研究所福祉機器開発部 | 二瓶美里、井上剛伸、広瀬秀行 |
学院 | 星野元訓 |
病院 | 岩崎洋、吉田由美子、金山まゆみ、関寛之 |
シーティングクリニックでは,走行評価・訓練を取り入れた重度障害者の電動車いす の適合を行っている.脳性麻痺や低酸素脳症などの事例では,複雑な身体機能の問題や自立 走行の経験が少ないため,生活の中で実際に活用できるかどうかの判断が困難である. そこで,走行訓練中に走行技術を確認できる実走行評価表の活用と,走行技術の習得と同時 に機器選択の絞込みを行う適合手法の開発を行ってきた.
評価・訓練の計画:ユーザーの多くが電動車いす走行の意志
をもつが,自立走行経験がないため,具体的な場面をイメージすることが困難である.
そこで,使用用途の具体化をするため,生活範囲ごとに想定される走行技術の関連表を用い,
走行評価・訓練計画を作成する.
実走行評価・訓練:実走行評価表の項目は機器のセッティング,
機器・乗車の説明と理解,基本走行,応用走行など大項目13,小項目55項目.基本走行には,
シーティングや簡単な操作,広い場所での走行が含まれ,生活範囲表で抽出した走行技術は,
最終的に身につける必要がある応用走行項目に当たる.応用走行が困難な場合,訓練不足か
機器の不適合かを見極める必要がある.実走行評価表からは,適合訓練中に,主に操作系,
シーティング,設定,走行技術等のアプローチが可能になる.
低酸素脳症の女性(65歳),四肢麻痺,頸部回旋・屈曲に随意動作(制限)あり. 屋内走行(自宅,デイケアを予定),自宅周辺での使用.生活範囲表から必要な走行技術を 選択し,実走行評価表を使用しながら評価・訓練を行った.最初は不慣れなため,走行困難 だったが,訓練中に走行技術が向上し,同時に最適な頸部ボタン形状・配置,走行特性 (速度,加速度等)の決定が可能になった.貸出評価の後,基準外申請.
電動車いす適合サービスでは,実走行評価表を使用した評価・訓練を行ってきた. その中で生活範囲ごとに想定される走行技術を具体化することで,ポイントを絞った走行技術 の習得が可能になった.また,走行技術の習得と機器・機能の選択における不適合の原因追求 の手がかりを明確にした.事例からは走行を行う中で,機器の選択肢が明確になり,機器の 適合において走行評価表を用いた走行評価・訓練が有効であることが分かった.