当センターにおける頚髄損傷者の排便訓練の実際

国立別府重度障害者センター 医務課 久松雅美、阿南誠二、後藤真由美、榎本奈々、高木憲司、浅野圭司、後藤貴江

【 はじめに 】

 頚髄損傷者にとって排泄動作の獲得或いは一部動作の獲得は健康管理・就労・個人の 尊厳を守るためにも非常に重要なものだと考えられる。当センターでは作業療法の一環 として他のリハスタッフとともに排便訓練を行っている。
 今回、排便動作方法と損傷レベル別獲得可能性をまとめ、訓練内容の紹介・現在の 問題点・今後の課題等を検討したのでここに報告する。

【 訓練の実際 】

 排便動作方法としては、四つの方法(自操式トイレ・シャワー車いす、介護用トイレチェア、 高床式トイレ、洋式トイレ)より適切なものを選択し訓練を行っていく。
自操式トイレ・シャワー車いす
 ベッド上で下衣脱衣後、車いすへ移乗し自操にてトイレまで行き、座薬挿入・排便・ 清拭を行う。再びベッドへ戻り着衣し終了。
介護用トイレチェア
 トイレチェアへの移乗を行い座薬挿入・排便・清拭を行う。
高床式トイレ
 高床へ移乗後、下衣脱衣し床上または便座上で座薬挿入後、排便し清拭を行う。 着衣し車いすへ戻り終了。
洋式トイレ
 便座へ移乗し便座上での下衣脱衣後、座薬挿入・排便・清拭を行う。着衣し車いすへ 戻り終了。
※損傷レベル別獲得可能性については別紙参照のこと。
 当センターでは2年前より、これらの排便方法にCCDカメラ及びモニターを導入 している。これにより、それまでは困難であった高位頚髄損傷者の座薬挿入や清拭が、 視認下で行えるようになり、一部動作獲得・動作獲得期間の短縮などに効果をあげている。 一方、臀部の創、便の性状などの状況も観察可能となり健康管理にも有効であると考えられる。

【 今後の課題 】

1.CCDカメラ及びモニターの更なる検討。
2.動作獲得期間の短縮(動作分析・自助具の改良など)
3.褥瘡予防(便座や背もたれの改良など)
4.排便コントロール獲得(他部門との連携・利用者の自己管理能力の向上)




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