脊髄損傷者における最大努力車椅子3分間走の決定因  ―フィットネスとの関連―

病院 藤本茂記 ・北村昭子・水田賢二
学院 金田安正・梅崎多美
更生訓練所 河野 章・中村隆一

【目的】

 脊髄損傷者(脊損者)では損傷髄節レベル以下の筋力低下など種々の機能障害があり、それらは運動遂行能力の制限因子となっている。脊損者の最大努力による車椅子3分間走の走行距離と残存機能レベル(筋力3以上の髄節レベル)、健康に関わるフィットネスの関係について検討した。

【方法】

 被験者は病院入院患者24例(33.5±12.6歳)、更生訓練所入所者42例(23.9±4.2歳)の計66例の日常生活で車椅子移動を行っている脊損者を対象とした。20mの直線の両端に置かれた支柱の外側を被験者は3分間できるだけ速く走り続け、その走行距離と走行前後の心拍数(HR)を測定した。3分間の走行距離を目的変数とし、年齢、性別、肥満度、握力、受傷からの期間、残存機能レベルを説明変数として逐次重回帰分析を行った。また、残存機能レベルと3分間の走行距離、走行直後の%HRmaxとの関係についても検討した。

【結果】

 逐次重回帰分析の結果、車椅子3分間走の走行距離の有意な決定因は残存機能レベルであり、残存機能レベルが低位な者ほど車椅子3分間走の走行距離は長かった。また、Th5以下の脊損者では走行直後の%HRmaxは80%を超えるが、Th5以上の者では80%以下であった。

【結論】

 脊損者の車椅子3分間走最大距離の決定因は残存機能レベルであった。また、フィットネスとの関わりでは残存機能レベルが高位の脊損者では筋持久力が、 低位の脊損者ではCRフィットネスがパフォーマンスの制限因子であると推定された。




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