肢体不自由者に対する生活訓練の事例報告

指導部生活訓練課 河野智子・管一十・石渡博幸・会田孝行・森公士朗・原志治・義間由美・谷映志・小村久仁子
指導部指導課 橋本都

 生活訓練課では従来より視覚障害者を対象に訓練を実施してきたが、肢体不自由者に対するニーズの掘り起こしを行い、試行的に訓練を実施した。
 脳性麻痺による四肢体幹機能障害の他、視覚障害、知的障害を併せ持つ本ケースは、職業訓練を希望して入所したが、混雑地域の歩行に不安があるとの訴えから当課の対応となった。
 日常生活活動アセスメントの結果、歩行や整容のニーズの他、火の取り扱いは危険ということで調理を家族にとめられており、場の状況に合わせた態度や言葉使いが不適切であった。また、本人家族とも問題意識は持っているが解決方法が得られずにいることもわかった。そこで、年齢相応の身だしなみや場面に応じた言葉遣いを使用すること、調理補助者として家庭内で役割を担うことなど幾つかの支援内容が追加された。
 歩行訓練では、視覚障害による支障はなく、T字型の白杖を使用することで体の保持に関する不安感は軽減された。調理訓練では熱源の取り扱いに対する家族の抵抗感と本人の恐怖感を考慮して電子レンジ使用から始め、自宅での調理実習を行い実用レベルに至った。言葉遣いでは、本人の遭遇しやすい場面について丁寧語の会話によるロールプレイを中心に訓練を実施し改善が見られたが、定着の面では現在も訓練中である。
 これらの経験から、日常生活上の問題は特になく職業訓練に至っている肢体不自由者の中に、日常生活活動の改善や、より便宜性を計る余地がある者がいることについて認識を新たにした。また、本人や家族にニーズがあっても具体的アプローチ方法がわからず、そうした訓練を行うサービスに関する情報もないまま、ニーズへの意識が薄れることも考えられ、的確な対応が望まれる。




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