必要とする独居高齢者の抽出および提供導入プロセスについて、当該高齢者のことをよく知っている地域支援者が、家族と連携しながら実行するビジネスモデルとしました。 また、自治体がサービス提供事業者と契約するモデルとしました。そして社会実験と事業化活動とから、本ビジネスモデルが成りたちうることを検証しました。
図:ビジネスモデル