中途視覚障害者の生活活動と視力との関連

指導部 白浜 一 ・菊入 昭・小出千鶴子
渡辺雅浩

 視覚障害が生活に及ぼす影響は様々である。今回、視力が生活活動に与える影響につい て、地域での独立した生活を営む上で必要とされる活動能力を測定するための尺度として、 13項目からなる「老研式活動能力指標」(付表)を選び、13項目と視力との関連を明 らかにし、視力低下が各活動に及ぼす影響を調査した。調査数は男性62名、女性16名 の計78名で、年齢は18歳から62歳、平均年齢は39.3歳であった。視力は本人の 自己申告で、矯正視力を含めた左右どちらかよい方(以下、優位眼視力と示す)をとり、 視力0、手動弁≦0.01、0.02≦0.04、0.05≦0.09、0.1≦の5段 階に分けた。被験者には13項目について「行っている」、「行っていない」のいずれか で回答を求め、分析を行った。結果、各活動に必要な視力として、電車やバスを使っての 単独歩行や食事の用意は、手動弁以上の視力がないと困難である。日用品の買物や請求書 の支払いを過半数が行えるのは、0.05≦0.09以上の視力が必用である。また、銀 行預金・郵便貯金の出し入れや読書、年金などの書類の記入は、0.1以上の視力が必要 であることがわかった。

 要約すると、1.優位眼視力が高いほど老研式活動能力指標の総得点が高くなること、 2.下位尺度別に見ると、社会的役割(項目10〜13)については全体的に通過率が高 く、視力の影響は受けにくいが、手段的自立(項目1〜5)と知的能動性(項目6〜9) に関わる項目では一部を除き優位眼視力が有意に関与していること、3.したがって優位 眼視力から活動のおよその可否や予測ができ、また各活動を行う上で必要な視力を明らか にできたこと、この3点にまとめることができる。

付表 老研式活動能力指標
 1.バスや電車を使って一人で外出できますか。
 2.日用品の買い物ができますか。
 3.自分で食事の用意ができますか。
 4. 請求書の支払いができますか。
 5.銀行預金・郵便貯金の出し入れが自分でできますか。
 6.年金などの書類が書けますか。
 7. 新聞を読んでいますか。
 8.本や雑誌を読んでいますか。
 9.健康についての記事や番組に関心がありますか。
10.友達の家を訪ねることがありますか。
11.家族や友達の相談にのることがありますか。
12.病院を見舞うことができますか。
13.若い人に自分から話しかけることがありますか。




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