肢体不自由者のためのトイレ改造事例報告

指導部指導課 稲葉 幹人・小松原 正道

 更生訓練所(身体障害者更生施設)は、肢体不自由者の宿舎生活においては、自立した生活が行えるように障害の状況に合わせたバラエティーに富んだトイレの設備が必要となっている。
特に頸髄損傷の入所者の場合には、排泄の自立に座敷型のトイレが必要なことがあるが、既存の座敷型トイレは老朽化も著しく、機能的にも不十分な点が多かった。そこで一昨年より国立伊東重度障害者センター、国立別府重度障害者センターの頸髄損傷者用トイレの仕様などを参考として改修を検討してきたところ、昨年度は、厳しい財政状況のなか管理部(会計課)の理解を得て使用頻度の高い2カ所の改修を行うことができた。
(1)トランスファーの方法と便座までの移動
 エントランスの位置と便器の方向・位置は、横乗りタイプとした。
(2)表面の仕様と注意点
 表面のレザー張り材質については、別府センターのものを参照した。
(3)ビニールレザーによる袋綴じ
 このビニールレザーによる袋綴じはしわが寄らない程度にする。
(4)レザー面の高さ
 レザー面の高さについては、車いすからのトランスファーを考えて設定している。
(5)手すり
 頸髄損傷者の場合は手すりに寄りかかる等の動作が多いためクッション材を巻き付けてある。
(6)背もたれ
 背もたれは施工業者が独自に製作したもので角度を5段階に調節できる。
(7)便器の形状について
 長便器(TOTO C111障害者用便器)と普通型便器(TOTO C480腰掛式便器)にウォシュレット(TOTO TCF4031Rウォシュレットアプリコット)を設置した形状と2種類とした。
(8)柔らか便座の使用(TOTO製)
 伊東センターのトイレを参考に、TOTO製の柔らか便座を組み込むこととした。
(9)各種スイッチ類の設置場所の工夫
 各種スイッチ類の設置場所については、頸髄損傷者も押すことができるように設置をした。
(10) けこみのサイズ
 フットレストがレザー面の下に入る「けこみ」の奥行きは350ミリとした。

設計施工に当たって

 今回は、病院のOT、PTの助言のもと設計・施工を進め、特に森田作業療法士長と井上副作業療法士長には工事途中にも再三現場での確認をお願いした。また今回施工を担当した巨L栄菅工は背もたれなど随所に創意工夫を盛り込んでいる。また当初の設計だけでなく施工時点でも随時OTなどの専門家の助言を得ながら施工業者と連絡を密にして慎重に製作することが必要である。




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