中途視覚障害者に対する点字指導法について その1
― 点字訓練・指導は読みから ―

更生訓練所 指導部 生活訓練課


管一十 ・森公士朗


 本稿は、過去に発表された点字に関する研究、点字指導に関する指導書、研修教材、 指導教材及び実践を通して中途視覚障害者への点字指導法の読みについて一考察したものである。

 盲児は点字で学習をするが、中途視覚障害者は点字を学習するとよく言われる。それは、 点字の実用的触読習得に1〜2年という多くの時間を要し、しかも、その読み速度 (1ページ4分の読み)は、墨字を読んでいた時分に比べて5倍もの時間を要している。 これは、中途視覚障害者の加齢に伴う触覚が分化しない、触覚が鈍いなどの特性による ものだけであろうか。

中途視覚障害者に点字指導を実施している施設の職員には、次のようなことについて、 疑問を抱きながら指導している人たちもいる。

 盲児は、点を弁別できる十分な触覚を有しており、それにあった指導法(継時的読みから) もある程度確立されている。また、点字を速く読める人は、指を平らにし、左から右へ水平に 動かし上下運動をしない継時的読みで、晴眼者が墨字を読むスピードと何ら遜色がない。 中高年の中途視覚障害者に対しても、点字の書き指導において、点字の文字構成理解や、 書きがごく自然にできることから、読みにおいても盲児や熟達者と同じように指導すれば 中途視覚障害者も点字の読み手になると考え、熟達者の速読技法を真似、触覚が鈍く、 しかも、指先の弁別領域が狭い中途視覚障害者に対し、これといった指導法をマニュアル化 しないまま、中途視覚障害者自身の努力まかせといった状態で、今日にいたったのではないか。

 文字は読めなくては意味がない。また、日常生活において、書くことより読むことの方が はるかに多い。書こうと思えば、一晩でも点字は書けるようになる。点字の習得は、言語の 習得と同様に、聞く、話す、読む、書くの順序に従い、読むことから始め、読めることを 目標としたいものである。
 初期の点字訓練・指導は、読みから、左手人差し指1本で、続き文字で、垂直読みで、 清音文字のみで始める。半年から1年の訓練で1ページ10分から5分を目標としたい。




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