高位頸髄損傷者に対するヘッドサポートの改善の試み

学院 星野元訓、有薗裕樹
研究所 廣瀬秀行、新妻淳子、井上剛伸、中山剛、二瓶美里、三田友記、中村隆
病院 岩崎洋、吉田由美子、中村優子、金山まゆみ、千見寺芳英、佐久間肇、関寛之

【はじめに】

 高位頸髄損傷者では日常生活中における安静、食事、移動などにおいて座位が安定 していることが必要不可欠な条件となる。これは姿勢安定性と座位耐久性の2つの要因 から成るものであり、当センター・シーティング適合サービスでは高位頸髄損傷者への 姿勢保持のアプローチの一つとして、頭部の姿勢安定性を向上させるためにヘッドサポート の形状を改善し、4症例について適合を行ったので報告する。

【現状と問題点】

 現在、高位頸髄損傷者に用いられているヘッドサポートの既製品では、頭部を支持 する形状はただの平面や、左右への側屈を防ぐために後頭部周辺を半円状に覆う形状を しており、頭部の重量を垂直方向から支持する機能はほとんどない。また、車いすの背の 部分では体幹と頭部を独立に支持するもの、もしくは背シートが頭部まであるものの いずれにも、頸部の支持機能がない。
 これらのことから頸・頭部の支持が十分に行われておらず、静止時さらには移動時の 外乱による振動が頭部まで伝わり、揺れが生じることで、眩暈、酔い、頭痛、頸、肩の 痛みを訴える高位頸髄損傷者も多い。

【ヘッドサポートについて】

 形状の改善点は頭部にかかる重力に対し後頭結節部でしっかりと支持し、他部分でも 均等に接触して支持をするように生体の頭・頸部後面に適合させる。側屈方向は頭部長軸 が床面垂直となり、屈曲・伸展は中間位から軽度前屈位、もしくは本人の楽な角度で安定 するようなアライメントで支持する点である。また、耳を圧迫しないよう一横指幅の余裕 を持たせた。構成はウレタンチップ材を主材として、生体に接触する表面には柔軟な多孔 質材を貼り付けた二層構造である。前者は支持するのに適した硬さと加わる荷重に対して 僅かに変形するという形状の追従性を持つこと、後者は柔軟な点から皮膚への接触感を 良くすると共に、密着を防ぎ、べたつき感を抑えるという利点を持ち合わせている。

【適合事例】

 頸部周囲筋が麻痺しているC4レベルより高位の頸髄損傷者を対象とし、当病院入院 患者2名と院外2名の計4名について製作・適合を行い、常用のものと比較して外乱に 対する目視での頭部の安定性、使用者の意見、感想等から良好な結果が得られた。




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