国家試験出題分析(解剖学)その4

理療教育部 乙川利夫

 国家試験の出題と既出項目との関係を分析し、出題傾向を調査した。解答が既出項目と一致したのは、あん摩マッサージ指圧師試験(以下「あ試」という)では7問、はり師・きゅう師試験(以下「は試」という)では4問であった。第4回からの推移をみると、「あ試」で平均値は9.8問、「は試」で平均値は5.0問である。正答期待値は、「あ試」で「あ試」既出項目を修得している場合48.9、「は試」で「は試」既出項目を修得している場合32.0である。「あ試」「は試」既出項目を双方とも修得している場合のそれは、それぞれ62.1、50.0である。推移をみると、「あ試」「は試」双方の既出項目を修得している場合、「あ試」で平均値は62.0、「は試」で平均値は53.0である。

 出題傾向では、(1)要素が3ないし4の事項が出題される(20問)、(2)総頚動脈領域の出題が多い(9問)、(3)同一内容の設問がある(6組)、という特徴が見られた。 出題形式を5形式に分類した。(1)単純型:「なのはどれか」というもので、選択肢は原則として単語となり、取り組みやすい出題である。(2)about型:「について」の問で選択肢の正誤を問うもので、標的が限定されるのは良いが、より深い出題となりやすい。(3)正誤型:対象の限定のない出題で、最近は見受けられない。(4)組み合わせ型:「と〜との組み合わせで」と問われる。単語を線で結んで正誤を問う問題で、比較的取り組みやすい。(5)複雑型:「で〜なのは」の形式で出題される。「で」の内容が多様である。単純型に置き換えれば読みやすいもの、条件とか仮定とかの要素となるもの、主部述部ともに修飾語を付加した複文になるもの等がある。日本語の理解能力に左右される出題である。

 受験対策としては、特に境界領域にいる入所者に対して、段階を追った問題演習をする必要があると考えられる。単純な線結び的な設問から始め、問題文に様々な修飾的要素を付加し、肯定・否定をおりまぜ、選択肢を語句から文に変えていく等の手法である。 正答期待値をみると、「あ試」50、「は試」30に落ちつきそうである。「あ試」・「は試」双方を修得した場合、「あ試」60、「は試」50となる。この数値をみる限り、既出項目を整理して記憶することは合格の可能性を増す大きな要因と考えられる。




前頁へ戻る 目次へ戻る 次頁を読む