国リハ病院における脳卒中リハビリテーション−10年間の推移

病院神経内科 長岡正範、角田尚幸、三輪隆子
中国リハセンター 何 静傑


 国立身体障害者リハビリテーションセンター病院では、1994年から身体障害者機能 回復評価システムと称するリハ用データベース(DB)を運用している。1998年からは 訓練担当部署の担当者が病院内LAN上でデータ入力、閲覧、データの取り出し、ケース 会議用の資料作成に用いている。本DBは、脳卒中、脊損、切断、その他、リハ対象疾患 の訓練経過を記録することができるが、10年間に登録された981例の脳卒中患者の特徴 と現データベースの問題点を検討した。

1.開発の経緯

 1994年に開始された身体障害者機能回復評価システムは、東北大学で開発された脳卒中 機能回復評価システム(RES)をもとに作成され、1998年までは紙の入力シートに書き込まれた データで運用されていた。更に、リハセンターで対象になるその他の疾患についても訓練経過 に従って、次のような機能が付加された。
  (1) 機能障害、能力低下レベルを反映する評価尺度の変化を記録すること
  (2) 担当者がコメントを記載することができる
  (3) データの共有
  (4) ケース会議での資料作成
(3)、(4)は1998年にLAN上でDBが稼動するようになり本格的に実現した。

2.脳卒中データ

 脳梗塞419例、脳出血461例、くも膜下出血91例が平成15年6月の時点までに登録されている。 登録者の人口学的データ、入院期間、発症から訓練開始までの期間、機能的ゲインの大きさなど について検討を行った。
 いずれの疾患も、1994年以降、発症から訓練開始までの期間ならびに入院期間は、年々短縮 していることが明らかになった。機能訓練の結果、例えばADLを示すバーセル・インデックス (BI)のゲインは、ほぼ一定であり脳梗塞では約16であり、平均訓練期間が1995年の半分の 60日になっても同等であった。訓練開始時ならびに訓練終了時のBIは10年間で若干低下傾向 にあった。10年の経過で、より低いBIで入院し訓練開始するが、より短い期間で同等の機能的 ゲインは達成するものの、やや低いBIで最終的に終了していた。

3.問題点

 本DBは、関連職種間でのデータの共有などに有用であり、データベース活用はクリニカル パス同様に効果的なリハ実践に有効であった。一方、データ抽出、入力ミスの訂正などで問題 があった。また、統計的活用に関する手続きの未整備などの今後、対応すべき問題も明らかに なった。




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