慢性疾患患児のきょうだいによる患児の疾患の理解

研究所障害福祉部 北村弥生
東京医科歯科大学 上田礼子

はじめに

 障害児・者や慢性疾患患児・者のQOLにおいて良好な家族関係は重要である。欧米では、発達障害児・者のきょうだいと小児がんや糖尿病などの慢性疾患患児のきょうだいについて、1950年代後半から多くの研究と実践が行われてきた。その結果、きょうだいに対する支援として、きょうだい同士の分かち合いの場を提供することと、きょうだいに障害(疾患)や福祉制度についての情報を提供することが有効であることを明らかになった。しかし、わが国では、きょうだいに対する研究も支援もほとんど行われておらず、きょうだいが障害児(者)や患児(者)の疾患をどの程度理解しているかも知られていない。そこで、我々は慢性疾患患児のきょうだいが、患児の疾患についてどの程度理解しているかを明らかにすることを目的として調査を行った。また、きょうだいによる疾患の理解の程度がきょうだい関係のよしあしに関連するか否かを調べた。

方法

 都内某大学附属病院で母親29名に面接調査を行った。きょうだいと父親には質問紙による調査を行った。回収数は18家族、きょうだい24名、父親15名であった(回収率62.1%)。有効回答はきょうだい男14名女8名、平均年齢15.2才(8才〜30才)であった。患児の疾患の種類は、白血病、糖尿病、てんかんなどであった。

結果と考察

 きょうだいの回答から次のことが明らかになった。1)きょうだいの8割は、親から患児の疾患について説明を受けたことがあると述べた。2)疾患の名称・症状・原因・予後のうち、少なくともひとつを記載できたきょうだいは4割で、ふたつ以上記載できたきょうだいは1割であった。3)疾患をひとつでも記載できたきょうだいは、残りのきょうだいよりも、患児に対する感情と行動が肯定的な傾向があった。これらの結果は、きょうだいが患児の疾患を理解するためには、親の説明だけでは不十分であることを示唆している。従って、わが国でも欧米のように、医療や教育の専門家が、きょうだいに対し、年齢に応じて体系的に情報を提供することが必要であると考えられる。




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