中途視覚障害者に対する点字指導法について その2
― 点字訓練は垂直水平運動による垂直読みから ―

更生訓練所 指導部 生活訓練課


管一十・ 森公士朗


 点字の文を読むには、@点の集まりを理解して文字として確認する、 A1文字1文字を確認しながら移動する、B1語1語を確認して文として 読みながら行をたどることが要求される。
 中途視覚障害者の指頭の触覚は、未分化の状態で分化するには時間を要し、 しかも弁別領域は狭い状態にある。このような中途視覚障害者の点字学習には、 点字熟達者の読み方法は使えない。しかし、中途視覚障害者には、視経験があり 図形を容易に描ける、言葉も文章も十分習熟しているなどの特性もあり、また、 ほとんどの人は点か、横棒か、縦棒かの区別はつく。 このことを利用して、点字を横2点(点か、横棒か)、 縦上・中・下の3段に分解して点を捉え、合成して形とし、 これを文字として確認していく、垂直読みを導入しようとするものである。

1 垂直運動、指は立てて、真っ直ぐ上から下へ触る。
 指をできるだけ立てて1段ずつ「点か棒か、点なら左か右か」 を確かめて形を捉え、名前を付けていく。覚えるのはこの形と名前の 結びつきだけである。この垂直運動により点を捉えることができる。 新しい文字の定着は、きちんと、点が捉えられなくても、今まで出てきた 文字との違いが分ればよい。違いを区別することで定着していけば良い。
2 水平運動、指を1文字1文字ずつ移動させる。
 点字を読むのはこの触運動である。文字間の移動を重視する。 指送りができていれば、1文字を読める人は2文字、3文字の言葉を読むことができる。 1文字を上から下に垂直に点を確認した後、下から上に戻って上がり、上の点を確認 したところで、1文字分の幅を右にスライドする。この垂直水平運動が点字訓練である。 指導者は、この1文字分の移動について、「行き過ぎた、足りない」とフィードバック するだけだといってもよい。
3 「点と点の隙間」をよむ。
 隙間を読むのが点の集合の認識に重大なヒントとなる。隙間のある・なしで 点の集合を認識するようにする。点の位置をいわない。
4 1語1語の確認には、頭で読むつもりで、大いに推測を働かせる。
中途視覚障害者は今までの生活の中で、言葉を知っているし、日本語の文章の経験も 豊富である。触覚の鈍さを補う最大の武器は推測読みである。



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