聴覚障害者の生活訓練の実施報告

指導部生活訓練課 渡辺雅浩

1 はじめに

 当課では、一般リハビリテーション課程に入所した聴覚障害者に対して、国語・算数の学習指導および手話訓練を実施している。ここでは、学習指導・訓練の対象となった訓練対象者の全体および訓練科目別による対象者の状況をまとめ報告する。

2 対象者の訓練等の調査方法

 平成元年から平成9年度まで入所した聴覚障害者で生活訓練を受けた者について、ケース記録およびケース会議資料から関連する項目を抽出する方法で行った。項目は生活訓練対象者の入所時の年齢、性別、学歴、職歴の有無、職業訓練の形態、生活訓練の科目、科目別訓練期間、在所期間、帰結の9項目である。聴覚全入所者数395人の内、訓練対象者は95人で、その内訳は手話訓練71人、国語・日本語27人、算数32人であった。

3 結果と考察

(1) 訓練対象者の全体の状況

 95人(総数の23%)に訓練指導を実施。年齢は17歳から30歳までで平均20歳であった。性別では、全体及び科目別でもほとんど差違が見られなかった(男6:女4)。科目別対象者の推移は、手話、算数、国語の順であった。学歴は聾学校出身者が50%を占め、職歴のない者が72人(76%)と多い。訓練対象者の職業訓練形態は職リハと訓練を併行している者が60%と多い。帰結別では57人(60%)が就職。

(2) 手話訓練対象者の状況

 71人(総数の18%)に訓練実施。学歴別は、聾学校以外の出身者が44人(62%)を占めた。聾学校出身者はその殆どが通学あるいは手話以外の方法で授業等を受けた場合であった。また、職リハでの訓練と併行して訓練を受けた者が52人(73%)であり、手話を習得することは、ろう者集団への適応を図るためである意味合いが強いと推定される。訓練期間は5ヶ月前後で終了した者が最多で48%を占めた。

(3) 学習指導の状況

 聾学校を卒業した者が78%を占めた。また、職能ワークショップから職業訓練に進んだ者が国語で52%、算数47%を占めた。訓練期間は10ヶ月前後で終了した者が最多で41%(国語)32%(算数)を占めた。

4 まとめと課題

 この調査結果から、入所者数の2割程度の者が訓練を実施対象となると予測できた。また、手話訓練は、職業訓練と併行して行えることからろう者集団への適応に関わりが深く、学習指導は聾学校出身者が多く職能訓練と併行して実施していることが特徴であった。今後の課題として、評価方法の見直しや各入所者の援護の目標および計画に十分対応ができる科目の策定およびその生活支援の内容について検討を進めている。




前頁へ戻る 目次へ戻る 次頁を読む