手話通訳学科における卒業研究の位置づけ

当学科の卒業研究は「プロジェクトワーク」の一環として実施するものです。語学教育におけるプロジェクトワークとは、「学習者が自分たちで話し合い計画を立て、実際に教室の外で目標言語を使用してインタビューや資料集めなどの作業を行い、作業の結果を持ち寄り一つの制作品(報告書、発表、ビデオなど)にまとめる学習活動」のことをいいます。したがって、当学科の卒業研究の目的は何よりもまず、(1)手話を用いて作業を行うこと、そして、(2)手話で研究の成果を発表することにあります。

手話を用いて作業を行うことには、手話特有の難しさもあります。それは、手話には書きことばがないため「文献資料」が存在しないこと、また、市販ビデオ・DVD、テレビ放送、インターネット配信などによる動画資料もきわめて限られていることです。そこで当学科では、ろう者の語りを収録した動画資料の蓄積に努めてきました。現在、のベ1000時間にも及ぶ独自動画資料を有し、磁気テープ資料の電子データ化も完了しています。このような豊富な資料を活用することで、手話を用いた作業を可能にしています。また、手話ネイティブの専任教官2名のほか、常時お世話になっているネイティブの非常勤講師が10名前後おり、毎日3~4人のネイティブサイナーが学院内にいるという環境があります。これに加えて外部の方々の協力を得たり、各種研究会などに参加することにより、手話を用いた情報の収集を可能にしています。

卒業研究の目的が、手話を用いて作業を進め、手話で成果を示すことにありますので、極論をいえば、研究テーマや研究内容は、そのための方便にすぎません。しかし、研究内容が高度になればなるほど、動画資料の詳細な検討や、インタビュー場面での高度な技能が必要となります。ですから、研究内容を充実させることは、プロジェクトワークをより効果的なものにするためにもきわめて重要です。なお、研究テーマ自体には特に制限はなく、言語、文化のほか、通訳、教育、福祉などのテーマも選択可能です。しかし、手話を用いて作業を行うという条件は必ず満たす必要がありますので、「文献調査」や「質問紙アンケート調査」といったアプローチが中心になるテーマは認められません。そのため、結果として言語(手話そのものや手話と日本語の比較)に関するテーマが多くなっています。

卒業研究発表会

卒業研究発表会

当学科の卒業研究発表会には、その目的に照らして、広く一般の方々にご参加いただいています。ただし、進行、発表、質疑応答はすべて手話で行われ、日本語への通訳はありません。そのため対象者はろう者および手話学習者に限定されてしまいますが、ぜひとも足をお運びいただき、学生たちの発表を見ていただけたらうれしく思います。

なお、企画・運営はすべて学生が行っております。お問い合わせにつきましては、学生が組織する卒業研究発表会実行委員会宛のメールにてお願いいたします。学院事務室では受け付けておりませんので、ご理解のほど、よろしくお願い申し上げます。

令和4年度 第32期生 卒業研究発表会

概要

新型コロナウイルス感染拡大防止のため、昨年度に引き続きZoomによるオンラインにて実施いたします。

開催日:2022年12月18日(日) 9:00~16:30
参加費:無料
参加方法:Zoom

※発表会の進行、発表、質疑応答はすべて手話で行われ、日本語への通訳はありませんので、ご注意ください。
※最新情報は、Facebookページをご覧ください。

研究テーマ

  1. 持田奈保子     
    日本語と日本手話の言語化方略の違い ―翻訳時に付加された要素の分析を通して―
  2. 小山康恵
    日本手話の音韻論に関する一考察 ―運動の質(張り/緩み)の実現形としての手型変化―
  3. 坂本遥
    日本手話における運動の質の音声実現形について ―類音語の分析を通して―
  4. 萩原絵美
    日本手話における運動の質の音声実現が学習者の聴取に与える影響 ―片手脱落語の弁別課題を用いた分析―
  5. 髙橋鈴月
    日本手話の文法化における音韻的弱化と強化 ―運動の質(張り/緩み)との関係―
  6. 斎藤真琴
    日本手話に関係代名詞はあるか? ―主要部内在型関係節に後続する指差しへの着目―
  7. 進藤洋子
    コミュニケーション方略の違いが競技のあり方に及ぼす影響 ―デフサッカーの場合―
  8. 片山野乃花
    日本手話の談話における指文字の機能 ―用例に基づく分析―
  9. 白方美羽
    「平叙要求文」の語用論的機能 ―日本語の「言いさし表現」との対照―
  10. 北澤奈美
    日本手話における目細めの機能 ―話題化と従属節を中心に―
  11. 小野志都乃
    日本手話の依頼表現におけるポライトネス・ストラテジー ―〈お願い〉文を中心として―

※研究テーマや発表順は変更になる場合があります。

参加申込

下記Googleフォームより申し込みください。

お申し込みはこちら

申込締切:2022年12月8日(木)17:00

※発表の資料と当日参加URLは、お申込みの際に入力していただいたメールアドレスへ後日送信いたします。
※メールとFAXによる申込み受付はおこなっておりません。
※当日は記録のためZoom の録画を行います。あらかじめご了承ください。
※パソコンでの視聴を推奨しております。

皆様のご参加を手話通訳学科一同、心よりお待ちしております。