重度障害者用スポーツ種目の開発について  −電動車いすサッカーの現状と課題−

学院 金田安正 ・梅崎多美・久場美鈴
研究所 井上剛伸

【目的】近年、障害者のスポーツ活動はますます盛んに行われるようになっているものの、重度障害者が行えるスポーツ活動はまだ少ない。特に筋疾患者や重度脳性まひ者、高位 頚髄損傷者など、電動車いす使用者の集団で行うスポーツ活動が少ない。その中で、「電動車いすサッカー」は1995年に全国大会が開かれ、その後さらに普及している。

 今回、その現状を調査把握し、課題を整理したので報告する。

【対象と方法】日本電動車いすサッカー連盟登録24チームの代表者並びにチームのメン バー全員に対し、アンケート調査を行った。調査で不明だった点について、さらに、実 際に練習場所6カ所を訪れ、聞き取り調査を行った。

【結果】18チームの代表者からと、プレイヤー141名から回答を得た。プレイヤーの 年齢は13歳から65歳までと幅広い年齢層で行われているが、年代別では20歳台が もっとも多く、平均年齢は32.3歳であった。障害の別では、脳性まひ者が約6割、 筋疾患者が約3割であった。

 代表者18名の回答中、10件のけがや事故の報告があった。車いすが他の車いすに乗り上げ転倒し、頭部打撲というケースが4件あった。

 現在のルールが「わかりにくい」、「改善が必要」という回答が5割あった。その内容は、「輸入車」のスピードが法定速度の時速6Kmを超えており不公平であるなど車いすの違いについてや、脳性まひと筋疾患では、車いす操作に差があり、異なる障害者が混在したままだと有利になる者と不利になる者が出てしまうことなどであった。

 電動車いすに関しては、バンパーの取り付けに時間がかかりすぎる、ずり落ちたり壊れやすい、高さが不均衡で危ないことや、車いす同士が衝突した際、溶接部分が壊れてしまうことや衝撃が大きい、その他、日常用の車いすが故障してしまうことや急ブレーキで残る黒いタイヤ痕などが問題点としてあげられた。59%がサッカー専用の車いすを希望していた。

 その他、指導者やボランティアの不足、近くに対戦相手がいないこと、場所の確保、運営費の不足などが問題点としてあげられた。




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