理療教育部 | 芦野純夫 |
鍼灸が江戸時代に杉山検校により盲人の技(わざ)として確立されたことは、障害者の職業リハビリテーションにおける世界的な先駆であり、その伝統は盲学校・センターでの理療教育として保持されてきた。しかし戦後、特に昭和46〜47年頃の「鍼麻酔報道」を契機に睛眼鍼灸師の進出が著しく、専門学校でも大卒者が既に大半を占め、鍼灸大学大学院では鍼灸学博士すら輩出している。国家試験は殆ど問題でない彼らは余力を実技教育に注いでおり、低能力者にも可能な限り機会を与えて国試合格を目標とさせている理療教育との、臨床の現場で明らかになる実力差は「福祉」で埋め得る筋合いではない。その対策の一環として、当センターの持ち味を活かし盲人が使いこなせる鍼灸用具の開発を行ってきた。
用途に応じて種々の鍼があるが、江戸末期の葦原検校は著書『鍼道発秘』で毫鍼・圓利鍼・三稜鍼だけを駆使して一切の治療を行っている。今日では刺入をしない皮膚鍼や真皮内に留める皮内鍼・円皮鍼も重要であり、全盲者でも練習を積めば使えるよう工夫した。
既報(小比賀)した石粘土製の施灸具を、持ち易いよう大きめにして耐熱耐水の塗装と送風に改良を加えて艾の燃焼を確実にし、全盲にも自在な半米粒大透熱灸を可能とした。