重度自閉症者の不適切行動に対するアプローチ

国立秩父学園指導課 齋藤新一、佐々木賢司、川政ちひろ、入江ゆみ子、吉野邦夫

 対象者は重度自閉症女性(27歳)(CARS 50.5点)。てんかん発作前は他害、破壊行動 が生起し易い。コンセントのプラグ抜き、下足場での履物ひっくり返し、自傷した血を カーテンに付ける等のこだわり行動は日常的。他園生の不安・不穏をも誘発し集団生活 (14名)の支障となることが多い。不適切行動の減弱と集団での穏やかな生活を目的に、 個別集中支援を行ったので経過と対策、結果を報告する。

【 対象者プロフィール】

 S−M発達検査2歳4ヶ月、PEP-R1歳7ヶ月、太田ステージII、 要求は直接かクレーン。ADLは半自立、膝関節腫脹時、車椅子で介助移動。

【アプローチ(平成14年5月〜10月)の経過】

 1. アセスメント;不適切行動の同定と生起時間帯把握→ドア・窓叩きが全体の59%、 物の位置こだわり23%、履き物のこだわり9%、自傷9% 。日中活動前(9時10分〜 9時45分)と昼食前(11時30分〜12時)が多い。  2. 標的行動を決定→a)ドア・窓叩き行動の消去 3. 仮説を立て代替行動決定→ b)適切なおかわり要求行動の形成 4. 集中支援時間の設定→行動が生起する時間帯  5. 支援方法の決定→ワークシステムによる構造化とカードコミュニケーション。  6. 実施プラン策定→a)に対して;ワークシステムを利用して遊び課題(色や形分類・ パズル)設定、b)に対して;絵と文字の「おかわり」カード使用し、交換の仕組みと カードが無くなったらお終いということを教える。その他;始発を伝えるために次の活動 の写真・絵カードを使用。

【アプローチの結果】

 1. 日中活動前と昼食前のドア・窓叩き行動は87%減少した。  2. カードを用いた夕食のおかわり要求の頻度は75%だった。集中支援の結果、発作の ある人の行動調整には医療との連携が欠かせないことも示唆される結果であった。
 今後に向けて、 1. 他の時間帯に生起している不適切な行動の分析と対応の検討  2. 対応職員の幅を広げるための個別援助マニュアル作成  3. 医療との一層の連携 が考えられる。




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