進行性発達障害児のきょうだいの悩みと対処方法  ―A群色素性乾皮症患児の母親ときょうだいに対する調査の検討―

障害福祉研究部 北村弥生
沖縄県立看護大学 上田礼子

 障害児や慢性疾患患児のきょうだい(以下、同胞と略す)については、以下のことが知られている。(1)同胞には様々な悩みがあること、(2)これらの悩みに対する同胞の社会心理的適応は多様であること、(3)同胞は母親からの支援を最も期待していることである。本研究では、遺伝性進行性発達障害であるA群色素性乾皮症(以下、XPAと略す)患児の同胞と母親を対象として、(1) 同胞が悩みに対しどのように対処する場合に同胞の適応がよいか、(2)同胞が述べる悩みと母親が述べる同胞の悩みが一致するか否か、一致しにくい悩みはなにかを調査により明かにすることによって、同胞に対する支援に資することを目的とする。XPAは遺伝子損傷を修復する酵素遺伝子が欠損している稀な疾患であり重症の心身障害が進行するが根治療法がない。XPA児は紫外線に過敏であり、皮膚癌の発生を防ぐために日光を避けて生活しなければならない。都内某大学附属病院で紹介されたXPA児の母親12名、同胞11名に調査を行った結果、次のことが明らかになった。(1)同胞のほとんどは、XPA児について悩みがあると述べた。(2)母親の8割は同胞について何らかの問題意識をもった経験があった。(3)同胞が述べた悩みの8割を母親は正しく認識していなかった。母親の悩みは家庭内での人間関係や情報提供に限られていたが、同胞の悩みはそれに加え、学校や地域での差別、XPA児の将来など多様であった。(4)悩みに積極的に対処した同胞および母親は自己概念得点が高い傾向にあった。(5)XP児の母親の自己概念得点は対照群に比べ低かったが、XPA児の同胞の自己概念得点は対照群に比べ高かった。以上の結果から以下のことが示唆される。(1)XP児の療育を考える際には、同胞および同胞と母親の関係も視野に入れる必要があること。(2)同胞にも母親にも、悩みに積極的に対処し、自己概念を高めるような支援が有効であること。(3)同胞と母親の自己概念の傾向が異なることから、同胞と母親それぞれに異なる支援を提供する必要があること。




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