第二機能回復訓練部 | 田内光、氏田直子、小林美穂 |
学院 | 中村公枝 |
新生児聴覚スクリーニングは、厚生労働省の呼びかけで平成12年から各地域でモデル 事業が行われている。埼玉県でも平成14年よりモデル事業が開始され、当センターは県立 小児医療センターとともに精査・診断機関に指定された。しかしスクリーニングには多く の問題点が指摘されている。今回は、スクリーニングリファーとなり当院を受診した新生児 の精査・訓練の現状を報告し、新生児スクリーニング検査の問題点につき検討した。
1歳半までに当センター耳鼻咽喉科を難聴の疑いにて受診した児は、平成14年度は
8例、15年度(10月まで)は15例だった。そのうち新生児聴覚スクリーニングでリファーと
なった児の数は、平成14年度が5例、平成15年度が4例だった。リファー児の初診時月齢平均
は4.5ヶ月で8例は生後12ヵ月未満の受診であったが、1例は1歳半の受診であった。
リファーとなった9例のスクリーニング方法は、AABRのみが6例、OAEのみが3例であった。
精査結果は、両側あるいは片側難聴が4例、正常が4例で、1例は精査中である。
スクリーニング方法別にみると、AABRリファー児6例中精査の結果正常となったのは1例
だったのに対し、OAEリファー児3例は全て精査の結果正常だった。またAABRにより片側
リファーとなった1例は、精査の結果両側難聴と診断された。これは疑陰性が1例にみられた
ことになり、問題点である。
リファー児9例中3例は難聴の診断にて、訓練部でのフォローがすでに始まっている。
これら3児の耳鼻科初診平均月齢は0.7ヶ月、訓練部でのフォロー開始平均月齢は5.7ヶ月だった。
問題となる点は幾つか見られた。一つは各産科にて親の同意を得ないで聴覚 スクリーニングが行われている場合がある点である。これは県のスクリーニングの試行に のっていない産科で行われているケースであるが、親に与える精神的なショックを考える と大きな問題である。また今回は疑陰性例が1例見られた。この原因は不明であるが、 少ない症例数にもかかわらず疑陰性があったことは検査精度の点からも大きな問題である。 当センター側の対応としての問題葉は、初診時月例と訓練部でのフォロー開始まで6ヶ月 近くかかっている点が問題である。これは児の聴力にもよるが、さらに短縮を図り速やかな 補聴器適合と療育・教育を図る必要があると感じた。