福祉機器心理評価スケールの開発  ―PIADS日本語版―

福祉機器開発部 井上剛伸 ・横田恒一・石濱裕規
数藤康雄
障害福祉研究部 南雲直ニ
研究所 山内 繁
Bloorveiw MacMillan Centre Jeff Jutai
York University Hy Day

1. はじめに
 福祉機器は有効であるというのは一般的にいわれていることである。しかし、その一方で、購入したにも関わらず、使われなくなってしまった福祉機器があることも事実である。使用するかしないかは非常に複雑な要因の中で、使用者が決定するものである。したがって、他人からとやかくいわれるすじあいのないことである。ところが、福祉機器の購入資金の多くは公費によりまかなわれており、それに対するベネフィットの評価は必ずなされるべきものである。また、昨今リハビリテーションの評価において、ADL重視からQOL重視へという傾向が進んでいる。このような状況の中で、福祉機器が使用者のQOLに与える影響を心理的に評価する必要性が高まっている。
Jutaiらは、これらの要求に対して、心理評価スケールPIADS(Psychosocial Impact of Assistive Devices Scale)の開発を行っている。我々は、その日本語版の開発を行っており、今回その概要について報告する。

2. 福祉機器評価スケール
 本スケールは26項目からなる自己評価型のスケールである。各項目は−3から+3までの7段階のスケールで得点化される。本スケールは10分程度で記入可能である。得られた得点はCompetence(効力感)、Adaptability(積極的適応性)、Self-esteem(自尊感)の3つのサブスケールに分類され得点化される。これら3つの項目はQOLの重要な領域を表すものである。

3. 日本語版開発過程
 日本語版PIADSの開発にあたり、Jutai氏の協力を得て、スケールおよびマニュアルの日本語への翻訳を行った。その後、各項目の問題点を抽出するために、研究所関係者を対象に、メガネ、コンタクトレンズ、自動車、自転車、電話について、本心理評価スケールを用いた評価を実施した。その結果から、項目名の見直しを行った。さらに、日本語版の英訳を英語に精通した4名にお願いし、Jutai氏との検討を行っている。
 今後は妥当性、信頼性の検討を経て、完成度を高めていく予定である。




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