授業実践報告 理療臨床における患者とのコミュニケーション

理療教育部 伊藤和之

【はじめに】
 あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師は、四診法(望診・聞診・問診・切診)により、五官を用いて患者を全人的に診察し、治療するという特徴を持つ。また、患者と接する時間が60分前後と比較的長時間であることが多い。つまり、患者と一対一の空間をある一定の時間共有し、言語的・非言語的コミュニケーションを組み合わせながら施術を行っていると考えられる。それゆえ、患者と心を開きあえる信頼関係の構築は欠かせない。
 そこで、1997、1998年度にわたり、科目「コミュニケーション情報概論」において、理療教育課程二部1年生を対象に、医療面接への動機づけを主眼とした授業を試みた。

【授業実践とアンケート】
(1) 授業では、医学教育の分野からプリント教材(点字・墨字)とビデオ教材を用意し、患者とのコミュニケーションに関する知識を習得することにした。
(2) 演習として、施術者役、患者役、観察者役によるロールプレイを導入し、ビデオ録画の再生により、ディスカッションを行った。患者役には、理療科教官にも依頼した。
(3) 授業の評価を得るために、実践終了後、入所者に対してアンケートを実施した。

【考察―アンケート結果から―】
 アンケート回答者のうち、授業に対して「たいへん」「まあまあ」興味が持てた入所者は、63名中50名(79.4%)であった。また、授業の必要性については、「たいへん」「まあまあ」という回答者が55名(87.3%)であった。授業内容については、実践面を重視する傾向を示し、ロールプレイを今後も実施すべきとする回答が最も多かった。他方、扱い時数について、11名が「増やしてほしい」と回答した。原因としては、教材の量が扱い時数に対して多いこと、全員がロールプレイをできなかったことが考えられる。

【おわりに】
 実践をとおして、医療面接への関心が高まった。今後も、理療科教官と連携を図りつつ、待遇表現の授業も取り入れながら、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師が、いかにして患者との信頼関係を構築していくかに焦点を当てた授業を進めていきたい。




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