「学校生活等に関する調査から」その2  ―過去のいじめに関する被害・加害・見聞体験と予後との関連について―

指導部相談判定課 四ノ宮美恵子 ・小熊順子・生村浩史

1.はじめに

 昨年の先行発表においては、質問紙法による調査結果から当センター入所者の過去のいじめに関する体験の実態について報告した。本発表では、引き続きそれら実態と当センター入所後の心理的適応状況との関連から過去のいじめに関する体験の長期的影響を探り予後との関連について分析を試みたので報告する。

2.対象と方法

 対象は当センター一般リハビリテーション課程入所者で在籍期間が6月以上、30歳未満の者107名(肢体不自由50名、聴覚障害45名、視覚障害12名)である。

 方法は質問紙法による。質問紙の構成は、いじめの被害・加害・見聞各体験の実態を把握するための項目と、当センター入所後の心理的適応状況を把握するための項目として施設生活の適応感、Rosenbergの自尊感情尺度、改訂版UCLA孤独感尺度、社会的スキル評価尺度(KiSS-18)、自己の障害に対する現在の心理的うけとめに関する項目から成る。

3.結果及び考察

 対象者全体の自尊感情、孤独感、社会的スキル(以下3尺度という)及び自己の障害に対する心理的うけとめに関する尺度間には、それぞれ有意な相関が見られ自尊感情、社会的スキルが高くなるほど孤独感が低く自己の障害は気にならないとする傾向が認められた。

 3尺度の各得点を従属変数とした重回帰分析の結果からは、被害体験の有無について寄与は見られなかったが、加害体験については孤独感に有意傾向ながら負の寄与を示し、加害体験が集団力動との関連で生じやすく、法務省調査の親しい友人をもつ生徒の方がもたない生徒よりも加害体験のある割合が高いという知見とも符合する結果が見られた。

 被害体験群における重回帰分析、分散分析の結果からは「仲間はずれ・無視」という被害内容があると孤独感が高くなる一方で社会的スキルは低くなり、「悪口、汚いと言われた」という被害内容があると自尊感情が低く、「他者に相談」という対処行動をとった場合社会的スキルが高くなるという傾向が見られた。また、被害体験後回避的な対処行動をとった場合当センターの施設生活全般の適応感を良くないと回答する傾向が見られた。

 被害体験があることそれ自体が心理的予後に影響をもたらすというよりも被害体験の内容、体験時の対処行動等によって心理的予後が異なることが明らかとなった。




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