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| 障害工学研究部 | 東海林 崇 ・外山 滋・碇山義人 |
高度高齢化社会の到来に向け、障害者や高齢障害者が病気や障害とつきあいながら日常生活を維持し、社会の積極的に参画することは重要な問題である。特に、死因の約60％をしめるガン、心疾患、脳血管疾患をはじめとする成人病は根本的な治療法がなくその予防、予知は最優先課題の一つである。また、疾病が重篤な事態に至る前に速やかに対処することで軽微なリハビリテーションを行うことができると考えている。そこで私たちは急性心筋梗塞など発症早期の診断が重要な疾患のマーカーをリアルタイムに測定できる緊急臨床検査機器の開発を目的としている。
SPR（表面プラズモン共鳴）を利用したセンサは生体分子（抗原抗体、DNA）の濃度、反応速度をリアルタイムで観測できる。試料の抽出や前処理の必要がなく、非標識で抗原抗体反応などの結合反応が行える。少ない試料で測定可能である。このようなことから免疫学的検査等を検査センターで行わずにベッドサイドや小病院で使用するのに有効である。
SPR現象は金属薄膜近傍の屈折率に依存するので、この近傍で抗原抗体反応などにより屈折率の変化が起こると共鳴角が変化する。抗原抗体結合量と共鳴角の変化量が一致する。エバネッセント波は垂直方向に数100nmの範囲で減衰して到達している。これを有効に利用するために高分子膜を用いて抗原を固定し、センサの高感度化を検討した。
高分子の膜材料として屈折率が水に近く、共鳴角度のシフトが少ないものが適している。これまで、ヒドロキシエチルスターチ(HES)と硫酸化デキストラン(DS)を用いていた。HES、DSともにμg/mlレベルの測定が可能でしたが、実際の測定にはまだ不十分である。理由としては、高分子量の膜表面でしか抗原抗体反応が起きず、エバネッセント光の先端部分しか利用していない。低分子量のDSではエバネッセント光の一部しか利用していない。
そこで、二つの高分子を同時に用いることにより、エバネッセント光を有効に利用し、膜の内部で反応が起きると考えた。 高分子(HES-DS)の比を変えた膜を作製し、従来の単独の高分子を用いた場合より抗原抗体反応による変化が大きくなり、DSの比率42〜44％で最高値が得られた。この膜を用いて各種濃度の抗体と角度変化量の関係を求めたところμg/mL レベル以上の検出感度が得られた。
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