競技用スキー義足の研究開発(第1報)

補装具制作部 東江由起夫・ 小池雅俊 ・相川孝訓
第一機能回復訓練部 藤本茂記

【はじめに】
 近年、多くの障害者がスポーツを生活の一部として楽しむようになった。最近では競技大会も盛んに開催されるようになり、競技としてのスポーツも普及してきている。しかし一方、競技スポーツを支える用具の開発は遅れているのが現状である。そこで本研究では、障害者の競技力の向上と競技スポーツへの参加を促す目的で競技用スキー義足の開発を行うことにした。初年度はスキー義足に求められる強度、機能等を調べるため、評価用のスキー義足(プロトタイプ)を設計製作した。

【競技種目と対象】
 種目はアルペンスキー競技で、対象は片側下腿切断者、クラスLW4とした。

【競技用スキー義足】
 義足はスキーの操作性を高めるために直接バィンディングに取り付けるようにした。スキー操作における足関節の動きはスキー靴の構造及び機能上、底屈・背屈運動に集約される。このためスキー用足部は底屈・背屈運動を中心とした設計にした。これらの動きは油圧ダンパーによって制御し、滑降時の背屈抵抗、底屈抵抗が調節できるようにした。また義足のアライメントや前傾角度等の設定がスキー操作に与える影響を調べるため、これらの設定が調節できるようなカプリングを使用し、前後方向に移動調節可能なバインディングを採用した。ソケットは義足の操作性(=スキー板の操作性)を高めるため、体重の支持性、断端へのフィードバック性に優れた全面接触型ソケットを採用した。スキー操作に伴う断端への剪断力を吸収する目的で内ソケットは非シリコーン性のライナーを使用した。

【おわりに】
 以上、本研究では失われた足関節の機能を代償しうる競技用足部と、義足の操作性を高めるソケットデザインについて重点を置き、アルペンスキー競技用義足の設計開発を行った。義足を直接スキーに取り付けることができるため、これまでの義足とは異なり雪面や板の状況を断端に効果的にフィードバックさせることができ、スキーの操作技術を高められると考える。しかし、実際の競技に使用するためには義足全体の強度やアライメント、競技用足部の機能とソケットの性能についてさらに詳細な評価が必要である。これらの評価とアルペンスキー競技用義足の完成は今後の課題とした。




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