高次脳機能障害に対する作業療法グループ訓練の試み

病院 第一機能回復訓練部 山本正浩・森田稲子・井上美紀・大塚進・野月夕香理・伊藤伸・深澤佳世

1.はじめに

 当院作業療法では、高次脳機能障害が主たる問題となる患者に対し、「障害の自己認識の改善」「社会生活技能の向上」など個別訓練では対応しにくい部分を目的としてグループ訓練を実施している。今回は現在の訓練内容と実践を通して得られた知見ついて報告する。

2.参加者

 担当OTRが必要を認め、グループ活動に支障をきたさない程度に感情コントロールのできる者。1999年9月から2001年8月までの2年間の参加者数は42(男性36)名。疾患は外傷性脳損傷28名(67%)。年齢は30歳未満が25名(60%)。受傷・発症からの初回参加までの期間は180日以内が25名(60%)。最終目標を復職・復学とする参加者が多かった。1回の訓練の参加者数は4〜12名であった。

3.訓練プログラム

 現在、頻度は1回80分、週1回。内容は「出欠・日付確認」、「体操」、「意見交換」、「ゲーム」または「共同作品制作」で構成している。

4.評価

 訓練場面で観察可能な項目からなる評価表と「障害の自己認識」の評価に関連した自由回答のアンケートを作成、使用している。評価表はグループ訓練に参加しているOTR3名の合議で判定、アンケートは担当OTRが個別に聴取している。

5.実践を通して得られた知見

 @1回の参加者数が多いと、ゲームや意見交換の際に待ち時間が多くなり、緊張感を持続できなくなる傾向にあった。適切な人数は4〜6名である。A日付確認は記憶障害の重度な参加者に対し記憶代償手段の活用能力を確認する上で有効である。B意見交換では、社会的な出来事や身近な出来事を話題にすることは、社会の動きに関心を持つことの必要性を意識させる上で効果的。各自の訓練目標や目標達成に向けての適応行動を話題にすることは各自が取り組むべき課題を意識させる上で効果的である。Cゲームは他メンバーからの情報を統合して問題を解決することが要求されるもの、共同作品制作では材料や作業工程の自由度が高いものが、他メンバーとの交流を促したり、個人の能力を顕在化させやすく、目的にそったフィードバックが行いやすい。D評価については既存の評価表では我々が目的とする項目がなかったり、参加者の障害レベルに合わないなどの理由から適用が困難であった。そこで独自の評価表とアンケートを作成した。アンケートを用いることは観察では捉えにくい変化を把握する上で有用である。




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