高位頸髄損傷者への作業療法−過去7年間の調査報告−

第一機能回復訓練部 井上美紀・森田稲子・大塚進・山本正浩・野月夕香理・伊藤伸・深澤佳世

 高位頸髄損傷者は一般に、C4は電動車椅子操作やパソコン操作が、C5は食事、整容、車椅子駆動が獲得可能と言われている。しかし、C4でも僅かだが肩関節以下に自動運動が可能な者がおり、作業療法ではこの僅かな運動を最大限活用してADLの拡大を図るように働きかけてきた。今回は高位頸髄損傷者でも獲得可能な動作について過去7年間の調査を行ったので報告する。

【対象と方法】

 1995年4月〜2002年3月に入院しOTを実施、9月30日までに退院した頸髄損傷者378名の内、両側ともC5以上でFrankelA〜Cの48(C4 41 C5 7)名について、担当作業療法士が以下の項目の調査を行った。 受傷日、OT開始日、入院時合併症、退院日、退院時上肢機能(ROM、MMT、上肢機能得点MFS)、退院時日常生活活動(FIM)、訓練内容(日常生活活動、余暇活動)

【結果】

1.上肢機能は、C4で肩関節以下全く自動運動が見られない者16名(以下C4-Aとする、MFS 0)、左右どちらか一側だけでも僅かではあるが自動運動が見られる者25名(以下C4-Bとする、MFS 38以下)、C5 7名(MFS34〜56)の3群に分けられた。
2.C4-Aはマウススティックを使用してパソコン操作や読書、ジクソーパズルなどが可能であった。褥瘡などで座位がとれない者では、オートスキャン入力などの活用でパソコン操作が容易になっていた。
3.C4-Bで肩関節外転か肘関節屈曲のどちらか一方の運動が僅かでも可能な者は、ポータブルスプリングバランサー(PSB)を使用して上肢でのパソコン操作、読書、ぬりえなどが可能になっていた。肩関節外転と肘関節屈曲の両方の運動が僅かでも可能な者は、PSBや自助具を使用して、食事、歯磨き、パソコン操作、ビーズ手芸などが可能になっていた。
4.C5は、手関節固定装具と自助具を工夫して食事、歯磨き、パソコン操作、絵画などが可能になっていた。上半身の更衣訓練も行っていたが、完全自立には至らなかった。

【まとめ】

 C4でも僅かな自動運動を最大限活用して訓練を行った結果、上肢を使用して食事、歯磨きなどのADL動作が獲得できていた。今後は残存機能と獲得動作との関係の分析を進め、QOL向上を図りたい。




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