病院 看護部 | 田村玉美、安済ノブ、堀 房子 |
研究所 | 南雲直二 |
重度障害者の看護時間は少なくてすむ(逆U字)といわれるが、むしろそれは患者 サービスの低下とつながっている恐れがある。そこで本研究では、頸髄損傷者の看護の 質を高める研究の一環として、看護時間の計測と高位頸髄損傷者8床を適正な基準とした 場合の、12床における看護時間の増加量を算出し、あわせて看護内容の分析をしたので 報告する。
(1)対象:当院入院中のリハを終了した頸髄損傷者9名(C1〜C6)
(2)方法
@計測者が患者の傍らにいて、他の看護師・看護助手が患者と関わった時間を1分単位
に24時間記録した。
A計測日は平日の1日を選んだ。
B計測の実施に際しては本人もしくは家族に調査目的と方法を詳しく説明し同意を得た。
(1) 総看護時間の計測:看護時間は逆U字ではなく、損傷レベルが低くなるほど
看護時間は逓減するという緩やかな曲線を示した。
(2) 看護時間増加分の推計:高位頸髄損傷者の入院枠は平成8年から平成12年まで
8床であった。平成13年から高位頸随損傷者の入院枠は12名となり4床増床になった。
そこで、今回、調査したC4患者4名のデーターを基にC4患者の平均看護時間289分を計算
した。そして、C4患者の平均看護時間に8床から12床の増加分4名分を掛け増加時間と
推計した。増加時間は1156分(約19時間)であった。
尚、最大の人に照準すると1396分(23時間)、最小の人に照準すると940分(15時間)で
あった。
(3) 看護内容の分析
看護時間を100%とした場合、人工呼吸器装着患者とそれ以外の高位頸髄損傷者では
看護師の行う薬剤・処置は人工呼吸器装着患者の方に多く、身の回りの世話は人工呼吸器
装着患者に少ない特徴があった。
患者の一日24時間の生活につき、その患者の看護時間を計測し次の結果を得た。
1.頸髄損傷者の看護時間は一1日632分から184分を必要とした。
2.頸髄損傷者の看護時間は損傷レベルが低くなるにつれて逓減した。
3.看護内容の分析では、看護時間を100%にした場合、人工呼吸器装着患者とそれ以外の
頸髄損傷者では薬剤・処置と身の回りの世話における時間比が逆転した。
ただし本研究は方法論において3つの限界がある。第1は、1日しか看護時間を計測しな
かったことである。第2は、対象者が9名と少なかったことである。第3は、患者の満足度
やQOLについて、患者の意見を聞かなかったことである。こうした点に留意して、今後の研究
を行う必要がある。